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シンギュラリティ  作者: ラーメン
入団式編
42/42

42話•朧げな夢


 《住宅街フィールド》──レッドside──


 ライオットらしき風貌をした謎の機械“ジョーカー”がシンらと戦闘を行っている最中、サグラ隊の副隊長であるレッド、伍長メガロ、一級兵士ウォルがゼフォドラの猛進を食い止めるべく立ちはだかるのだった。


 『……』


 相対するゼフォドラは怪異の姿で黙ってまま立ち、目線の先にはシンが居座っている。

 そんな姿をレッドは目にしながら自分と横に並ぶ各隊員に向けて呟く。


 「ゼフォドラ元副団長……だったか?」


 赤髪の目つきが悪い男、レッドは何かを思い出したかのように呟くと銀髪に紫色が混じった男、メガロが意気揚々と返す。

 

 「んまー。そうっすね。俺らの時代には居なかった“伝説級の男”ですからね」

 「なるほど“伝説級の男”かぁ。ってオレらの時代にもいるだろ、ふざけんな!」

 「はっ、カシラっすか」

 

 メガロは分かり切ったかのように歯を見せながら笑い、敵に刃を向ける。

 その姿をみてレッドは自信満々に答える。


 「……あぁ!オレが尊敬する二人の内の一人、サグラ隊長(カシラ)だ!」 

 「そうでしたねェ!レッドのダンナァ!!」

 「……ガルルルル」


 その瞬間、レッドは肩や腕を発火させると同時に自身の武器である鉄爪をも発火させる。

 ──まさにその姿は紅く闘志を燃やす“朱き虎”のようである。

 そしてそれに呼応するようにメガロとウォルの闘気が練り上げられ、ゼフォドラへと攻撃を開始する。


 「ガルル……!」


 人狼と化したウォルがまずゼフォドラへと突進をする。

 全身を使い敵の腹心へと一気に近づくと、背中でゼフォドラへと体当たりをする。

 その威力は車のような鉄塊を吹き飛ばす程のもの。それほどの威力の体当たりをゼフォドラにやって見せたのだ。


 『……』

 「ガルル…!?」


 だが、その威力は発揮される前にウォルの体が後方へ吹き飛んでいく。

 なぜそうなったのかすら本人でさえ分からない程の呆気なさだ。

 ウォルは吹き飛ばされるものの、直ぐに体勢を立てるように修正して追撃に備えるために両腕を交差して防御する。


 『……』

 「……?」

 「戦う意思が無エ、のか?」

 「どうやら立ったままのようっすね。折角俺のこの“ギガントスパーク”をお見舞いしたかったのに」

 「クソダサイ名前どうにかしろよ!お前!」


 なんとゼフォドラは立ち止まったまま、動かないのだ。こちらに攻撃さえしてこない。

 目の奥が黒く染まり、意志を失った人形のようである。

 その姿を見てまず疑問に思ったのがウォルであった。


 「……?」

 

 ウォルはすぐさま人狼から人間体に戻ると、首を傾げたままレッドに疑問を投げかける。


 「……ねね。ダンナ。俺っち気付いたんだけどネ」

 「……ん?」

 「この人……死んでない?」


 ウォルは不思議なことをレッドに向けて投げかけたのだ。


 『……』

 「この男が……死んでる?」


 レッドは再びゼフォドラの姿を見る。

 その男の眼は完全に生気を失っており、一切の瞬きをしない。

 

 『……』


 ゼフォドラはただ立ったまま一点だけを見つめるばかりだ。

 そんな折、ゼフォドラは生死の境を彷徨っていた。

 長い夢のような、昔話を思い出していたのだ。


 ◆◇◆

 

 《ゼフォドラの(おぼろげ)げな夢》


 「……おーい!ゼフォドラ副団長ー!起きてください!」

 「……早く起こさないと始まっちゃうぞ?」

 「わかってるわよ、ネズリ。副団長!早く!」


 ゼフォドラの耳には二人の聞き覚えのある声が突き刺さり、その声によって目をゆっくりと開けると声の主達が声を荒げる。

 ゼフォドラの眼前には見覚えのある二人が朝焼けに照らされている姿があった。


 「……メアリー、ネズリ。すまん、ちょっとうたた寝をだな……」

 「副団長ともあろうお方がうたた寝なんて……もう!」

 「ゼフォさんらしいじゃん。ちょっと抜けたとことかさ?」


 目の前には赤く長い髪をした目が青い女“メアリー”が怒りながら辺りを綺麗に整頓しており、灰色の髪をしたタレ目の男“ネズリ”が壁に寄りかかりながら笑いかけている。


 「んもう!ゼフォドラさん、今日は特別な日ですよ!部下達に思い知らせてやるんです!この組織の邪悪さを!!」


 メアリーはキラキラした目をゼフォドラに向けて拳を突き上げる。その姿を見たネズリは吹き出すように笑う。


 「ぷっ!特別な日ったってただの顔合わせの日だからな?」

 「わ、わかってるわよ!今日はみんなに『やってやるぞ!』って日だと思わせたいから━━━━」

 

 その時、ゼフォドラは自分が寝ていた大きなベッドから起き上がり、あくびをしながら声を出す。


 「ふぁぁあ……だからってこんな時間に起こすことないだろ?今何時だ?」

 「……朝の5時っすね、“総会”が9時半からっす」


 ネズリが苦笑いをしながらそう答えるとメアリーが追加して弁明しようとする。


 「いやいや、早くないですよ!?だってゼフォドラさん絶対遅刻するし、絶対無駄口叩いて遅刻するし」

 「お前らにはどんな風に俺が見えてるんだよ」


 するとその時ゼフォドラの室内のドアがドンドンと叩きつけるような音が鳴り、それと同時に声が響き渡る。


 「━━おはようございます!!ゼフォドラ副団長!稽古つけで下さい!あっ、メアリー団長補佐とネズリ団長補佐もおはようございます!」

 「……シャド、ノックして俺の返事の前に開けるなよ」

 

 そのドアを開けた主は短い黒い髪をした金眼の青年であり、両手には様々な機械を持ち、溢れて落ちそうになっている。


 「す、すみません。でも俺強くなりたくて!」

 「今日も俺か?カヤとかルルシオとかは相手してくれねぇのか?今日はゆっくり寝ていたいんだがなぁ」

 「カヤさんは眠いからって断られて、ルルシオはしつこいって怒られちゃってて……頼れるのはゼフォドラさんしかいなくって」


 シャドは苦笑いしながらゼフォドラへ頼み事をする。

 それに対して彼はシャドへアドバイスするように言葉を出す。


 「……まだ諦められてねぇのか、喧嘩で負けた事」

 「はい。俺は一生懸命にやってるのに……」

 

 シャドは下に顔を俯かせ、真剣な表情で唇を噛む。

 すると突然、ネズリが笑い出すと共に声を出す。


 「ハッハッハ!シャドお前、まだこの前の近所の不良にぶん殴られたの気にしてんのかよ!」

 「ネズリ!空気読みなさい!」

 「へーい」


 その言葉に拳を握るシャドを見たゼフォドラは真面目な顔をし、肩にポンっと優しく手を置く。


 「……シャド、どうしても勝ちたいならな。手段は問うな。お前のことだから正々堂々とやったんだろうが、そんなのは俺らが行く戦場には関係ねぇんだ。どんな手を使って勝っても、お前を(とが)める仲間は居やしねぇ、お前が生きて帰ってきたらそれでいいんだよ」

 「……はい!」

 「いくぞ。稽古付けてやる。終わったら“総会”だからな」


 シャドはその答えに元気よく答えると、ゼフォドラへ言葉を敬語を込めて叫ぶ。 


 「ありがとうございます!!」


 ゼフォドラとシャドが扉の先の訓練所まで歩く。

 その姿を見たネズリとメアリーが語っていた。


 「シャドくんは声は出るんだけどね……!」

 「余計な事は言わないの!ネズリ!」

 「冗談だよ冗談、そんなとこがあの子のいいところなんだ」

 「……将来あの子も隊を持つことがあるのかしら、心配」

 「……母親かよ」

 

 ゼフォドラはこんな日々が幸せと感じていた。

 部下であるネズリ、メアリー。そして伍長カヤ、シャドとシャドと同期のルルシオを含む仲間らとの単純で爽快な日々が━━。



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