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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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人攫いクラン

 食事が終わったあと、ぐるりとたき火を囲んで話し合いが始まる。

 まずはコリンが今日あったことの説明をして、皆は黙って話を聞く。

 聞き終えた感想としては、みんなそろって、いつものハルカだなぁといった感じである。


「で、私の案は、みんな連れて帰っちゃえばいいじゃん。なんだけど」

「それでいいんじゃね」

「そですね」


 心配なら声をかけて保護すればいい。

 少なくとも〈竜の港〉には暮らす場所がいくらでもあるし、食料だって困ることはないのだ。本人たちさえ了承すれば連れ帰ってしまえ、というのがコリン含め、一緒に旅をしてきた三人の共通意見だった。


「え、いいんですか?」

「だめなのかしら?」

「駄目でしょ」


 ハルカが驚くと、カーミラが首を傾げ、続けてレオンが否定する。


「何で駄目なんだ? だってこいつら、〈ヴィスタ〉から、サラとその家族も連れ去ってんじゃん」

「その人さらいみたいな言い方やめません……?」


 テオドラの疑問に対して、ちょっと人さらいっぽいことをした自覚があるハルカが、控えめに反論する。あの件については後々に神殿騎士の人たちからもごちゃごちゃと文句を言われているのだ。


「まぁ、あれは一応合意があったし、後始末をコーディさんがしてくれたでしょ。でも、基本的にはどこかに所属する人を、自分の街へ連れて帰るのって、労働力を奪い取るってことだから。あんまり気を遣わない言い方をするなら、人って街にとっての資源だからね」

「おぉ……、レオ、かっこいい」

「お前、賢いんだな……」


 ユーリがレオンの博識ぶりに手を叩くと、ちんぷんかんぷんのトットも尊敬のまなざしを向ける。トットは美形の男があまり好きではなかったが、それはそうとして、自分のわからないことを知っている者は素直に認めることができる。


「でもどうかしら。本人たちが望んでいれば別にいいんじゃない? これだけ人口の多い街になると、そういう子を数人連れてったところであまり気にされないと思うけど」

「注目を集めてるから余計に難しいと思うけどな。それこそ、【竜の庭】は人さらいだ、って噂されちゃうよ」


 エリの反論に、レオンは首を横に振る。


「なんかそれはそれで、強そうでいいと思うでござるけど……」


 小さな声でカオルが呟く。


「強そうってどういうこと?」


 レオンが眉を顰めると、カオルはパッと手を開いて両手を少し挙げ、降参のポーズをとる。

 カオルは自分があまり賢い方ではないことを分かっているので、レオンと話し合いをして説得できるとは思っていない。


「や、独り言でござる」

「気になるから教えてよ」

「……その、どちらにせよ【竜の庭】は、もうよくない噂が流れてるでござるよ。竜を使って国を脅してるとか、竜が人を食べるとか、気に食わないと乗り込んできて更地にするって脅かすだとか、気に食わないクランを全員無残に殺して解散させただとか……、いや、一部の人が言ってるだけでござるよ!?」


 カオルが指折り数えながら噂を羅列していくほど、ハルカの肩が落ち、耳が垂れ下がっていく。途中ではっと気づいたカオルは慌てて訂正したが、噂がある事実は事実として受け止めなければならないところである。


「でもそれってつまり、恐れられてるってことでござるよ。防衛における最上の策は、相手に侮られて襲われることがないようにすることと聞くでござる。つまるところ……、多少恐れられているほうが、争いは少なく済むということでござる」

「カオル、あなた賢そうなことも言えるのね」

「受け売りでござる」


 カオルはエリに褒められたと思っているのか照れ笑いをしている。

 ちょっと馬鹿にされていることには気づいていないようだ。


「とりあえず……、フォルカーさんに確認してから、許可が出れば本人たちにも一緒に来ないか聞いてみることにします。レオンも、ありがとうございます。彼らが一緒に行くと言っても、やっぱり上の人には確認を取ったほうが良いですものね」

「……まぁ、僕は良いんだけど。ハルカさんが悪く言われるの嫌かなって思っただけだし」


 礼を言われたレオンは複雑な表情でぼそぼそと答える。

 ハルカは再度「ありがとうございます」と礼を言って続ける。


「ああいった、その日暮らすのにも困っているような子には、ちゃんと暮らせる場所を作ってあげたいと思っていたんです。そんな話を、結構前にヴィーチェさんともしたんですよ。〈オランズ〉に戻ったら、ラルフさんとも同じことを相談してみます」


 村は少しずつ人が増え、産業が増え、やがて街へと変わっていく。

 今はまだ〈竜の港〉があることすら、公にしていないけれど、いずれは人に知られて発展していく日が来るのだろう。


「もしかしたら、人さらいの街なんて呼ばれるようになっちゃうかもしれないですけど……。やってみてもいいですかね?」

「ま、いい機会かもしれないわね。その調子で〈竜の港〉に暮らす人を増やしてくれたら、そっちで冒険者学校を作るのも面白いだろうし……」


 エリの夢は冒険者の学校を作ることだ。

 まだ何もない〈竜の港〉ならば、小さい規模から試すことができるだろうし、うってつけだろう。

 だから、真っ先にハルカの意見に賛成した。

 想像が膨らんでいき、エリは将来のことを考えるだけで少しワクワクしていた。


 最初は懸念を表明していたレオンも、具体的に話が進んでしまえば「まぁ、ハルカさんがやりたいなら、やってみたら?」といった感じだ。


 まずは明日以降、フォルカー伯爵と、この件について話をすることを決めて、ハルカたちは今日のところの話し合いを終わりにすることにしたのだった。

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― 新着の感想 ―
いやまぁ...人さらいの街ってのは言い得て妙なわけで 人たらしなマスター(王様)がいると大変だぜ!
自称竜庭がいつ出るか
子供をさらってハルカ教の教徒を増やし、思考を塗り替え世界を支配しようとしていると聞く、何を考えているさね?ってどっかのオラクル教の人が言い出しそう
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