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火の玉

「それで!一体そのあとどうなったんですか?!!」


 身を乗り出す少女の目は、好奇心を原料に光り輝いていた。

 そんな目を見て、少し意地悪をしたくなる。


「………今日はここまでにしようかな。」


「えーーー!!!」


 本当は、違う理由もある。


 ここから先は話してしまうのに勇気が必要だ。


 だから、今だけはそれらしい事を言うことにする。


「物語っていうのはいつだって重要なところで1度途切れるものなんだよ、まあ、これは実話だけどね。」


 少女がなんだか納得のいかないような顔をまじまじとこちらへ向けつけてきているが、あえて話題を変える。


「なあ、お前の目標の事だけど、考えたか?」


 そう、この少女の人生の目標を一緒に考えるというのが、とりあえずの目標だったはずだ。


「あー、私が魔王を倒すってやつですか?まさかあれ冗談じゃなくて本気で言ってたんですか?」


「うん、」


 そして、どうせなら目標は大きい方がいいと、この世界の魔王を殺すことを目標にすればいいと提案したのだ。


「私にそんなことができるわけないじゃないですか!!ていうかお兄さんの仕事でしょう、それは!」


「………」


 ………いや、僕はもう勇者じゃない。


 ていうか


「僕はできないんだ。魔王を殺すことが、だから君に頼みたい。っていうのが本音かな。」


「できない?」


「勝てる勝てないじゃなく、不可能なんだよ。」


 少女は、「なぜ?」とは聞いてこなかった。あまりに僕が真剣だったからかもしれない。あるいは、何かを察したのかもしれない、


「でも、こんな弱い私がどうやって戦うんですか?」


「……前々から思っていたんだけど、君の魔力量、えげつないんだよね。あとは魔力回路さえあれば完壁なんだ。」


 そう、彼女には才能がある。


 もしかしたら、イサノやアクナよりも、、、


 そして、僕よりも、


「魔力回路?!も、もしかして、最近魔獣をたくさん狩ってた理由って、」


「そう、魔力回路の調達のためだよ。」


 僕の話を聞いていたのならわかると思うが、魔力回路の移植にはとてつもない苦痛が生じる。

 僕が味わったように、、、


 そして、成功する保証もない。


「いやいや、無理ですよ!痛いのはごめんです。」


 今までのやり方だとそうだが、、、


 僕の魔力と魔法があれば、その心配を排除できる。


「まあ、任せてよ、僕が完璧に済ませるから。それに、痛みとかないから」


「………うう、」


「魔法って便利だぞ、すぐにお湯もわかせるしな。羨ましがってたじゃないか」


「………」


「はあ、それに、取らなくていいのか?」


 なにを?少女はそう顔で訴えてくる。


「仇だよ、君のそばにいた全ての人と、君の生活の、」


 そう口にしたあと、すぐに少女の全身が強ばったことに気づいた。その姿は、悔しさを噛み締めているようでもあり、悲しみに耐えているようでもあり、何かに恐怖しているようでもある。


 しばらく少女はそのまま動かなかった。


 そして、そんな彼女を待つのは僕の義務だった。


「どのくらい時間かかりますか?」


「10分くらい」


「……意外と早いですね、、」


「僕がやるからね」


「………じゃあ、お願いします。」


 わかった。


 魔力回路、魔力を通す管。


 第二の血管のようなものだ。そして、第2の神経でもある。


 それを魔力で直接体に転移させる。中々の大技、しかも魔力の消費も計り知れないだろう。


 王国がこのやり方を採用しないわけだ。


 僕が少女の肩に触れると、彼女の体の強張りはすぐに溶けた。


 ここからは僕も集中しなくてはならはい。回路の位置が少しでもズレれば取り返しがつかない。


 傷つけないように慎重に、それでいて正確に、そしてスピーディーに、


 集中で呼吸を止めた。魔力がとてつもない勢いで無くなってゆく。


 この10分、おそらく今までの人生で最も手汗が出た10分だったであろう。


 10分後、無事手術は成功した。


「試しになんかやってみよう」


「は、はい」


 痛みも感覚もほぼ無かったからか、手術をした実感も終わった実感もないのだろう。

 拍子抜けした様子の彼女は不意をつかれたように返事をした。


「手を前にかざして、、、おいおいこっちに向けるな。あっちだあっち、」


「す、すいません!」


「そうそう、じゃあ、指先に全神経を集中させて、、、」


 うん、いい感じだ。


 順調に指先に魔力が集まっていっている。


「あとは、、、そうだな、小さな炎のたまでも想像して、それを放出するだけ━━━━━」


 次の瞬間、巨大な火の玉が目の前の壁を焼き払っていた。






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