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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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一応事前相談

「クダンさん、ノーレンさんの試合を見に来たのかなー?」


 入場の準備が始まり、少し間が開いたその時、コリンがクダンがいる方を仰ぎ見て言った。そう考えてみると、ノーレンが喜ぶかどうかはさておいて、娘想いの良い父親である。

 娘の試合を見るために、急いでハルカたちの下を離れて移動したのだ。

 結果的にはナギの背中に乗ってきたノーレンの方が先に到着していたわけだが。

 

 そこまで考えて、ハルカはあれっと首を傾げた。


「いえ……、ノーレンさんが〈武闘祭〉に出たいと私たちに話したのは、クダンさんが出発した後です。先に話していたとは思えません」


 そもそもハルカは、クダンが用事があると言って出発した後に、ノーレンと接触。

 街へ連れて行って、ノーレンが冒険者と話をしているうちに、〈武闘祭〉のことを思い出して、間に合わないのでナギに乗せてほしいと頼んできたのだ。

 それだとつじつまが合わない。


「単純にフォルカーさんの友人なので、定期的に〈武闘祭〉を見に来るようにしているのかもしれません。フォルカーさんは師匠にも手紙を出していたそうですし……」

「そうかもね。〈武闘祭〉なんて名前がついてるんだから、特級冒険者が見に来れば箔がつくだろうし」


 裏事情を推測したレオンがさらりと述べると、確かにそんな気がしてくる。


「律義な人ね」

「ね」


 カーミラが小首をかしげると、隣に座っていたユーリも続いてその真似をする。


「じゃ、クダンさん、ノーレンさんが出場すること知らないですか」

「あ、そうなりますね」


 モンタナの意見に頷いてから、ハルカはしばし考えてそろりと立ち上がる。


「……あの、すみません。ちょっと私、挨拶がてらクダンさんにノーレンさんのことを伝えてきます。一応、私が連れてきてしまいましたし、知らずに出場しているのを見つけて、変なことになっても困るので」

「変なことって何だ?」


 クダンについてあまり詳しくないテオドラが尋ねる。


「……ええと、例えばノーレンさんを見つけたクダンさんが、試合を止めに入ったりしたら、ノーレンさんがかわいそうだなと」

「そんなことするのか?」

「いえ、やらないとは思うのですが、あの二人の親子関係もはっきりとはわからないじゃないですか。一応、収拾がつかない事態の時は止めに入ったりするんですよ。過去にもそれがありました」


 黙って腕を組んで話を聞いていたレジーナの眉間にしわが寄った。

 過去にあったこととはすなわち、レジーナが一撃のもとに叩き伏せられたことだ。


「ノーレンさんの実力を考えると……、クダンさんがどんな反応をするか想像がつかないので、あらかじめお伝えしておいたほうが良いかなと。ノーレンさんの方でもまさかクダンさんが見に来ていると思っていないでしょうし」

「確かにそうかもー……。じゃ、席は確保しておくからいってらっしゃーい」

「すみません、それじゃあ……」


 コリンに見送られて、ハルカは腰を低くしながら観客席の階段を上っていく。

 少し離れたところで、コリンが呟く。


「今クダンさんのところに行ったらすごく目立つと思うんだけど、ハルカ、分かってるのかな」

「いや、何も考えてないんじゃね」


 アルベルトの言う通り、今やるべきことをしようという気持ちに押されて、実際ハルカはそんな細かなところまで考えていない。


「特級冒険者らしくなってきたです」

「自覚はないと思うけどねー」


 冒険者は自由だ。

 特級冒険者はその最たる存在である。

 皆がビビり散らして距離を取っているクダンの下へ、噂の竜の主と目されているダークエルフの美女が現れて話をすれば、皆コッソリ注目するに決まっていた。


 気付けばクダンの周囲からはぽっかりと人が消えており、ハルカが向かっていくのに気づいた人たちが、会場の方はそっちのけで振り返って様子を見始める。

 まだ試合が始まっていないのだから、この邂逅こそが、会場にいる人たちにとっての一番の見世物である。

 ハルカは元々人の視線に敏感な方ではなかったが、この世界に来てからは街を歩けば人に見られるようになったせいで、いつの間にかすっかり慣れてしまっている。一周回って逆に鈍感になっていて、人がたくさんいるから今日はたくさん見られているな、程度にしか思わず、そのままクダンの下へと向かった。


 人がいないので、ハルカの接近にクダンはすぐに気が付いた。

 視線が合ってハルカが軽く頭を下げると、クダンが手を挙げて反応する。

 待たせては悪いだろうとハルカが小走りで駆け寄った。


「おう、どうした」

「すみません、急に。いらっしゃっているのに気づいて挨拶に」


 クダンは当然周囲の視線に気づいている。

 よくもまぁ、こんな状況で話しかけてくるなと思ったが、ハルカが鈍感なよく分からない魔法使いであることは、クダンもよく知っている。


「随分と派手に紹介されてたな」

「クダンさんの方も」

「あいつ直ぐ調子に乗んだよ。来るたびあんな調子だ」

「あー……、なんか、独特な方ですものね」

「お前も気に食わないこと言われたら、ちゃんと文句言ったほうが良いぞ」

「考えておきます。でも今回は一応、ナギのことを褒めてもらったので、まぁ」


 ハルカはナギに優しくしてくれる人に弱い。

 良い感じに紹介してくれたおかげで、今後ナギに対する視線は少しばかり和らぐことだろう。

 その一点だけ、ハルカは今回の司会のおしゃべりには感謝していた。


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― 新着の感想 ―
VIP席とはないのかな? 貴族もいるような世界観だし、とくに国すら滅ぼせるような人間が普通の観客席にいるのはリスク的にもヤバい気がしますねw
クダンはコントロール良さそうだけどハルカが石投げたら顔が吹き飛びそうだし、やっぱ水球かね。 視界範囲は全て射程だから余計なこと言い始めた瞬間呼吸が止まる。
観戦してる人は2人ともかなり温厚な方なんて知らないから緊張しただろうなぁ
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