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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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【竜の庭】二級冒険者トット

 午後の部が始まった。

 熱い戦いが繰り広げられ、続々と決勝進出の選手が決まっていく。

 その中にはこれは本当に二級なのか、と思われるような強者も一人二人混ざっていたが、レジーナほど大暴れする者は現れなかった。


 そうしてその日最後の試合になって、ようやく舞台の上にトットの姿が現れた。

 周りより頭一つ背の高いトットは、木剣を肩に担いで周囲を睨みつけている。

 それを睨み返す猛者も時折いるが、多くの者はそそくさとトットから距離を取っていく。

 そんなことをしているうちに、トットの周りには、好戦的な奴らばかり集まってきてしまっているようだった。


「大人しくしてればいいのに、ホント馬鹿」


 言葉は辛辣だが、これはエリがトットのことを心配して発したものである。

 〈武闘祭〉の予選は、生き残りのバトルロイヤル。

 注目を集めず、淡々と生き残りを目指して戦うのが賢いやり方だ。

 実際アルベルトが出場した時は、モンタナにアドバイスをされて、賢い立ち回りで予選を突破している。


「さぁ、皆さん、本日空を優雅に飛んでいた大型飛竜は覚えておいででしょうか? あの大型飛竜を連れてやってきた冒険者宿(クラン)【竜の庭】所属、オランズからやってきた二級冒険者、トット選手!」


 ナギの話が出たからか、観客たちはどよめく。

 どうやら紹介されることは本人にも知らされていなかったようで、トットはしばし戸惑っていたが、やがて引き締まった表情で太い腕を空に突き上げる。

 それに気づいた観客の一部が、わっと歓声を上げた。

 これまで歓声を浴びる経験などなかったためか、トットは一瞬驚いたが、やがて覚悟を決めてにやりと笑う。


 【竜の庭】の冒険者として、ここまでしっかりと紹介されたのだ。

 ハルカに恥をかかせないためにも、絶対に負けるわけにはいかないという強い思いを抱いた上での、好戦的な笑みだった。

 ハルカ自身は、怪我のないように頑張ってほしい、そしてできることなら勝ってほしい、くらいの感覚であったけれど。


 最初の挑発。

 そして司会からの紹介。

 妬みから更にトットを狙う選手が増えていく。


「大丈夫、ですかね」

「さー? まぁ、でも、あいつ前衛としては結構頼りになるわよ」


 心配をしたハルカが呟くと、エリが伸びをしながら答えた。

 ドラの音が響く。

 

 トットの周囲にいた選手たちは一斉に動き出したが、トットの動き出しはそれよりも早かった。

 一番近くにいる選手に向けて突進。

 それを止めるための迎撃を、片手で持った木剣で弾き飛ばし、空いた手で胸倉を掴んで投げ飛ばす。

 ハルカが知っているトットの動きよりも、素早く、そして力強かった。

 トットを狙っていた選手の一人は、投げ飛ばされた選手に巻き込まれて場外まで転がっていく。

 トットはそれを見送ることもなく、続けて近くにいる選手に襲い掛かる。

 一撃を加えるとまた次へ。そこでまた攻撃をして、すぐに次へ。

 仕留めたかどうかは確認せず、トットは次々と油断している選手たちに襲い掛かっていく。

 トットは慎重に戦って勝ち残るのではなく、積極的に、できるだけ早く選手を減らすことを選んだのだ。


 しばらくそうしているうちに、選手たちはトットの近くにいることの危険に気が付いたようで、少しずつ遠巻きに距離を取るようになっていく。トットの賢かったところは、一対一で必ず決着をつけようとしなかったところだろう。

 とにかく一撃を加えたら離脱。

 その場にとどまって隙をさらさぬよう移動。

 そしてまた油断している者に攻撃。

 別に仕留めた相手の数を競う戦いではない。

 これもまた、〈武闘祭〉予選における、一つの正解なのだろう。

 あとは予選を勝ち抜けるまで体力が持ちさえすればいい。


 トットは遠巻きにされるようになってからも、ぎょろりぎょろりと周囲を睨みまわし、背中を向けている者、油断している者がいれば容赦なく襲い掛かった。

 時折相手選手からは罵声を浴びせられているようだが、トットはそんなことは気にせず、舞台から選手を減らすためにひたすら動き回った。


 選手が減ってきたところで、数人が徒党を組んでトットを囲み、じりじりと距離を詰めてきた。

 トットが動き出そうとすれば、別方向の選手が動く。

 時折こういったグループで勝ち残ろうとする者がいるのだ。

 トットはその中から、一番強そうなものを見定めると、他から攻撃されることもいとわず、全力でそちらへと飛び掛かっていく。その選別は的確で、このグループはトットが飛び掛かっていった選手こそを、決勝に進出させるつもりでいた。


 相手もそれなりの実力者であったのか、トットの攻撃がギリギリのところで木剣に防がれる。トットの背後には複数の木剣が迫っており、トットとにらみ合っている選手は、にやりと勝ちを確信した笑みを浮かべ、その横っ面にトットの拳を叩きこまれた。

 それと同時に、トットの背中や後頭部に複数の木剣が振り下ろされる。


 ハルカは思わず顔をしかめたが、トットは振り返って木剣を振り回し、背中から攻撃してきたすべての選手を叩きのめしていく。


「身体強化、しっかりしてるです」

「攻撃受ける前提で戦ってたな、あれ」

「トット殿は丈夫でござるからなぁ」


 モンタナとアルベルトの言葉に、呑気なカオルが続く。

 

「ま、あれくらいね」


 そしてなぜだかエリが得意げに胸をはった。

 なんだかんだと言っていたが、トットの活躍を誇れるくらいには、エリも仲良く冒険者活動をしているようである。

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― 新着の感想 ―
ノーレンは2日目に出るんでは?
二級冒険者といえば初期のラルフと同じだもんなぁ。 ラルフを僻んでハルカに絡んでいったトットが成長したもんだ。
最後の試合までノーレンが出てないような 間に合わなかったのか、素性がばれてシード枠になったのかはたして
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