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花小説  作者: 九重ツクモ


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10/31

スモークツリー【現代ドラマ】

 教室の窓際に座る鳥の巣頭。

 私は今日も、彼のことを見つめていた。

 いつもは前髪で隠れて見えないけれど、実は丸くて可愛らしい瞳を持っていることを知っている。

 私が彼に告白をしたのは、三日前の放課後のことだった。


『なんか……たぶん俺のこと勘違いしてると思う。やめた方がいいんじゃない』


 その微妙な言い回しに、振られたんだと気付いたのは、彼が教室を出て行った後だった。

 飄々としていて、他の人と連まず、自分の世界を持っている。

 そんな彼がとてつもなくかっこよく見えて、振られてもなお、私は彼のことが好きだった。

 けれど、それから半年と経たずに彼は学校に来なくなってしまった。

 彼の名前を再び聞いたのは、卒業して五年目の夏。

 彼が、遺体で発見されたというニュースを目にした時だった。

 彼が母子家庭だったこと。

 母親が男と姿を消してしまったこと。

 四人の弟妹を育てる為、一人で働き詰めだったこと。

 お金の為に危ないバイトを掛け持ちしていたこと。

 最期は仲間割れの末、殺されてしまったこと。

 全て初めて知ることばかりだった。

 私は彼のことを何も知らないまま、ただ口先だけの愛を叫んでいただけだった。

 ニュースはその後も、私の知らない彼のことを喋り続けた。

 それから何年経っても、彼のことを忘れられない。

 私の青春は彼の記憶と共に、苦いまま、いつまでも漂い続けている。

【解説】

スモークツリーの名前の由来は、ふわふわな煙のような姿から。

花自体は5mmに満たないほどのごく小さいものだそう。

花言葉は「煙に巻く」。

その連想で「賢明」というものもあります。

他にも、すぐに消えてしまう煙のように「儚い青春」。

作中では切なく表現してしまいましたが、「賑やかな家庭」という花言葉もあります。

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