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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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トットの大勝利報告

 大会の予選初日は日が暮れる前に終わり、会場からはぞろぞろと人が出ていく。

 明日も残りの選手による予選が行われる予定であるから、ノーレンはきっとそこで出てくることになるのだろう。

 ハルカたちがぞろぞろと人混みに押し流されて外へ向かっていると、入り口付近で頭一つ大きな強面の男、トットが柱に寄りかかっているのが見えた。

 目の前を通る人を観察しているようだが、目立つ容姿をしているので、ハルカたちの方が先に見つけてしまったようだ。


「トット、ナギのところで話しましょう」


 少し離れたところから、ハルカがひらひらと手を振って声を上げると、トットははっとした顔をしてハルカの姿を確認し、大きく頷いてそのままナギの方へ歩いていった。

 どんなにたくさん人がいたって、ナギくらいの大きさがあれば見上げればすぐに居場所が分かる。ナギのことが怖くさえなければ、絶好の待ち合わせスポットになる。


 人の流れは街に向かって一定に流れていたが、ナギの前を通る時だけその列が少し膨れる。ただ、空いているナギの前を、怖がりながらも通り過ぎていく人の姿がちらほらと見える。

 彼らの多くはナギのことをじっと見上げ、時には立ち止まる者もいた。

 近くへ移動したハルカは、柵を乗り越えてナギに近寄りながら、ナギに興味を持って通り過ぎていく人たちを眺める。司会の紹介のお陰なのか、こうして怖がらず興味を持ってくれるのは嬉しいことだ。

 ナギはハルカたちが帰ってきたことに気付いたようで、目の前にいる人たちを気にしながらも、ずるずると顎を地面に引きずるようにしてハルカたちの方へと顔を向けた。

 ハルカはその鼻先をポンと撫でてからナギに話しかける。


「みんなナギのことが気になってるみたいですよ。折角ですから、あっちに顔を向けてあげたらどうです?」


 ナギはキョロキョロと目を動かしていたが、やがて小さく喉を鳴らしてまたずるずると顎を引きずって元居た場所へ顔を戻した。

 そこでようやく、二人の会話が終わるまで待っていたらしいトットが声をあげる。


「姐さん、勝ったっすよ!」


 トットは思いのほか控えめにハルカに勝利報告をする。

 本当は雄たけびを上げて喜びたいのだろうけれど、ハルカの手前遠慮しているのであった。


「はい、見てました。動きが頭一つ抜けていて、危なげなかったと思います」

「そっすか……!」

「なぁにすかしてんのよ」


 あとからやってきたエリが、トットの横を通り過ぎながら、その肩をぺしんと叩いて通り過ぎていく。


「すかしてねぇよ!」

「良い動きだったでござる」


 文句を言っている間に、エリの真似をしたカオルが、反対側の肩を叩いて通り過ぎていく。


「お、おお……」

「やるじゃんか」

「です」


 続いてアルベルトが拳で肩を軽く殴った瞬間、反対側ではモンタナが腰のあたりに拳骨をぶつける。どちらもそれなりの強さであったが、頑張ったトットに対する、冒険者らしい称賛であった。


「普通に言えよ」


 振り返って二人を見送り、前を向き直ったトットは、目の前に小さな人影が立っていることに気が付く。

 ユーリが両手を上に挙げて、待っていたのだ。

 一緒に戻ってきたカーミラは、ニコニコとその様子を見守っている。


「かっこよかった」


 ユーリがにっこりと笑って言うと、トットもにかっと笑ってしゃがみ、ユーリと両手を合わせてぱちんと音を立てた。

 それで満足したユーリは、小走りでトットの横をすり抜けていく。


「つええじゃん」

「ちょっと、やめなよ」


 さらに後からやってきたテオドラが、まったく交流のないトットの肩をパシンと叩いて通り過ぎていくと、レオンがそれを注意しつつ「すみません」と言ってその後に続く。


「大人気ですね」

「……ハルカの姐さんのおかげっすよ」


 トットはポリポリと照れ臭そうに頭をかきながら目をそらして答える。


「そうですか?」

「そっす。くすぶって毎日イライラしてばっかりだったのが、うまく回り始めたのって、あの時からっすから」

「変わろうと思って動いたのはトットですけどね。私は本当に何もしてませんし」


 ハルカのこれは本音だ。

 冷静に考えて、ハルカはトットに対して何か役に立つアドバイスをしたこともなければ、新たな環境を提供してやったこともない。

 もし何かあるとすれば、それはトットに変わるきっかけを与えたことだ。


 それはハルカにとってのアルベルトたちとの出会いや、ノクトへの師事に匹敵するほどの大きな事態なのだが、相変わらず謙遜が行き過ぎるきらいのあるハルカは、そんな自覚がない。


「それでもっすよ。俺、決勝も頑張るんで……」


 見ててほしい、そう言おうとしたところで、ダラダラと歩いてきていたレジーナがようやく戻ってきて、ハルカの横に立ち止まる。

 そうしてじろじろとトットを足の先から頭まで眺めはじめた。


「な、んだよ」


 一度ぶちのめされているトットが怯みながら言うと、レジーナは鼻を鳴らしてそのまま横を通り過ぎて、トットの肩を強めに殴りつける。


「いてぇな! だから何だよ!」

「お前、後で手合わせしてやる」

「お……、おう……」

「おー……」


 トットは戸惑っていたが、ハルカは思わず感心の声を上げた。


 レジーナは今日の戦いで、トットがそれなりに動けることを確認した。

 そして、司会による【竜の庭】所属の冒険者、という言葉も聞いていた。

 レジーナが自分よりも弱い相手に、自主的に手合わせをすると声をかける。

 それは、レジーナがトットを【竜の庭】の仲間らしい、と認めたということでもあった。

世の中には次にくるマンガ大賞って言うのがあるそうでして、私の心はおじさんであるもエントリーのための投票ができるそうでございます。

https://tsugimanga.jp/


皆さまもしお時間がございましたら、エントリー投票の方にご協力いただけますと、とっても嬉しいです……!


因みに期間は明日までだそうです。

あっ、そうなんだぁ

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― 新着の感想 ―
ドラゴンよりわかりづらいレジーナかわよw
レジーナからの仲間認定尊い
色んな人の人間的な成長を見られるこの作品の中で、 アルと並ぶくらいトットの成長は好き
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