無駄な戦い
人類の命運をかけた戦い、と言うには語弊があるかもしれない。
だって、どっちが勝ったとしても、人類の敵が生き残るのは変わらないのだから、
言い換えるとしたら、そうだな、
僕らの命運をかけた、意味の無い戦い。
これがいいだろう。
魔王に魔法を放った。魔王に斬りかかった。魔王の攻撃を避けた。
その行動の一つ一つが、僕の人生の集大成だった。魔法を放つ度に、初めてこの魔法を覚えた時のこと、この魔法を見て驚いた顔をしていたイサノやアクナの顔、周りの景色、
鮮明に思い出された。
妙に体が軽くて、僕は最強になっていた。
イメージを体が追い越して、しかし、脳より先に体が反応していた。
僕の全てをぶつけるように魔法を放った。
初めて戦いが楽しく感じた。意味もなく笑みがこぼれる。懐かしい記憶が後押ししてくれるように、魔法を放つ度に、思い出の蓋を開けているようだった。
魔王が魔法を放つ。
僕は空中に飛ばされた。
そしてまた、魔王はこちらに向かって魔法を放った。
避けきれずに僕に直撃する。
声を出すまもなく、僕の下半身は吹き飛ばされた。
しかし、何も怖くはなかった。すぐにどこからともなく声が聞こえてくるから、、
「エキゾヒール!!!」
失った下半身は瞬時に回復する。
「あと何回ある?!!」
「あと10回!!」
頼もしい味方を背に、僕はまた前進する。
⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯
この日の僕は最強だった。
しかし、
魔王は多分、無敵だった。
もう既に何回死んだか分からない。ヒールの使用制限は残り5回、魔王はいまだ無傷。僕の攻撃はかすりもしなかった。
やっぱり、魔王、
魔王なんて呼ぶにはおこがましいか、
天使様は、人間の人知なんてはるかに超えていたんだ。
まともに戦って、隙なんてものは存在しなかった。
くそ、、
しかしまあ、ここまで死ぬと少し見えてくるものもある。
こいつは、ほんの目くらまし程度の小さな魔法ですら強固な防御魔法を使う。
1度ではなく、何度もだ。
つまり、耐久力はそんなに高くない。
1度でも当てさえすれば、戦況をひっくり返すことができるだろう。
まあ、当たらない訳だが、
ここに来て作戦を変更する。
真っ向勝負はお終いだ。とことん殺してやる、
相手の魔力障壁よりも内部に特攻して魔法をぶち込む。
死ぬことを前提としているが、僕にはイサノが着いている。
復活できるのはあと5回、
つまりチャンスはあと6回。
十分だな。
「イサノ!」
……イサノ、
頼むぜ、
彼女はいつも通り綺麗な白髪を揺らしながら笑った。
「……うん!」
⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯
特攻作戦1回目、障壁に到達する前に心臓を貫かれた。
特攻2回目、遠距離魔法を避けきれずに体が爆発した。
3回目、障壁に到達したが、初めて何らかの物理攻撃を受け、全身が砕けた。
4回目、流れ弾からイサノを庇って両腕が落ちた
5回目、障壁に到達し、剣による攻撃もかわしたが、追撃にあい、死亡
ラストチャンス、、、
イサノは不安そうな顔でこちらを見ている。
……大丈夫、
そう言ってやる余裕も、自信も無かった。
ただ、精一杯の笑みを彼女に向けた。すぐに振り向いたせいであまりよく見えなかったが、彼女もきっと笑っていた。
剣を作り、目の前の強敵と向き合う。
無数の弾幕を変え潜り、時に受け止め、しかし失速はしない。
この数回で見出した最短距離を駆け抜ける。
上を見上げる。
天使は変わらず微笑んでいる。
何度もこの顔を目前に殺された。
今回は殺してやる。
魔力障壁を超えて、魔王からの斬撃を間一髪で避けた。
そして、、、、




