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部長が襲うので安心して寝られない的な話  作者: みずはら
[第1章]ジャーナリストじゃない僕
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(4)ここは普通の学校の……はず

 僕は、これ以上の被害が起きないことを祈りつつ、下を向いた。

 そうだ。

 ここは大人しくしておいて、解放されたら超自然科学研究部に逃げ込もう。

 大山先輩なら、三年生だし、頭良いし、何とかしてくれるかも。

「蘭花ぁ、大山先輩からさぁ、返信来たけど……」

 混乱する僕をよそに、パソコンに向かっていた裕樹が不機嫌そうな声を上げた。

「ん? どした? 裕樹」

 蘭花が、裕樹の所に歩み寄る。

「先輩さぁ、『我が超自を希望する新入生なら、一度本人と直接話をさせるべきでは? 君の情報はありがたいが、論理性に欠けている』って、どうしようか~」

「ったく、噂通り面倒臭い奴だわね。そんなに理詰めで生活したいなら、外務省にでも就職すればいいじゃん」

 突然、不機嫌さ全開の表情をする蘭花。

 いや、外務省とか関係ないし。外務省の人に失礼だろ。

 だが、僕は、蟻地獄に、上から水が注がれているのを感じた。何とか這い上がれそうだ。

 そりゃ、蘭花達がどんな連中か知らないけど、大山先輩の方が何枚も上手だって事だ。

 僕は、心の中で、大山先輩にエールを贈る。『無理をせずに頑張って下さい。僕はまだ大丈夫です。でも、早く助けてください。ここはとても怖いです』と。

 その、僕の視線の先で、先ほどとは打って変わって厳しい表情で、手帳をめくる蘭花。

 もう、勝負は付いたようなものですし。

 早く解放しないと、生徒会に訴えられますよ? 蘭花さん?

 僕が、穏やかな笑みで蘭花を見ていると、蘭花と目が合った。

 慌てて笑みを抑え、可哀相な後輩Aを演じる。

 ……と、突然、蘭花が不敵な笑みで僕を見返した。

 根拠はないが、すっごく嫌な予感。

「裕樹さぁ、返信を」

「あいさ~」

「『あゆみと相談してみるけど、いい?』以上。」

「ん?」

 裕樹は、怪訝な顔を蘭花に向ける。

「それだけ? あゆみって二組の稲本だよね。何か関係あるの?」

「いいからいいから~」

 対して、蘭花は、不敵な笑みを僕に向けたまま、裕樹を促す。

 首を傾げながら、裕樹はキーボードに手を走らせる。


 数十秒後、PCで電子音が鳴り、裕樹が「ほう」とため息をついた。

「さすがは蘭花。交渉成立だねぇ。薫君の件、諦めるってさ~。ところで、稲本って、確かコスプレ研の部長だったよね。超自と何か関係あるの?」

「秘密☆」

 今、僕の手の届かないところで、何かのスイッチが切り替わり、再び蟻地獄の中に落ち出すのを感じていた。あの大山先輩を軽くあしらうとは、もしかして、僕は、とんでもなくやばい人と関わってしまったのかもしれない。

 裕樹ににこやかな笑みを向けると、蘭花は、棚からB5大の紙を取り出し、テーブルの上に置いた。

「さっ、薫君の行く部活は無くなったことだし、サインしよっか」

「えっ? 何でですか?」

 それでも、最後の望みにすがる。人間って、悲しい生き物だよな。

「だからぁ、UFO件も超自も、薫君をうちに譲ってくれるってさ~」

「うんうん。それに、機密事項も見ちゃったしねぇ、こればれたら、薫君停学になっちゃうかも……。困ったものだよ~」

 全然困ってない様子で、裕樹。

 冗談じゃない!

 こうなったら、実力行使だ!

 生徒会室に逃げ込めば……。

 僕は、引きつった笑みを浮かべ、横目でドアの位置を確認する。

 大体、蘭花も詰めが甘いって。

 蘭花は、メールの確認をしたために、今、部室の奥のPC側に居る。

 つまり、出入り口はがら空きだって事。

 蘭花は「往生際が悪いねぇ」とでも言わんばかりに、深いため息と共に裕樹の方を振り返った。


 ――今だっ!

 僕は、まるで陸上の代表になれるんじゃないかと言うほどのフォームで跳ね起きると、踵を返し、蟻地獄の出口へと走った。

「あっ、薫君! 勝手にドア開けたら、どうなっても知らないよっ!」

 知るかっ。どうなるかは、生徒会が決めることだっ!

 テストのことだって、無理矢理見せられたって、正直に言えばいい。

「薫君! ちょ、ちょっとっ! リアルに待ちなさいよっ!」

 がたがたと音をさせ、蘭花が慌てて僕の腕をつかもうとする。

 先ほどと打って変わって、狼狽する蘭花。

ざまぁ見ろ! 待てと言われて、待つ馬鹿は居ない。

「だめだって!」

 必死に捕まえようとする蘭花の手を再びよけ、足下の段ボールを跨ぎ、ドアのノブを――

「うがああああああああああああ――!」

 自分の口から、自分の物でないうめき声が漏れる。

 ついで、バシュッと、聞き慣れない音がし、身体が硬直し、制御不能に陥る。

 ……なんで? ここは、学校の中……だよね?

「だから、待てって言ったのに~」

「蘭花~、薫君に説明してなかったの?」

「えへっ☆」

 裕樹と蘭花の馬鹿げたやりとりを聞きながら、ああ、これが、テレビでよく見る、高圧電流ってやつか……と思いながら、僕の意識は混沌の闇の中に落ちていった。


 まあ、それから色々あって、結局僕は、ここDMZ同好会に所属している。

 ほら、よく言うだろ?

 長いものには巻かれろって。

 どうせさ、蘭花みたいな先輩に目を付けられたら最後、逃げようとすれば、エアガンの餌食になるか、その銃弾をかわしたとしても、最後は電気ショックを受け、結局、この蟻地獄からは抜け出せないってわけ。

 僕の反省点とすれば、あの日、蘭花に出会ってしまったこと。その上、失態を四つも重ねてしまったこと。

 あの後、泣く泣くサインする僕に、「ほら、蘭花はああ見えても、人を見てるから。誰でも良いって訳じゃないんだし。うちら側に付いていれば、学校生活で困ることはなから、ねっ?」と、裕樹が慰めてくれたっけ。

 いやいや、同情するなら解放してくれ!

 まあ、でも、蘭花と敵対して、これから三年間、何かにつけ弱みを握られる事に怯えるよりは、仮にモンスターであっても、味方に付けておいた方が何かと都合が良いって思ったんだ。

 それに、例のビデオの行く末を監視しなきゃいけないし。

 でも、蘭花のこの悪行は、残念ながら、DMZ同好会と生徒会の一部の人以外は知らない。

 外の世界では、蘭花は愛想が良いし、何より外見は可愛いし、二年生では彼女にしたい女子ナンバーワンなわけで、僕が仮に真実を伝えたところで、誰も信じるわけがないと思う。

 それに、あんまり言うとDMZ規則第二条で言うところの『機密事項漏洩で銃殺』になりかねないから、僕も、あまり積極的に『真実』を訴えたりしない事にしている。

 僕は、ジャーナリストじゃないからね。


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