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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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久々のおぼっちゃま

「フォルカーさんの屋敷へ行きますけど……、誰か一緒に行きます?」

「あー、あの剣ぶっ壊しながら戦うおっさんだよな。俺行く」

「じゃ、私も」


 アルベルトとコリンが同行を申し出たところで、モンタナがちらりとレジーナの方を窺ってから「留守番するです」と答えた。

 モンタナからは、レジーナがいつもよりやや興奮しているように見えた。

 〈武闘祭〉のことを思い出しているのか、それともこの街で色々と喧嘩した記憶があるのか、いつ飛び出していっても不思議ではないのを察して、一応見ておこうと決めたのである。


「じゃあ僕もナギと一緒にいる」

「うーん……、偉い人のところへ行くのならば、私もお留守番していようかしら?」


 ナギの口の横をぺしぺしと叩きながらユーリが言えば、カーミラもくるくると日傘を回しながら答える。


「ではお留守番頼みます。帰りには何か美味しいものを探して買ってくるので」


 それが一番の目的である。

 ハルカは街にいる間は、屋台の料理を買い食いするつもりでいる。

 こちらもレジーナ同様、以前来たときに楽しかった記憶がしっかりとよみがえっている。〈武闘祭〉の見学と、屋台巡りどちらが楽しみかと尋ねれば、ハルカはきっと悩んでしまうことだろう。

 そんなハルカは足取り軽く街へと繰り出す。

 屋台に気を取られつつも、騒がしい通りを抜けて、街の静かな方面へと向かっていると、不意にコリンが話しかけてくる。


「ねぇハルカ、道合ってる? 地図とか見てないけど」

「えーと、多分合ってると思いますけど……」

「よく覚えてるねー。私はぐれたら絶対迷子になるなぁ」

「あー」


 そうですねとも言い難いが、まず間違いなく迷子になることだろう。

 当然アルベルトもである。

 この人が集まる時期に万が一はぐれたら大変なことになりそうだ。


「もしはぐれたら、闘技場の方に向かってもらえばナギがいてくれるはずなので……」

「あ、確かにそうだね。分かりやすくていいや」


 そんな話をしながらやってきたフォルカー伯爵の屋敷の入り口には、見覚えのある青年が一人立っていた。

 しかし遠目で見るその青年は、最後に会った時よりも随分と全身が鍛えられており、きりっとした顔をしているようでもあった。

 歩み寄ると、その青年もハルカたちがやってきたことに気づいたようだ。


「お、ようやく来たかぁ!」


 ぶんぶんと明るい調子で手を振る様子と、緩い表情は昔とあまり変わらない。

 〈ヴィスタ〉からここ〈シュベート〉まで護衛をしたギーツである。

 あれから数年が経つから、今では二十代半ばの立派な青年だ。


「ハルカもコリンも変わらないな! それから、……アルベルトだよな?」

「二人は覚えてんのに、俺のこと覚えてねぇのかお前」

「いやいやいや、そうではない! でかくなりすぎではないか!? 私よりでかいではないか!」


 駆け寄ってきたギーツが並んで背丈を比べると、確かにアルベルトの方がかなり背が高い。


「大きくなったなぁ、いくつになったのだ」

「十九歳か? 多分」

「まだそんなものか。まったく若いな」


 やれやれと肩を竦めて首を振るギーツ。


「なんか相変わらずむかつくな、お前」

「久しぶりの再会になんてことを言うのだ、まったく」


 正面から文句を言われても、ギーツはまるでこたえた様子もなく笑っていた。

 おおらかというか鈍感と言うか、微妙なところである。


「でもお前、ちゃんと鍛えてんだな」


 アルベルトはギーツの腕や手を見て、ギーツがただ漫然と数年間を過ごしてきたわけではないと悟る。


「おお、わかるのか! そうなのだ、まったくエレオノーラに毎日ひどい目にあわされて。今日は頼みごとがあってな! たまには自由に旅をしたいのだ。お前たちと旅をした数日は、今思い出せばとても楽しくて……」


 ギーツが話している途中で、エレオノーラが音もなく扉を開けて姿を現すと、唇の前に人差し指を立てる。ハルカたちの視線はエレオノーラの方へ向いていたが、おしゃべりに夢中なギーツは気づかない。


「……ギーツ様、いつまでお話をされているのですか」

「ひぇっ!」


 文字通り体を跳ねさせたギーツの腕をエレオノーラがからめとって、逃げられないように捕まえる。


「な、なんでもない、なんでもないのだ」

「フォルカー様がお待ちですよ」

「そ、そうだな! さ、ハルカ、案内しよう! 行くぞ、エレオノーラ」

「そうですね。ところで先ほど私との訓練の話をされていませんでしたか?」

「し、してないっ」

「ひどい目?」

「ひどくない!」

「今日も訓練、楽しみですね?」

「ぐぅ」

「楽しみですね?」

「楽しみだ……」


 ハルカは少しだけ同情したが、雰囲気は悪くない。

 結婚したくないと騒いでいた割には仲が良さそうだ。


「父上のところへ案内する……」

「あ、お願いします」


 ギーツは一瞬にしてしおしおと元気がなくなってしまったが、役割をこなすつもりはあるらしく、扉を開けて、ハルカたちを屋敷の中へ招き入れるのであった。

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― 新着の感想 ―
丁度漫画のほうでギーツとエレオノーラが出てる話してるのでタイムリーですね
ギーツを忘れた人は、ニコニコ漫画の方で丁度この辺やってるので見直してみよう!
だめだー、さっぱり思い出せねぇや。
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