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部長が襲うので安心して寝られない的な話  作者: みずはら
[第3章]DMZ同好会の危機的な
12/44

(1)本当に廃部になっちゃいます

 昔、何とかの法則ってのが流行ったよな。

 ほら、傘を持っていかないときに限って雨が降る……とか。

 読めば読むほど、当たり前のことが書いてあって、『そんなくだらない内容で本出すんじゃねぇ!』って突っ込みたくなるような……。

 え?

 お前本当は何歳だ? って?

 僕は正真正銘、高校一年生。まだ人生を十五年しか生きていないよ?

 まあ、言いたいのは、なるべくしてなるってのは、大体ろくな事でないことが多い。

 しかも、真面目に生きている人ほど、はまる確率が高い。……と思う。

 例えば、カンニングの常習犯は捕まらないのに、真面目な生徒が、ほんの出来心で、恐らく一生に一度の不正行為をやってしまったところを、運悪く摘発され、停学になっちゃうとか。

 全く、世の中の正義って奴は、一体何のための正義だって思いたくなるよね。



「さて、部員も三名になってしまったところで……」

 PCに向かって、忙しく作業をしている裕樹を背に、蘭花はイヤフォンを外すと、携帯プレーヤーの画面をタッチし、唐突にそう切り出した。

 机の上にはB5大の紙が二枚。

 見るまでもなく、退部届だろう。

 自業自得ってやつ。

「あー、やっぱりねー。……あ、もう生徒会受領済みか~。さすがにこれは一本取られたねぇ」

 蘭花の肩越しに書類を見ながら、祐樹。

「三名ですか~。ってことは、部長と裕樹先輩と僕とで三名……って、えええええええ?」

 蘭花の言葉を反芻していた僕は、DMZ同好会が危機に直面していることに気づく。

「さ三名って、確か、部活として認められるには四人必要ですよね? 部活って認められないって事は、部室が無くなるってことですよね? ここ追い出されちゃうんですよね?」

 データの入ったメモリーは、未だ生徒会から返ってこず、一難去らずにまた一難。

「あっはっは。大丈夫だよ、薫君。そもそも、DMZは部として承認されていないから~」

 畳みかけるように質問をする僕に、裕樹は手をぱたぱたと振りながら言った。

 ああ、何だ、そういうことか~。

 確かに、元々蘭花と裕樹しかいなかったんだから、要件満たしてないし、当たり前じゃん。

 焦って損した~。

 って、あれ? 

 それって、つまり、どう言う……?

「……って、ちょっと待ってくださいっ! じゃあ、まさか、この部屋は……」

「まあ、業界用語で言う、『不法占拠』って事になるわね」

 相変わらず無表情で、淡々と言葉を紡ぐ蘭花。

「なるわね」って……

 僕は、目の前が真っ暗になる。

 どこまで校則を無視したら気が済むんだ、この人達は……。

「まあまあ、薫君。心配しなくていいよ。薫君は悪くないし。何かあったら、無理矢理拉致された可哀相な後輩Aを演じていれば大丈夫」

「いやいや、そういう問題じゃないですし」

 にこやかに言う裕樹に、僕は突っ込んだ。

 可哀相も何も、生徒会では既に共犯者扱いですからっ!

「んーと、じゃあさ、……こうだ。薫君、既成事実って言葉あるよね。この間、生徒会に踏み込まれた時のこと覚えてる? 生徒会は、はっきりと僕達のことを『君達DMZ同好会は』って言ってたよね。それに、ここの退部届に判子を押して送って来てる。つまり、事実上、僕達は部活として認識されているって事。新歓でも発表してたでしょ? 実体大事。書類なんて飾りですよ、大佐」

 ああ、そういえば、生徒会の連中も『部室での不正行為』とは言ってたけど『不法占拠』とは言ってなかったな。第一、「部室」って言っちゃってるし。

 じゃなくって!

 格好良くどこぞのアニメの台詞真似たって駄目だし!

 いや、……もういいや。不毛すぎるよ、この会話。


「そんなことよりもっ!」

 両手でバンっと机を叩く蘭花。

 セミロングの髪がふわっと靡く。

 びっくりして見上げる僕をちらりと見、

「誰がCG作るのよっ! 作品投稿の締め切り迫ってるのよっ! あたしだけじゃ無理よっ」

大声でそう言うと、大げさにため息をついた。

 珍しくまともなことを口走る蘭花に、「だよねぇ~」と、裕樹は困ったようにつぶやいた。

 そう、何かと物要りのこの部は(ああ、部じゃないのか)、資金調達のために、曲データを作っては雑誌に投稿して原稿料をもらっているらしいのだ。

 最初は、少ない部費の補填かと思っていたのだが、部費は元々一円も無かったって事だ。

 まあ、蘭花としては、部室にある高性能な業務用PCと、ネットワークが目当てだったんだろうけど。

「まあ、メモリーも取られちゃってデータはパーだし、こういう場合、話の流れ的には……」

 裕樹が楽しげにそう言い、僕の方を見た。


 え?


 気付くと、蘭花も僕の方を見ている。


 ええ?


「ちょ、ちょっと待ってください! ぼ僕に出来るわけ無いじゃないですかっ!」

 僕は必死に抗議する。

 大体、音楽データだって、やったことない上に毎日繰り返される蘭花のだめ出しで四苦八苦だったんだ。

 この上、CGなんて……、確実に死んでしまう。

「ふふふ、薫君はいちいち驚いてくれて、反応が面白いね~」

「裕樹先輩っ! 楽しんでる場合じゃないですよっ」

 僕の威嚇に、まあまあと手をぱたぱたさせ、

「ちょっと、つて当たってみるわ~」

裕樹は蘭花にウィンクすると、戸口に向かった。

「うん、裕樹お願い~。交渉が上手くいかなかったら言ってね~」

 蘭花はにこやかに手を振りつつ、ちらりとポケットの手帳を覗かせる。

「おっけ~。まあ、多分、僕の貯金で足りると思うけど~」

 何が楽しいのか、嬉しそうな裕樹の声がドアの向こうへ消えていった。

 前言撤回。今までの会話、まともだと思った僕が間違っていた。

 今、にこやかな笑顔の下に、何か黒いものが見えたぞ。

 数日以内には、彼女らの餌食が数名出ると思われる。

 まあでも、確かに、新しいソフト音源もほしいし、僕以外の人の犠牲はやむを得ないか。

 ……って、この思考は蘭花的でやばいな

 いやいや、その前に心配することが山ほどあるような気がするな……。


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