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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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子供たちと可能性

「さて、私は午後の準備をしてきますのでこれにて!」


 楽しげに会話を引っ張っていたジェイルが、さらりとそう言って席を立ち、部屋から出ていった。

 三人になると少しばかり静かになったが、会食というのは本来こんなものである。

 ジェイルは割と小食であったが、クダンとフォルカーは一人ですでに三人前くらいの食事をとっており、そのペースに合わせて食べていたハルカも、既にそれくらいは食べてしまっている。

 食べ過ぎだなぁと思いつつも、美味しい料理と、食べてもいい雰囲気から、ハルカはひそかにこの食事を楽しんでいた。

 この体になってから、胃もたれをしなくなったし、満足感で食事をすることが増えて、満腹で動けなくなることもない。いくらでも食べていいと言われたら、どれだけ食べられるのかは謎だ。


「そういえばお前、こいつになんか話があるんじゃねぇのか?」


 会話が途切れたところで、もくもくと食事を続けていたクダンが不意に顔を上げ、ハルカに話のきっかけを作る。

 こういったところで気を遣うあたり、なんとなく性格が出る。


「ええ、実は」

「ほう、なんです?」

「……先日、屋台を巡っていたらちょっとしたごたごたがありまして」


 そんな語り出しから、ハルカはできるだけ主観を混ぜずに、起こった出来事を説明していく。

 フォルカーは特に表情を変えることもなく、相槌を打ちながら話を聞く。

 最後まで話し終えたところで、クダンが顔を上げて一言。


「ま、よくある話だな」

「そうなんでしょうね」


 それに関してはハルカも同意だ。

 この世界のどの街でも見られる光景。

 別に〈シュベート〉であったから、特別治安が悪くて起こったことではなく、そういったトラブルを乗り越えて生き残るものが、一流の商人になったりするのだ。

 一流にはどうやら間違いなく、運も必要になってくる。

 この世界を数年生きたハルカも、流石にそれは理解している。


 だが、一流になれなかった者でも、環境さえ整っていれば、優秀ななにがしかになれた可能性はある。

 それをハルカはもったいないと思うし、そんな者たちに道を作ることができる可能性を、今の自分は持っているのではないかと思うのだ。思い上がりかもしれないけれど、誰かが苦しんだり辛い思いをしているのを見て見ぬふりをするよりは、何か動いてみたら良いのではないかと思う。


「実は私は今、拠点の北側に、港を持つ村を作っています」

「ほう? ハルカ殿の拠点というと……、〈黄昏の森〉の方ですね。港があるというと……、ああ、いい場所だ。〈混沌領〉が近いとはいえ、これまで街ができていなかったのが不思議なくらいです」

「はい。国の方に伝えると、何か色々と面倒ごとがあるらしいので、勝手にやっているだけなのですが……」

「【竜の庭】ほどの活躍をしていると、それくらいは簡単でしょう」


 その称賛の言葉をハルカは軽く笑って流し、話の本質的な部分に触れることにする。


「そこでは既に漁業関係者と、船乗りたちが暮らしています。少しずつ人を増やしていければと思っているのですが……、それに、今回のような、生活に困っている子たちを勧誘出来たらなと考えているんです」

「なるほど……、素晴らしい考えです。つまり、その子たちを勧誘していいのか、という話ですな?」

「はい」


 フォルカーは指で髭を撫でながらしばし考えてから、首を少しばかり傾けた。


「そもそも、ハルカさんの接触した子たちというのは、街に税金を支払っておりませんので、街の住民ではありません。その上で、生き残れば街の住民となり得る可能性もある子たちです。力になれず申し訳ありませんが、この街は【ドットハルト公国】の首都であり、私の管轄ではありませんから、気軽にどうぞとは言えませんな」

「そう、ですか」

「はい。ただ……、【竜の庭】のハルカ殿が知らぬ間に子供を連れ帰ったとしても、【ドットハルト公国】から何か言うことはないでしょうね」

「わかりました、ありがとうございます」


 それはバランスの問題であり、ハルカの望む答えではなかった。

 ただ、何もかもが上手くいくことなどないし、フォルカーが言うのならば、きっと【ドットハルト公国】は本当に何も言わないのだろう。

 何かやりたいことがあるのならば、多少のリスクは必要になってくるのは世の常だ。この程度をリスクと思うのならば、はじめからやらないほうがいい。


「相変わらず何でもかんでも背負いこもうとすんな、お前」


 呆れた顔でクダンが口を開く。

 本人もあちこちで人に迷惑をかけられているからこそ、実感のこもった言葉なのだろう。


「そんなつもりはないんですが」

「ま、やってみたらいいんじゃねぇの。どうせ放っておいても気になってしょうがねぇんだろうから。困った時には依頼すりゃあ、暇だったら見に行ってやるよ」

「ありがとうございます」


 フォルカーがニヤッとしながらクダンを横目で見る。

 ハルカも素直に礼を言ったが、人に注意する割に、クダンがこうやってあちこちで人のトラブルを背負いこむのだろうなというのが分かるやり取りであった。


先日やっていたPOPUPSHOP!の商品が通販で販売しているそうです。

ハルカのイラストが使われた商品が色々あるので、良かったらご覧くださいませ。


https://x.com/Fuuuu_0901/status/2060285020112134638

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― 新着の感想 ―
クダンさん、依頼すればって言っとけばとりあえず隠せてると思ってないか あんた明らかに特級でも上位のお人好しで常識人だよ!
フォルカー「こちらは感知しないからご勝手にどうぞ。ただ国には報告しときます」って意味かな。 公国に一個借りができた感じ
クダンさんはほんま
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