↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/33

第九試合 神弓と死神の鎌

作品は完結させております。

安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。


たくさんのブックマーク、評価、コメント。

また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。


よろしくお願いします。それではどうぞ!


闘技場を包む歓声が、再び大きくなっていく。


『さあ、第一回戦もいよいよ終盤!』


実況の声が闘技場全体へ響き渡る。


『続いて登場するのは……』


左右の入場口から、二人の姿が現れた。


一人は、長い黒髪を後ろで束ねた青年。


その眼差しには、研ぎ澄まされた集中力が宿っている。


もう一人は、全身を黒い衣装で包んだ人物。


顔の大半は影に隠れ、その表情すら読み取れない。


二人が中央へ歩み寄る。


『それでは、両者――武器を顕現!』


青年が宝珠に手を伸ばす。


眩い光が弾けた。


その手に現れたのは、黄金の装飾が施された巨大な弓。


『神弓――ガーンディーヴァ!』


観客席から大歓声が上がる。


『インドの大叙事詩「マハーバーラタ」に登場する、まさに伝説中の伝説!』


実況の声がさらに熱を帯びる。


『かつて英雄アルジュナが手にし、数々の戦場を駆け抜けた神弓!』


『その弓から放たれる矢は凄まじい威力を誇り、アルジュナはこの神弓とともに幾多の強敵を打ち倒したと伝えられています!』


ガーンディーヴァは静かに弓を構えた。


対する黒衣の人物も、ゆっくりと宝珠へ手を伸ばす。


光が消えた。


現れたのは――巨大な黒い鎌。


湾曲した刃が、まるで月のように弧を描いている。


『そしてもう一方は――死神の鎌、デスサイズ!』


会場がざわめく。


デスサイズは何も言わない。


ただ静かに鎌を構えた。


ガーンディーヴァが弓を引く。


「……その鎌で、俺に近づけると思っているのか?」


デスサイズは答えない。


『両者、構えて――』


ガーンディーヴァの指が弦を引き絞る。


『試合――開始!!』


瞬間。


矢が放たれた。


――ヒュンッ!!


デスサイズの横を通り抜ける。


その直後。


二本。


三本。


五本。


十本。


矢が次々と放たれる。


「……!」


デスサイズが走る。


しかし――


「遅い!」


ガーンディーヴァがさらに矢を放つ。


――ヒュンッ!


――ヒュンッ!


――ヒュンッ!


矢が地面へ突き刺さる。


デスサイズの進路を完全に塞ぐ。


「そこだ!」


一本。


肩を掠める。


「まだだ!」


二本目。


腕を裂く。


三本目。


脚を掠める。


デスサイズは止まらない。


だが、距離が縮まらない。


『す、凄まじい連射です!』


実況が叫ぶ。


『デスサイズ選手、ガーンディーヴァ選手との距離を全く詰めることができません!』


ガーンディーヴァは冷静だった。


一歩も動かない。


ただ矢を放ち続ける。


「近づけない」


矢が飛ぶ。


「逃げられない」


また一本。


「お前の負けだ」


デスサイズの身体が僅かに揺らぐ。


それでも歩く。


一歩。


また一歩。


「……まだ来るか」


ガーンディーヴァは目を細める。


弦を引く。


今までよりも長く。


「なら――」


矢が光を帯びる。


「これで終わりだ!」


放たれた矢が、一直線にデスサイズへ迫る。


デスサイズが鎌を振るう。


――ガキィン!!


矢が弾かれる。


その瞬間。


ガーンディーヴァが次の矢をつがえる。


「無駄だ」


また放つ。


また弾く。


また放つ。


矢がデスサイズを追い詰めていく。


観客席から歓声が上がる。


誰が見ても、ガーンディーヴァが完全に試合を支配していた。


デスサイズは――


一度も、ガーンディーヴァへ攻撃を届かせていない。


やがて。


デスサイズの動きが止まった。


ガーンディーヴァは弓を下ろさない。


「……終わりか?」


沈黙。


「随分と大口を叩いていた割には――」


デスサイズがゆっくり顔を上げた。


そして。


初めて口を開く。


「……お前は」


ガーンディーヴァが眉を動かす。


「何だ?」


「さっきから……」


デスサイズが鎌を下ろす。


「お前は、どこを狙っている?」


「……は?」


一瞬。


ガーンディーヴァの表情が固まった。


「何を言っている?」


「俺は――」


デスサイズが呟く。


「一度も、お前に狙われていない」


「……何?」


その瞬間。


ガーンディーヴァの背後。


何もないはずの空間に――


黒い影が広がった。


「……ッ!?」


振り返る。


遅い。


影の中から、巨大な鎌が現れる。


「な――」


デスサイズが、そこにいた。


「狙っていたのは――」


鎌が横薙ぎに振り抜かれる。


「お前じゃない」


――ザンッ!!


ガーンディーヴァの首元を、黒い刃が通り抜けた。


一瞬。


静寂。


ガーンディーヴァの身体が崩れ落ちる。


ドサッ。


弓が地面へ転がる。


カラン――。


会場が凍りついた。


『……え?』


実況の声だけが響く。


『い、今……何が……?』


デスサイズはガーンディーヴァの背後に立っている。


「お前が狙っていたのは、俺の姿だけだ」


鎌を肩へ担ぐ。


「俺が狙っていたのは――」


黒い影がゆっくりと消えていく。


「お前の背後だ」


ガーンディーヴァは動かない。


実況がようやく我に返る。


『勝負あり!!』


一拍。


『第一回戦、第九試合――!!』


会場中から、遅れて大歓声が巻き起こった。


『勝者――デスサイズ!!』


デスサイズは何も答えない。


ただ、黒い鎌を静かに構え直す。


その姿はまるで――


死そのものだった。

お疲れ様でした。

読んで下さり感謝致します。


話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。

更新時間:毎日12:00となっております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。