第三話 節約は買うべきもののグレードを下げるものではない
突然だがこれまで俺が続けてきた節約について話させてほしい。
40歳でセミリタイアまでには至ったのはこの節約のおかげだ。
ただ、それは決して辛い我慢の日々ではなかった。
一番大事なのはトータルコスト——つまり『何にお金をかけるべきか』なのだ。
「見た目や見栄えも大事だけど、一番は長く使えるのがいい」
自分の年収から生涯に使えるお金を計算し、何を買うかを分配していく。
その際どのくらいの頻度で買い替えるのか、高く買うなら何年長持ちをするか。
あるいは、メンテナンスや修理をしたらどのくらいのびるのか。
新しいものを買うのと比べて、どちらが結果的に得をするのか。
「ただ同じものを長く使うのではなく、修理にかかる費用も計算してやるのが大事だったな」
俺の代表例で言えば、車——カローラツーリングだ。
本体価格だけで見れば、確かに軽自動車が一番安い。
だけど、命を乗せて走ることを考えたら、どうしても安全性を妥協することはできなかった。
かといって、ランクルやプリウスは頑丈で憧れる部分もあるけれど、自分の暮らしにはちょっと豪華すぎる。
そうやって引き算をしていった結果、カローラツーリングが俺にとって一番ちょうどいい「最適解」だったんだ。
「燃費もよくてここまで俺を支えてくれたからな」
最新の自動ブレーキなどの安全性能を備え、長持ちする強固なボディを持っている。
さらに、燃費や維持費などのランニングコストも手頃だ。
目先の数十万円をケチって安全性を妥協するのではなく、これから10年、15年と長く安全に乗ることを考えたとき、トータルで一番安くつくのはこれだと計算した。
長く乗るなら、車の下回りやボディを保護することや、定期的に水洗いや点検も欠かせなかった。
「色も選び抜いて熱くならないようシルバーにして燃費を向上させた。おじさんくさい色だが汚れの目立ちにくさも決め手だ」
俺が学んだ節約とは、決して買うもののグレードを下げることではない。本当に必要な機能を見極め、自分の命や生活の質を守るために賢くお金を使うことなんだ。
「車を実際に自分のものにすることが大事だ」
今のディーラーは、車を売るだけじゃない。
残価設定ローンという仕組みで、車を自分の名義にさせず、金利で儲けようとしている。
アルファードなんかはそれが顕著だけど、身の丈に合わない車でローンを組むのは危険だ。
それなら、銀行やネットでしっかりと低い金利で借りたほうがずっといい。
「とはいえ、AIに相談するまでは、俺も『現金一括で買うのが正義』だと思っていたんだけどな」
金利を払うのが嫌で一括で買おうとしていた時期もあった。
もちろん資産状況に余裕があるならそれもいい。
でも、20年先、30年先の手元の現金を考えたとき、低金利のローンで現金を残しておく方がずっと得をするということに気づいたんだ。
大体半年分無収入でも暮らせる防衛資金を残し、残りはNISAの複利に回す。
最初は「金利をゼロにするのが一番」と思っていたけど、投資の複利の方がローンの金利を上回るなら、手元にお金を残した方が結果的に資産は大きくなる。
「毎日使うもの、車に限定しないでもスマホや趣味もの、家電でもいい。長く使うときめたならトータルで見るべし」
コスパ、タイパ、色々と重視するものはあると思う。
これらのベースに、「長く使えそうかな?」という意識を持つだけでも世界の見え方が変わると思う。
あとは当たり前の話だがサブスクや食費、飲みものや生活コストを下げられる固定費はないかを探すのも大事だ。
節約は日々の勝負である。
その結果が種銭であり、それを元手に投資や妥協しない選択肢を選ぶ。
「残酷なことに、お金がある人のほうが資産を減らさないでいられるんだよね」
高所得者や、お金持ちは税金が高いので結局資産を減らすのではないかと思っていた。
しかし、結局大きなお金を使うときや投資の面では圧倒的に種銭が力になる。
NISAなどの資産運用で得たお金は所得にカウントされず、非課税世帯になりやすい。
非課税世帯は色々と免除になるし収める税金も少ない。
それと人類最大の発明である『複利』。
この存在の意味を知った時、俺は本気でリタイアを決意した。
「まぁ、それは昔の話で今は扶養制度の見直しや金融所得課税が厳しくなり、完全なリタイアまでには到達できてないけど」
俺は昔、将来の自分たちの生活が本当に成り立つのかを、徹底的にシミュレーションした。
これから先、消費税や所得への課税はさらに厳しくなるだろう。
世界経済は成長するにしても、インフレで日本円の価値が下がっていけば現金だけを持っているのは危険だと判断した。
それに、社会の流れとしてAIなどの新しい技術が普及すれば、今ある仕事や副業の形も変わっていく。
だからこそ、未来でも稼げそうな手段を考えたり、練習したりしてきたんだ。
日本という国の人口動態を考えれば、楽観視できる状況じゃないことも明らかだった。
「だから完全なリタイアをできるとは思っていなかったな」
最悪のシナリオでは、セミリタイア自体も危ういかもしれない。
でも、この節約と投資の計画があれば「大切な二人の時間」は守れそうだ。




