どうでもいいこと
「……起きた?」
感傷に浸る暇もなく、ここに来た時と同じ姿勢のまま、魔王はそう笑った。
「…………」
僕が何を言うまもなく、彼は突然拍手を始めた。
「最初は気が付かなかったんだけどね、実は君の攻撃が魔力障壁にぶつかったあと、ちょっと私の腕をかすってたんだよね。」
腕の小さな切り傷をこちらに大袈裟に向けながら笑っている。
……だからなんだよ、僕は負けたんだ。
そして、全て失った。
わざわざそんなことを言って何になるというのだ。
「だから君の勝ちだよ、」
「……は?」
突拍子もないその言葉に、ずっと下へと向けていた視線を前へと戻す。
しかし、それはその言葉への喜びではなく、ただ意味不明なことを言った彼への驚きと不信感によるものだった。
「君は私に攻撃を当てた。だから君の勝ちだ。」
「何を言って、、」
僕はまだお前を殺していない。
僕の目的は、まだ終わってない。
僕たちの旅はまだ終わってないんだ。
「元々、1度でも私に攻撃を当てることができたらクリアにする予定だったんだ。私の自由にしていいと言われていたからね。」
…………
なんだよそれ、
僕らごときじゃあ、たかが小さな傷一つつけるだけで十分だって?
その傷のために、、
何を失ったと思っているんだ、
僕らは、お前を殺すためにここに来たんだ。
ここまで旅してきたんだ。
………みんなで、もう一度笑うために、、、
「まあ、私の耐久力があればこの世のどんな魔法でも私を殺すことはできないだろうから、私なりの配慮だよ。君たちは、魔物が世界を滅ぼす前に、その価値を示したんだ。」
クソが、
耐久力が低いなんて、浅はかな考えだったのだ。
こいつは、規格外の運動能力と、規格外の魔力と、そして、規格外の耐久力を持っていたんだ。
涙が頬を伝って落ちてゆく。
その暖かい雫は、既に冷たいイサノにも伝わってゆく。
「……………、殺してくれ、」
「ん?」
「殺してくれ、」
僕のことを殺してくれ、
少し考えて、彼は言う。
「えっと、、それは無理かな。ようやく私もこの責務から開放されるんだ。私に傷をつけた君に死んでもらっては困る。」
じゃあ、
「いっその事自分で、、とか思ってるよね?」
………、
「でも残念、君には今、自殺できない呪いをかけた。あ、あとついでに、変な呪いもかかってたから解いておいたよ。」
呪い、、、
刻印のことか?
驚いて自分の体を確認した。刻印が、、ない、あの忌々しい人間の呪いが、、、
ということは、人間の命令に逆らうことができるようになったのか?
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だがしかし、そんなことはもう、どうでもよかった。




