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アイディア

 さて、人生の目標を一緒に見つけてやる。なんて調子こいたことを言ったはいいものの、だからと言って僕に宛があるわけでもなく、そのままダラダラと時間だけがすぎてゆく。


 長年の山暮らしで身についたサバイバル能力は、この少女を連れて生き延びるのが余裕な程のレベルまで達していた。


「いいこと思いついた、」


 ボーと自堕落に日々を費やしていた訳だが、不意にある考えが僕の頭の中へ落ちてきた。


「一体何を思いついたんですか?」


 隣を歩いていた少女は訝しげな表情でこっちを見ている。


「君の目標だよ。」


「はい?」


 不意をつかれたような表情の彼女を尻目に、僕は思いつきをそのまま喋り始める。


「この世界をこんなにした自称神がなんて言ってたか覚えてるか?」


「え?えっと、己が種族の価値を示せ、生き延びたければ王を殺せ。です。」


 その意味は何となくわかる。まったく、なんの因果なのか、、、


 王、なんの王か?そんなのは決まっている。こういうのは決まって魔物の王だ。つまり、魔王。


 この世界に魔王が降臨したという事だ。


 神の手によって、


「その王をさ、君が殺せばいいんだよ。」


「はいい?!」


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 魔王を殺す。魔王を殺す。


 それだけを目標にして突き進んできた。


 魔王領に侵入してから半年、その間何度も戦った。


 今日の朝も、俺にくっついて離れないイサノを引き剥がしてから、何とか眠気を吹き飛ばして立ち上がった。


 目の前に見える巨大な建物は、禍々しい城でも、天にも届く塔という訳でもなく、


 神々しさを纏う、神殿であった。


 幻想的だ。


 本当に神が降りてきてもおかしくないような、この世の全ての邪悪をうち滅ぼすような、人間が作れる様なものとはまた、別次元のいや、別世界の存在。


 この神殿を見て思いつく言葉はただ1つ。「美しい」


 語彙がその一つだけになってしまう。実際、誰でもそうなるだろう。


 そして、わかっていることがある。


 いや、


 何故かわかっていることがある。


 ここに魔王がいる。何故か分からないが、僕たちはそう確信していた。


 僕たちの旅の、最終地点。最終目的地。旅が終わる場所。それは僕らが魔王に勝っても、負けても、同じ事だ。


 この神殿に入った日、僕たちの旅は終わる。


 そして、強大な敵の本拠地を前に僕とイサノは怖気付いたのだ。もうここで1週間は野宿している。

 明日こそは、明日こそは、明日は絶対。


 だがしかし、結局ここで足踏みをして、神殿に入ることができない。


 魔王と戦うのが怖いのか、


 それとも、この旅が終わってしまうのが怖いのか、


 だがそれにより気がついた事もある。この神殿の近くは刻印の呪いが通用しなくなるのだ。何らかの神聖な力なのか、はたまた邪悪な力によるものなのか、それは分からないが、僕たちがここでずっと足踏みを続けていられる理由はそれだ。


 だから今まで言えなかったことを言った。


「イサノ、」


「うん。」


「僕はさ、もし魔王を殺して、この刻印が無くなったら、、、魔王の代わりに人間を1人残らず皆殺しにしたいと思ってるんだ。そしたらさ、もし良かったらさ、手伝ってくれるか?」


 今まで必死になって守ってきた人間を、この世から消し去る。そんな突拍子もない事を突然口にした訳だが、イサノはいたって冷静だった。


「うん。いいよ、まことがそうしたいなら、」


「……ありがとう。」


 イサノは僕のすぐ隣に座った。


「ねえ、それが終わったら、、さ、世界で二人だけ、ずっと一緒にいようね。」


「ああ、それはいいアイディアだね。」



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