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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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招待状

 折角拠点へ戻ってきたハルカであったが、あまりのんびりとはせずに今日もバタバタと動き回っていた。

 ノーレンにはしばらく拠点で働いてもらってしまったので、せめて街まで送っていくと言って、ナギの背に乗って〈オランズ〉へ繰り出したのだ。

 もしかすると、エニシがいないことの寂しさを無意識下に紛らわそうとしていたのかもしれない。


 単純に買い出しもしておきたかったし、街で暮らしている仲間たちや、〈オランズ〉冒険者ギルド支部の支部長をしているラルフにも、エニシとリョーガの件を報告するつもりだ。

 今回はアルベルトとコリン、それにモンタナとユーリが一緒に来ている。

 街に着いた時点でアルベルトとコリンは実家の方へと向かい、ハルカたちはノーレンと連れ立って冒険者ギルドへ向かう。

 一応今回の街護衛の件に関しても、ノーレンへの依頼として処理するつもりだったのだが、ノーレンの方は恩返しだからと頑なに受け入れようとしなかった。

 それでも一緒に来ている理由は、ノーレンが二級冒険者であるにもかかわらず、冒険者ギルドの安い仮宿で暮らしているからである。旅先の野宿で慣れている冒険者からすれば、普段の宿なんてそんなに豪華でなくても構わないんだとか。

 それに、〈オランズ〉の冒険者たちとわいわい騒ぎながら食事をしたりするのも楽しいらしい。

 元々暮らしていたあたりでは、どうしたってクダンの娘だということで、相手が気を遣ってしまうことが多かったノーレンとしては、気安く声をかけてくれる〈オランズ〉の冒険者ギルドは居心地が良いのだろう。


 ギルドに到着したところで一度ノーレンと別れたハルカたちは、そのままラルフのところへ通されて近況の報告をする。

 ラルフからすれば途方もないような話ばかりであるが、一応把握しておかないといざという時にハルカたちの力になれないかもしれないので、何とか天井を仰がずにすべて真面目な顔で聞き取った。

 話の全貌を咀嚼して飲み込むだけで、随分と心が疲弊してしまったラルフであったが、妻が淹れてくれた少し冷めたお茶を一口飲みながら立ち上がり、ハルカ宛に届いていた手紙を棚から取り出した。

 ハルカがあちこちで〈オランズ〉の冒険者と名乗っているものだから、手紙が拠点ではなくこちらに届くことが多いのだ。


「ハルカさんや【竜の庭】宛に届いた手紙です。大人気ですね」

「あ、はい。え? こんなにですか」


 ばさりと束を差し出され、ハルカも困惑である。

 差出人を確認しようにも、外には書いていないことが多く困りものである。

 見る人が見れば、封蝋でどこからきたものか分かるのだろうけれど、あいにくハルカは貴族ではないので、紋章には詳しくない。

 一つ一つ開封して目を通していくしかない。

 そして分かったことは、その多くがあまり関わりのない王国貴族から来たものだということだ。ハルカが特級冒険者になったという事実に加え、実績、そしてエリザヴェータとの交流が広まったことによって、関わりを持とうとしてのことである。


 すぐに来るようにとか、顔を出せ、といったものではなく、近くに寄った時にはどうぞよろしく、的な内容が多いのがまだ救いか。

 数年前だったら、冒険者に対してはもっと高圧的な内容が多かったのだろうけれど、エリザヴェータが本格的に力を持ち始めたことによって、皆、それが得策でないことに気が付いたのだろう。

 時折偉そうな文面が見られるのは、昔の名残か。

 そんな、あまり読んでも意味がないような手紙の中に、二通、趣旨の違うものが混ざっていた。


 一通は、〈ヴィスタ〉の学園長であるガリオン=グベルナーによる、誘いの手紙。

 これは以前にも来ていたもので、変わらずいつでも歓迎するというような内容の手紙であった。

 余程ハルカを招きたいのだろう。

 忘れられないように定期的に手紙を送ることにすると書いてあった。

 もしかすると以前接触した一件だけで、ハルカがこういった積み重ねが利くタイプだと気づいたのかもしれない。

 そうだとすれば、なかなかの曲者である。


 そしてもう一通は、【ドットハルト公国】のフォルカー伯爵からの手紙であった。

 少し前に送った手紙であるらしく、良かったら皆で今年の〈武闘祭〉を見に来ないか、というお誘いである。

 もうアルベルトたちは参加できないけれど、見る分には面白いし、開催中に出る屋台を巡るのも楽しい行事だ。

 ナギの背に乗っていけば、数日前には到着することができるだろう。

 ハルカたちの事情をよく知っているフォルカーは、会場の近くにナギがのんびりとできる場所も用意すると言ってくれている。

 色々と考えがあるのかもしれないが、本当に歓迎をするという意図が感じられる、丁寧な手紙であった。


「行くですか、ユーリは見たことないですし」


 一緒に手紙を見ていたモンタナが言うと、ユーリも目を輝かせてこくこくと頷く。


「アルが出たやつだよね。見たい!」

「そうですね。数日中には出なければならないので慌ただしいですが、皆で行ってみましょうか」


 エントリーをするわけではないので、当日までに現地にいればいいはずだ。

 もちろん、フォルカー伯爵に挨拶することを考えれば、もう少し早い方がいいに決まっているけれど。


「というわけで、今度は〈武闘祭〉でも見に行ってこようかと思います」

「ハルカさんたちは本当に忙しく動き回りますね」


 冒険者というのは普通もうちょっと怠惰なものなのだ。

 ナギがいるからというのもあるが、それにしたってハルカたちはよく出かけている。


「折角呼んでもらいましたから」

「楽しんできてください。俺も〈武闘祭〉は見てみたいんですけどね。流石に長いこと〈オランズ〉を離れるわけにもいかないからなぁ。少しイーサン元支部長の気持ちが分かるようになってきました」


 毎日真面目に仕事ばかりしているラルフは、そう言って苦笑してみせるのであった。

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― 新着の感想 ―
前の武闘祭から何年経ってるんだろか
ラルフさん、残念…! 相手がハルカ達っていう、特別色々動いてる奴らじゃなければ そこまで思わなかったかもねえ(⌒-⌒; )
ノーレンは2級だから出られるんだよなあ。
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