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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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1693/1711

戦士ガイバーン

 次に帰ってきたのはナギであった。

 口に咥えているのは、正に怪鳥とでもいうべき、妙にくちばしが尖った鳥の魔物であった。かぎづめは鋭く、頭はボコりと出っ張っていて、なんだか薄気味悪い見た目をしている。

 翼を広げれば面積はかなり大きいけれど、細長い化けモグライタチの方が可食部は大きいように思える。

 岩肌に着陸したナギは、のそのそと歩いて化けモグライタチに近寄ると、横に並べるようにぼてっと瘤鳥の魔物を落とした。

 そうすると、やはり獲物の長さで比べた時には化けモグライタチの方が大きい。

 地面に置くときに、レジーナが丁寧に伸ばして置いていたのはこういうことだったのかと、ハルカは肉をあぶる方向を変えながら納得した。


 ナギはしばし二体の魔物を見比べていたが、しばらくするとチラリとレジーナのことを見た。

 そうしてレジーナが肉の焼き具合を見ているのを確認すると、そっと首を伸ばして、化けモグライタチの尻尾の方を咥えて折りたたもうとする。

 流石にそれは良くないなぁとハルカが注意しようとすると、それより先に、レジーナが小石をナギの額にあたるように投げつけていた。

 カッと音がして小石が割れたことから、それなりの勢いをもって石が投げられたことは分かるが、当然のようにナギはダメージを受けていない。

 ただ、石がぶつけられたことは分かっているし、レジーナが自分のことをぎろりと睨んだことにも気が付いたようだった。

 ナギはググッと頭を低くすると、化けモグライタチの尻尾を最初にあったようにピーンと伸ばし直す。

 ちょっと乱暴ではあるけれど、これもまぁ、教育なのかもしれない。


「何この生き物……」

「変な生き物だな。何でこんな泥だらけなんだ?」


 ナギの背中から降りてきたレオンが、脳天を砕かれている魔物を見て足を止めた。

 テオドラも興味津々で動き回ってあちこちから眺めている。


「地面を潜って移動してたんですよね。出てきたところをレジーナが仕留めました」

「へぇ、変な魔物。地面の中にいるっていうと、結構倒すの大変そー」


 コリンがもっともな感想を漏らす。

 実際腹が減ってなければ地表に現れないような魔物だからこそ、ここまで大きく育ち切ることができたのだろう。これだけ大きな魔物となるとなかなかの年月を生きてきたであろうし、この辺りの主であってもおかしくない。


 それを考えるとナギが捕獲してきたあの鳥の魔物も、相当な大きさをしている。

 牛でも掴んで持っていけそうなかぎづめを見る限り、こちらも相当長生きしているはずだ。

 どちらも暮らす領域が違うからこそ、互いに戦いが発生することがなく生き残ってきたのだと考えると不思議なものである。

 しかしこうなると、徒歩で移動しているアルベルトとモンタナ組はかなり不利になるかもしれない。


 そんなことを考えていると、丁度少し離れたところからアルベルトの声が聞こえてくる。


「お、ナギがもう帰ってきてんじゃん。……おーい!」


 手を大きく振っているアルベルトは、片手にロープを持っている。

 魔物に括りつけて引きずってきたのだろうかと思ったハルカであったが、間もなく見えてきたロープの先にいたのは、魔物ではなかった。

 人と変わらぬ程度の大きさに、鳥のような頭。

 背中に対となった翼を生やしたそれは、破壊者ルインズのガルーダである。


「魔物いなかったですけど、ガルーダの住処見つけたですよ」

「く……っ、殺せ!」


 縛られているのは、ガルーダにしてはガタイのいい男性のようだった。

 渋い声で悔しそうに吐き捨てる。

 一方でアルベルトはあきれ顔だ。


「だから殺さねぇって。負けたから連れてきただけだろ。縛っとかないとお前暴れるし」

「なんと巨大な竜! これに食わせるために連れてきたのか!? せめて仲間たちだけでも!」

「だから違ぇって」


 しょうもないやり取りを繰り広げる二人の後ろからは、モンタナに引き連れられるようにして、二十人ほどのガルーダが現れる。


「あの……、えーっと……。すみません、この山ってガルーダの皆さんが住んでいたんですね」


 ハルカが肉の串を持ったまま立ち上がり歩み寄ると、「なんと!!」とアルベルトとやり取りしていたガルーダが声を上げる。


「我らが天敵たちが死んでいるではないか! 貴殿らがやったのか!?」

「……ええと、あの魔物たちのことですかね?」


 そのガルーダが見ている先には、魔物の死骸が二つ。

 普通に考えればかなり強い魔物の部類であるから、この辺りに住んでいるというのならば、ガルーダたちの天敵であってもおかしくないだろう。


「話がややこしくなるからちょっと静かにしてて、ガイバーンおじさん」

「しかしレストよ……」

「いいから」


 そう言ってずいっと前に出てきたのは、割と細身のガルーダである。

 レストの言う通り、ガイバーンと呼ばれたガルーダに話を任せていては、話が何も進まなさそうであるので、ハルカとしても助かった。


「あっちの方角に、ガルーダたちの集落があったです。何人くらい住んでるです?」

「七十人くらいかな」

「多分、それくらいです。襲われたですけど、アルが戦って勝ったですよ。ガイバーンさんは気絶させたですけど、目を覚ますとまた暴れるですよ。だから仕方なく縛ったです。他の人は割と話が通じるですよ」


 どうやら既に結構話をしてから一緒にやって来たようだ。

 拘束せずに何人も連れてきたのはそういうわけであったらしい。

 それを聞くとなおさら、ガイバーンはちょっと話が通じないガルーダであることが分かる。


「あー……、それは良かったです。すみません、突然お邪魔してしまったようで。私はハルカ=ヤマギシと申します」


 ハルカが頬を掻きながら納得し、ぺこりと頭を下げて自己紹介をすると、レストは驚いたように目を丸くした。


「ほう、私は戦士ガイバーン! 朱き氏族より弱きものを守る本物の戦士!」


 そして、縛られているガイバーンが堂々と名乗りを上げる。


「あ、はい、ありがとうございます」


 ハルカが真面目な顔で頷くと、レストは目を細めて、「ガイバーンおじさんがすみません」と申し訳なさそうに頭を下げるのであった。

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― 新着の感想 ―
またおもしろおじさんが登場してきた⋯
ワロタ、ナギくっそ可愛いな
こっそり獲物縮めようとするとかなんだこの可愛い生き物
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