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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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頼まれごとと国際情勢

「あとはそうだな……。参加者にとって特級冒険者が見ているというのは、一つのやる気に繋がる。一般人が入ってこられない特別な席を用意するから、会場で紹介させてほしいなと思うのだけれどどうだろう?」


 一般的に考えれば名誉なことなのだろうけれど、ハルカにとってはあまり気乗りのしない話だった。

 特別な席、というからにはきっと貴族たちと同じ列に並ぶような形になるはずだ。

 いくら【ドットハルト公国】が尚武の気質があるとはいえ、貴族は貴族。フォルカーのような気持ちのいい者ばかりとは限らない。

 それに何より、人に紹介されてちやほやされているのは性に合わない。

 できることなら、一般の観客と一緒に楽しく見学をしたいところだ。


「すみません、それは遠慮させてください」


 ハルカも随分と経験を積んできた。

 貴族相手であったとしても嫌なことは嫌と言えるようになっている。

 素直に拒否をすると、フォルカーは苦笑いをした。


「そうだろうと思ったよ。特級冒険者でそれを受け入れてくれる人なんてなかなかいないからね。クダンさんが『勝手にしろよ』と言ってくれるくらいかな」

「……なんだかんだと優しいですよね、クダンさん」

「そうなんだよ。見た目で損をしていると私なんかは思うのだけれど、あの人にとっては人払いになってちょうどいいらしい」


 人嫌いなのか人好きなのかよくわからない人だが、一定の距離を取るようにしていることは間違いないのだろう。

 立場があると色々と大変だと、ハルカは自分のことを棚に上げながら思う。


「他に何かありますか?」

「ああ、もう一つだけ。一応治癒魔法使いの人数は確保しているのだけれど、毎年規模が大きくなっていてね。最初のふるい落としの段階で大きな怪我をする者もいて、それをすべて治していると手が回らなくなってしまうこともあるんだ。噂によるとハルカさんも相当な治癒魔法の使い手だって話なのだけれど、いざという時に協力してはもらえないかな? 当然協力してもらっただけの支払いはする」

「あ、それはもちろん。命に関わるような怪我をする人がいては大変ですから」


 おそらく会場でそれらしい怪我を見たら、言われずとも飛び込んでいっていただろう。むしろこうして、事前に打診をしてくれた方が躊躇わずに済むのでいいくらいだ。

 仲間たちと訓練を積んだり、人の生き死にを見てきたおかげで、なんとなくすぐに対処しなければまずい怪我か、そうでないかくらいの区別はつくようになっている。


「ありがたいよ。ノクトさんも招待したつもりなんだけれど、ここにいないということは、一緒に来ていないかな?」


 そういえばフォルカーからの手紙は二通。

 ノクト宛のものも届いていると、ラルフから聞いていた。

 情報を探って【竜の庭】と一緒にいることが多いと判断して手紙を出したのだろうが、残念ながら不在である。

 今は王国のどこかで戦いを繰り広げているか、もう終わった頃か。


「今ちょっと別行動をしてまして……」

「……そうなると王国かな、多分」


 戦の状況が伝わっているのか、フォルカーはあっさりとノクトの居場所を言い当てた。

 【ドットハルト公国】はかつて【ディセント王国】の領土を奪って誕生した国だ。

 だが今は【神聖国レジオン】と、【独立商業都市国家プレイヌ】が緩衝地帯となっているため、安易に戦になることはまずありえない。

 そもそも【ドットハルト公国】は、南の【グロッサ帝国】との関係が良くない。

 北を見ている余裕はないだろう。


「何か話に聞いてますか?」

「うん。【竜の庭】と王国、それに北方の二国が、反乱鎮圧のために軍事行動を共にした話とかね」

「……それ一般に知られてる話ですか?」


 情報伝達が早い。

 つい先日のことで、その上かなり遠く離れた場所でのことであるのに、あまりに正確な情報であった。

 ハルカが警戒心を持ったことに気が付いたのだろう、フォルカーは顔の前でひらひらと手を左右に振った。


「いやいや、軍人の上層部だけだね。今の王国はエリザヴェータ女王の下まとまっているらしいから、心配しなくとも【ドットハルト公国】と問題が起こるようなことはないはずだよ。問題がある話だったらハルカさんにも伝えていない」

「なるほど……、そうでしたか」


 とはいえ、【ドットハルト公国】も、各地に諜報員を送り込んでいるということなのだろう。人の良い貴族や仲のいい人たちも、裏ではバチバチに情報戦をしているということである。

 未だにハルカが〈混沌領〉より先でやっていることがばれていないのは、単純にあちら側が破壊者ルインズの領土という印象があるからこそだろう。ある意味、〈オラクル教〉が広めた認識が、調査の手を伸ばさせないようハルカたちを隠している形だ。


「うーん、そういった面でハルカさんを利用しようとか、無理に協力してもらおうってつもりはない。私は特級冒険者の危険についてもよく分かっているからね。もし国が積極的にそういった策を取るようなら、全力で反対するよ」


 フォルカーは真面目な顔で語ってから、またにっかりと笑い、続ける。


「ハルカさん……、いや、冒険者達や参加者には、余計なことを考えず、単純に【武闘祭】を楽しんでほしい」

「……わかりました、ありがとうございます」


 どこまでが本音かはっきりとわからないけれど、フォルカーとの付き合いや行動を考慮して、ハルカはこの男をこれまで通りに信じて接することにするのであった。

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― 新着の感想 ―
闘技場のナギ待機所の所に「ナギのアゴ置き」作って、竜の庭のみんな(ナギ含む)で観戦とか、すっごいほのぼのする。 (但し、ナギをよく知らない人達は戦々恐々とする模様)
ナギが会場の隣に鎮座してる状況で紹介も何もないんだわ。 ハルカはナギに乗って観戦するのが一番面倒なさそう。
クダンさん一般席で立ってたような気がするw
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