第八試合 不屈の刃と不壊の剣
作品は完結させております。
安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。
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また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。
よろしくお願いします。それではどうぞ!
闘技場を包んでいた歓声が、ゆっくりと静まっていく。
『続いては第一回戦、第八試合!』
実況の声が響き渡る。
『ここまでの戦いに負けず劣らず、今回もまた伝説に名を刻む二振りが登場します!』
左右の入場口から、二人の男が姿を現した。
『ミスティルテイン!!』
会場から、低いどよめきが起こる。
『北欧神話にその名を残す、謎多き魔剣!』
『神々の中でも特に愛された光の神バルドル! その命を奪ったとされるのが、このミスティルテインです!』
実況の声が徐々に熱を帯びていく。
『神すら死に至らしめたとされる、恐るべき一本!』
『そして伝承によっては、この剣は――決して刃こぼれしない、鋭さを失わない刃として語られることもあります!』
銀色の髪を持つ細身の男。
冷たい光を宿した瞳。
その歩みには、一切の迷いがない。
『そして、もう一方は――デュランダル!!』
続いて現れた男は、長い黒髪を後ろへ流した騎士。
全身から漂うのは、静かな威厳だった。
会場から大きなどよめきが起こる。
『フランク王国の英雄、ローランが振るったとされる伝説の聖剣!』
『叙事詩「ローランの歌」にその名を刻み、数々の伝説とともに語り継がれてきた名剣です!』
実況の声が一段と熱を帯びる。
『この剣には、恐るべき伝説があります!』
『いかなる力をもってしても折ることができず、決して砕けない――不壊の剣!』
『その刃には聖なる力が宿り、英雄ローランとともに幾多の戦場を駆け抜けたと伝えられています!』
二人が中央へ歩み寄る。
『それでは、両者――武器を顕現!』
二人が宝珠を握ると
光が弾けた。
一方の手に現れたのは、禍々しい気配を放つ一本の剣。
細身の刀身。
鋭く研ぎ澄まされた刃。
『魔剣――ミスティルテイン!』
観客席から歓声が上がる。
対する騎士も宝珠を握った。
こちらも光が弾ける。
現れたのは、重厚な長剣。
刀身から感じられるのは、圧倒的な存在感。
『そして――デュランダル!』
会場が大きくどよめいた。
デュランダルは静かに剣を構える。
ミスティルテインもまた、剣先を向けた。
しばしの沈黙。
ミスティルテインが口を開く。
「……お前がデュランダルか」
「ああ」
「聞いている」
デュランダルが笑う。
「なら、話は早い」
『両者、構えて――』
二人の視線が交差する。
『試合――開始!!』
同時に踏み込んだ。
――ガキィィィン!!
二本の剣が激突した。
互いに一歩も引かない。
ミスティルテインが横薙ぎに振る。
デュランダルが受ける。
押し返す。
ミスティルテインが身を捻り、斬り返す。
再び激突。
――ギィン!
――ガァン!
――キィン!
鋭い金属音が連続して響く。
二人の剣技は互角だった。
「……なるほど」
ミスティルテインが呟く。
「噂通りだな」
デュランダルが笑う。
「そっちこそ」
再び刃が交差する。
その瞬間。
ミスティルテインが力を込めた。
――ギィィィン!!
デュランダルの剣が弾かれる。
「……!」
一瞬の隙。
ミスティルテインが踏み込む。
「もらった!」
斜めから振り下ろされた一撃。
デュランダルは身体を捻って避けた。
だが、完全には避けきれない。
肩口が裂ける。
血が流れる。
観客席がざわめいた。
「……やるな」
デュランダルが傷を押さえる。
ミスティルテインは剣を構え直した。
「まだ終わりじゃない」
「そうだな」
デュランダルが笑う。
そこから戦況が少しずつ変わっていった。
ミスティルテインの剣技は、戦えば戦うほど鋭さを増していく。
踏み込み。
斬撃。
回転。
突き。
一つ一つの動きが洗練されていく。
対するデュランダルも必死に食らいつく。
しかし――
「そこだ!」
――ザシュッ!
今度は脇腹。
「ぐっ!」
さらに一撃。
――ザンッ!
太腿。
そして――
――ドシュッ!
胸元。
デュランダルの身体が大きく吹き飛ぶ。
「ぐあっ!」
地面を転がる。
観客席から歓声が上がる。
『ミスティルテイン選手、ここに来て一気に攻勢!』
デュランダルは立ち上がる。
「……まだだ」
ミスティルテインが眉を寄せる。
「まだ立つのか」
「立てる限りはな」
「なら――」
ミスティルテインが駆ける。
一閃。
デュランダルが受ける。
二閃。
三閃。
四閃。
防ぐ。
避ける。
だが、徐々に追いつかなくなる。
――ザシュッ!
「ぐっ!」
デュランダルが片膝をつく。
ミスティルテインは息を整える。
「終わりだ」
「……そう思うか?」
デュランダルが立ち上がった。
「……!」
ミスティルテインの表情が変わる。
「お前……」
デュランダルは身体中から血を流していた。
それでも剣を握っている。
「まだ、やれる」
「なぜだ」
「なぜ?」
デュランダルが笑った。
「決まっている」
剣を構える。
「俺は剣だからだ」
ミスティルテインが睨む。
「意味が分からない」
「そのうち分かる」
再び激突。
――ガァン!!
ミスティルテインの一撃がデュランダルの肩を深く斬り裂く。
「ぐあっ!」
デュランダルが倒れる。
しかし――
また立つ。
ミスティルテインの眉間に皺が寄る。
「……お前は」
一歩。
「何度倒せば気が済む?」
一歩。
「何度斬れば――」
デュランダルが剣を杖にして立ち上がる。
「何度でもだ」
ミスティルテインが剣を握り直す。
「……お前は、不死身なのか?」
その問いに。
デュランダルは静かに顔を上げた。
そして――
「知ってるか……」
血に濡れた顔で笑う。
「俺の名前は――デュランダル」
剣を構える。
「絶対に折れることのない剣だ」
ミスティルテインの瞳が揺れる。
デュランダルが一歩踏み出す。
「だからな――」
さらに一歩。
「戦う気持ちも――」
剣を振り上げる。
「折れることはない!」
――ドォン!!
渾身の斬撃。
ミスティルテインは咄嗟に受け止める。
――ギィィィィン!!
凄まじい衝撃。
ミスティルテインの身体が後方へ吹き飛ぶ。
「ぐっ……!」
足が止まらない。
そのまま地面を滑り続ける。
そして――
膝をついた。
剣を握る手が震えている。
ミスティルテインは顔を上げた。
デュランダルがこちらを見ている。
傷だらけ。
血まみれ。
それでも立っている。
ミスティルテインは自分の剣を見る。
刃は欠けていない。
傷一つない。
それなのに。
握った手から力が抜けていく。
「……俺の刃は」
小さく呟く。
「絶対に、欠けない」
デュランダルは答えない。
ミスティルテインは目を閉じた。
「……だが」
ゆっくりと剣を下ろす。
「お前の心は……斬れない」
剣が地面へ触れた。
カラン――。
『……!』
実況が息を呑む。
ミスティルテインが戦意を失った。
『勝負あり!!』
一拍。
『第一回戦、第八試合――!!』
会場中から歓声が巻き起こる。
『勝者――デュランダル!!』
デュランダルは剣を下ろす。
そして、静かに空を見上げた。
「……俺は折れない」
誰に聞かせるでもなく。
そう呟いた。
お疲れ様でした。
読んで下さり感謝致します。
話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。
更新時間:毎日12:00となっております。




