チー牛、feat.(フィーチャリング)する4
「師匠に最初に『ネットで韻を踏む=ネットライマー』って教わりましたが、『ラッパー……ラップ』って何ですか?」
俺はめちゃくちゃシンプルな質問をした。
「あれ?ラップについてはまだ教えてなかったかww」
「そうッス」
「ラップって言うのは、簡単に言うと『歌い方』の事ね。演歌とかそういう歌い方のジャンルの一つなのよ。ざっくり言うと『歌わずに喋る事』がラップなのよ」
「じゃあ『ライム(=韻を踏む)』する事とどう違うんッスか?」
「あくまでラップは『歌わずに喋る事』であって『韻を踏む』必要は無いの。でも韻を踏んだ方が面白いでしょ?」
つまり……音楽に乗せて喋ってしまえば『ラッパー』で、『そこに韻を踏んでカスタムしてラップを強化する』って事か……?
やっと理解したぜ!
「ラップはロボット選択で、ライムは武器選択か!」
「その例えがよくわからないけど、チー牛がそれで納得できたらそれでいいわww」
なるほど。
なら、今吐愚呂妹さんに誘われてい曲を作る事になっているけど、あれは『ラップする』事になるのか。
お、俺ラッパーになっちゃうのか!!
「師匠……俺、ラッパーッス!」
「いや、まだリリック完成させてないんでしょ?」
「ウッス!なんならまだ参加するって伝えてないッス!師匠は……参加しないのは女って事を隠してるからッスか?」
「うーん、まぁそれもあるけど、周りが色々とね……」
「そーなんッスね。ヤ○ザも大変ッスね?」
「ん?」
「あれ?師匠、ヤ○ザじゃないんッスか?」
「ちゃう わww!!何でそうなるのよww?」
「師匠、圧のかけ方がエグいッス!」
師匠に肩を思いっきり平手打ちされた。女の子からのボディタッチでうっかり師匠の事を好きになりそうになった。師匠は大人っぽくてぶっちゃけ可愛かった。
それから『トラック(=曲)』に乗せて少しリリックを書いた時に、どうラップするのかを教えてもらった。
これまでネトラで書いていたリリックはビートに乗せると結構無理があった事を知った……
なるほど……ネトラはネトラで独自に進化したの文化と言えるな。
昼過ぎに師匠が「お腹空いた!」と言うのでお礼として昼飯を師匠にご馳走させていただく事になった。
駅の中にあるオシャレなカフェに行った。その後「チー牛、ダサいから服買いなよ?」と師匠に言われ、師匠に洋服を見繕ってもらい、何着か洋服を買う事になった。
安い全国チェーン店だったが、さすがに数着買うと全部で1万円を超えた。
この話はとりあえず置いとおこう。
夕方過ぎ、師匠は用事があると言ってまだ明るかったが初夏の夜の街に消えて行った。
俺は帰宅後、吐愚呂妹さんにメッセージを送った。
「―――――――――――――――――――――
お疲れ様です。
トラック参加させてください!
―――――――――――――――――――――」
それから吐愚呂妹さんからトラックが送られてきた。
まずは師匠から習った通りに曲を聞きながら手拍子をして四拍子を掴む。
それからBPMがどのくらいかも数えてみた。
BPMは92くらいかな。
それから、曲の構成を確認すると、
イントロ
1バ、2バ
フック
3バ、4バ
フック
アウトロ
になっていた。
リリックの『テーマ』は特に無いらしく、書きたい事を書いていい、と言われた。ルールが無いと逆に難しいな。前に師匠に言われた言葉を思い出していた。師匠、可愛かったな。ついでに師匠の顔も思い出していた。
既に吐愚呂妹さんと村井・ムーンライトさんのリリックは既に出来ていて、ラップを載せたバージョンも送られてきた。
吐愚呂妹さんが1バース、村井・ムーンライトさんが3バースだ。
俺とほうじTさんは2バースか4バースになる。
とりあえず二人のラップを聞いてからそれに合わせてテーマとかリリックの書き出しを合わせてみるか。
「―――――――――――――――――――――
吐愚呂妹
独学で書く詞 止まっていた罪
この場で発信 驚愕的パンチ
どうやって勝つ気? ようやく転換期
文学で脚韻 音楽で脚韻
脳が描く作品 高学歴100人
集めても敵わぬ創作的な踏み
お預けは無理 道楽でhappy
獲物はチキン お腹はちきれる
―――――――――――――――――――――」
「―――――――――――――――――――――
村井・ムーンライト
ばあやがぁたしに託した押韻見聞録
首から下げ練り歩く竹下通り〜池袋
喉が渇いたら角ハイジンジャーエール!
悪そうな奴ともこれで大体信じ合える
味変なら定番&鉄板のタピオカ割り!
伝播した顔と電波が伝票代わり
ぁたし、村井朋でっせ。※報奨金多め
歯向かうなら月に変わってお仕置きよ!めっ!
―――――――――――――――――――――」
これにどうやって繋げろって言うんだよ……
この愛すべきクソ共め!!
こっちは初ラップだと言うのに、全然何を言いたいのかわからねぇ上に内容がすげえ頭悪い!
しかしめちゃくちゃ韻も踏んでるのも事実!!
さらにラップがうまいのが癪だ!
くそぅ……何を書いていいのかすら見えてこない。
とりあえず分析して参考にしてみよう。
吐愚呂妹さんのリリックは……
独学で「書く詞」 止まってい「た罪」
この場で「発信」 驚愕的「パンチ」
どうやって「勝つ気?」 ようやく転「換期」
文学で「脚韻」 音楽で「脚韻」
脳が描く「作品」 『高学歴「100人」』
集めても敵わぬ『創作的「な踏み」』
『お預け「は無理」』『 道楽で「happy」』
獲物「はチキン」 お腹「はちき」れる
文字数自体は3文字だがずっと「A U I」の脚韻で踏み続け、さらに途中から文字数を増やしてきているのか。吐愚呂妹さんの普段から垣間見えるストイックさが滲み出たリリックだ。
待てよ?先程内容が頭悪ぃと言ったが吐愚呂妹さんのリリックはちゃんとしているな。……何故だ?
「あぁ、こいつかww」
村井・ムーンライトさん。問題はこいつあった。
ばあやがぁたしに「託した押韻見聞録」
首から下げ練り歩く「竹下通り〜池袋」
喉が渇いたら角「ハイジンジャーエール!」
悪そうな奴ともこれで大「体信じ合える」
味変なら『定番』&『鉄板』のタ「ピオカ割り!」
『伝播』した顔と『電波』が伝「票代わり」
ぁたし、村井朋でっせ。「※報奨金多め」
歯向かうなら月に変わって「お仕置きよ!めっ!」
「託した」「竹下」は踏み外しとカウントするか、それとも「した」から韻を踏んだとカウントするか、聞き手次第だか後半の文字数の強さが「託」と「竹」の踏み外しを包み込んでいる。もはや誤差の範囲だ。
「定番」~「電波」まで脚韻が続いているのもスパイスとなっている。
そしてあいかわらず内容が全く意味不明だ。良い意味で意味深とも言える。
前々から「自分はフィメールだ」と言い張っている謎設定がここにも健在していた。
もしバトルでこんなアンサーが返ってきたら戦い辛い。どこでdisられてるのか自分には理解出来なくてスルーしていたのに読み手次第では「的確なdis」と思われてしまうのだ。無理矢理このリリックを拾いつつ自分のペースに持って行くのにはかなり骨が折れそうだ。
さて、自分は今書いてしまうか、ほうじTさんのリリックを見てから待つべきか……




