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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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空も飛べる

 大きな声を出したガイバーンはさらに続ける。


「ここに来るまでに幾人もの仲間が犠牲になった。ここに来てからもだ! 戦った私は分かる。彼らは強い! 私たちを騙さずとも、力尽くで従わせることもできるはずだ! 彼女が王だというのなら、その懐の深さを信じてみてもいいのではないだろうか!? 今以上に悪くなることもあるまい!」

「おお……、なんかお前、めっちゃ喋るじゃん」


 ガイバーンを捕まえているアルベルトが、意外なほど長文を喋ったことに驚く。

 先ほどの戦いでは、勝てなさそうだと分かってからも何度も向かってきたことから、もっと何も考えてないタイプの馬鹿だとばかり思っていたのだ。

 ガイバーンがぐるっと首を回してアルベルトの方を見る。


「うおっ、すげぇ首回るな」

「戦士よ、彼女が王というのは本当なのだろう!?」


 つい先ほどまでハルカの方を見ていたガイバーンは、今は体をそのままにして、ほぼ後ろにいたアルベルトと目を合わせている。

 人族では一般的にあり得ない首の可動域に、流石のアルベルトも少しばかり驚いたようだ。


「まぁ、そりゃあ本当だけど」

「強い戦士がこう言うのだ! 間違いない!」

「いや、まぁ、そうなのかもしれないけど。でも、〈混沌領〉だっけ。そっちに行くには、朱の氏族の縄張りを通らないといけないよ」


 レストからすれば、結局のところリスクを冒さなければならないのならば、ここで暮らしていくのも一つの手である。ハルカの言うことを信じて、犠牲を出しつつ移動した先でろくでもない目に遭うのはごめんだ。

 当然の躊躇いであった。


「そうですね……。もししばらく待ってもらえるのなら、私たちの方で〈混沌領〉までお連れします」

「護衛をしてくれる、ってこと?」

「あ、いえ……。……ええと、私も空を飛べるんですよ、このような感じで」


 ハルカは実際に地面から浮かび上がってみせる。


「移動速度はあそこにいるナギと同じくらいは出ます。それから、障壁の魔法を使って人を運ぶこともできます。モンタナ、ちょっといいですか?」


 モンタナは頷いて、ハルカが出した障壁に乗っかる。

 そうして周囲を囲うような形を作ったのち、ハルカはモンタナと一緒に軽く空を飛んで戻ってきた。


「こんな具合で、皆さんを〈混沌領〉まで案内することができます。ちょっと用事があるので、一度〈シュベート〉の街までは戻らないといけないのですが……」

「人って空飛ぶんだ……」


 レストはぽかんとしながら呟いたが、周りにいる他のガルーダたちよりはまだ冷静だった。

 すぐに立ち直ってハルカに言う。


「……僕は、お願いしたいと思った。でも、皆の意見もまとめたい。嫌だって人もいるかもしれないし、少し話し合う時間が欲しい」

「もちろん構いません。どれくらい必要ですか?」

「うーん……。そっちは、何か用事があるんでしょ? どれくらい先だと都合がいいの」


 随分と話の分かるガルーダである。


「十日から十五日くらいでしょうか?」

「わかった。じゃあそれまでに決めとく。ここを縄張りにしてる魔物をあんたたちが倒したからさ、一月くらいはこの辺安全だと思うんだ。新しく入ってくる魔物が前よりましとも限らないし、ついていく方向で考えておくから」

「わかりました。ではええと……、何か聞いておきたいことはありますか?」


 ハルカはついてきていたガルーダたち皆を見たが、誰も口を開かない。

 辛うじてレストが対応してくれているけれど、皆、今この状況を受け止められている者ばかりではないのだ。

 ガルーダたちの表情を読み取ることはハルカには難しいが、気持ちはなんとなくわかる。


「聞きたいことは色々あるよ、多分。でも、今は思いつかないや」


 レストが仲間たちを代弁するようにそう言った。


「……わかりました。ええと、食料とかは不足していませんか?」

「……ちょっとだけ」


 少し考えてレストがそう答える。

 実際は結構不足しているけれど、何でもかんでも頼る形になるのもどうなのだろうかという、遠慮のような、警戒のような気持ちである。

 まだ事態を完全に飲み込めていないし、ハルカのことも信じ切れていない。


「分かりました。では私がとった魔物は置いていきましょう。レジーナは……、その魔物、持って帰ります?」

「あ?」


 イタチモグラを置いていけば、数日分の食料にはなるはずだとハルカは思う。

 ただ、仕留めたのはレジーナである。

 ハルカが勝手に決めるわけにはいかない。


「それより、この勝負あたしの勝ちでいいよな? アルベルトたちは魔物捕まえてねぇし」

「いや、でもガルーダいっぱい連れてきたけどな」

「仕留めた魔物勝負だっつっただろ。ナギ、あたしの勝ちだな」


 ナギはグーッと首を上げて、上から並べられた二体の魔物を見下ろした。

 しばらく何とか自分の勝ちにならないか考えていたようだが、やがてペタンと地面に顎をつけて敗北を認めたようであった。


「ええと、そうですね、レジーナの勝ちです」


 ハルカがそう宣言すると、レジーナはニヤッと笑った。

 意外と勝ち負けが絡むと、レジーナの表情はコロコロと変わる。


「あたしのはナギが持って帰る。ナギが狩ってきたやつならやる」


 ナギが不満そうに喉をごごごと鳴らしたが、レジーナにひと睨みされると目をそらして静かになった。

 ナギがちょっと落ち込んでいてかわいそうだが、勝負は勝負である。

 なんだかんだレジーナが自分の獲物をナギに分けてあげることはハルカも知っているし、レジーナとナギの間ではきちんと話がついた。


「ええと、それじゃあ、あの鳥の魔物も置いていくのでお好きなようにしてください」

「ありがとう、助かる」


 レストは礼を言ってくれたが、果たして鳥の頭をしているガルーダたちに、あの魔物を渡すことが適切だったのか。

 帰り道にナギの背中で少し悩むことになったハルカであった。

拙作、『不死たる異端者と災いの竜姫』漫画が更新されておりますので良かったらご覧くだせぇ

https://comic-walker.com/detail/KC_010233_S/episodes/KC_0102330000200011_E?episodeType=first

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― 新着の感想 ―
まぁ、空で強いガルーダの上を行く空の怪物の死体はあった方は良いよね そもそもナギをつれていけば間違いはないだろうけどちょっと怖すぎるし
別に揉めないならいいんだけど種族的に弱肉強食なんだからケジメにハルおじ自らの手でボコボコにはしたほうが良くない?冒険者と一緒で舐められたらお終いじゃない? この世界優しいだけだと足元掬われること多すぎ
とは言え、日本人なら大抵は猿や犬猫を食うのに抵抗あるってのも確かだし、牛や豚食うのに抵抗のある民族もいるしで、文化とか習慣の問題でもある 疑問に思ったらとりあえず確認しておくのは悪いことじゃないと思う…
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