第六試合 聖なる槍と科学の刃
作品は完結させております。
安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。
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また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。
よろしくお願いします。それではどうぞ!
第五試合が終わった。
勝者は――名も無き剣。
魔槍ブラダマンテという名を持つ伝説の武器を破り、正体不明の一振りが勝ち上がった。
観客席では、未だその話題が飛び交っている。
「結局、あの剣は何なんだ?」
「名前も持ち主も不明って……」
「次の試合はまともな武器が出てくれよ」
そんな声が響く中――。
『さあ! 続いて第一回戦、第六試合です!』
実況の声が会場を貫いた。
『まずは――人類史において、最も有名な槍の一つ!』
会場の照明が落ちる。
静寂。
そして舞台の奥から、一人の男が歩いてくる。
長い髪。
質素な長衣。
飾り気のない姿。
しかし、その眼差しには長い年月を生きた者だけが持つ静けさがあった。
男は舞台中央まで歩くと、足を止める。
『キリストの脇腹を突いたと伝えられる聖槍――!』
観客席がざわめく。
『ロンギヌス!!』
歓声が上がる。
ロンギヌスは観客へ目を向けることもなく、ただ静かに立っていた。
「……」
その姿は、まるで古代の使徒そのものだった。
『対するは――!』
実況の声が一段高くなる。
『現代科学が生み出した、最新鋭の武器!』
今度は舞台の反対側。
軽快な電子音が鳴り響く。
そこから現れたのは、一人の青年だった。
短い髪。
コードレスヘッドホン。
ジャケットに細身のパンツ。
現代の街を歩いていても、何ら不思議ではない格好。
青年は観客席を見回しながら、気楽な様子で歩いてくる。
『……えー』
実況が止まる。
『登録名――』
実況が困惑する。
『……ありません』
会場がざわついた。
「またかよ!」
「今日二人目だぞ!」
「名前くらい決めてこい!」
ヘッドホンを外しながら、青年は頭を掻く。
「ん~……」
実況が困ったように続ける。
『武器種は、超音波振動ブレード』
『しかし、正式な名称は登録されていません』
青年は顎に手を当てた。
「名前ねぇ……」
しばらく考える。
そして――。
「あ」
指を鳴らした。
「じゃあ、ソニックブレードで!」
実況が沈黙する。
「……」
青年はニッと笑った。
「なんかカッコイイっしょ?」
会場が一瞬、静まり返る。
次の瞬間。
「ハハハハハ!」
観客席から笑い声が起こった。
「自分で決めたぞ!」
「それでいいのかよ!」
青年は満足そうに頷く。
「いいじゃん。覚えやすいし」
実況も苦笑しながら復唱する。
『そ、それでは本人による命名――ソニックブレード!』
青年は親指を立てた。
「よろしく!」
ロンギヌスが静かに彼を見る。
「……自ら名を付けたか」
「そうだけど?」
「私の名は、私が付けたものではない」
ソニックブレードが首を傾げる。
「へぇ」
「人々が、私をそう呼んだ」
「じゃあ、俺もこれから有名になればいいじゃん」
ロンギヌスが僅かに目を細める。
「……随分と前向きだな」
「せっかくだし」
ソニックブレードは笑った。
『両者、宝珠を!』
ソニックブレードはポケットから宝珠を取り出すと、指先で弄んだ。
「これが俺の武器になるんだよな?」
『その通りです』
「じゃ、よろしく」
二人が同時に宝珠を握る。
『戦闘武器――顕現!』
光が弾けた。
ロンギヌスの手元で、宝珠が長い柄へ変わっていく。
柄が伸びる。
穂先が生まれる。
やがて一本の槍が完成した。
聖槍ロンギヌス。
ロンギヌスはその槍を握った。
「……」
一振り。
風が舞う。
対するソニックブレード。
宝珠が激しく明滅する。
光が収束し――一本の刃へ変化した。
細身のブレード。
その刀身から、低い振動音が響く。
ヴィィィィィン……。
「おお!」
ソニックブレードが嬉しそうに笑う。
「ちゃんと振動してる!」
刀身が微かに震えている。
「やっぱ俺、ソニックブレードで正解だわ」
ロンギヌスは槍を構えた。
「……来い」
ソニックブレードも構える。
「オッケー!」
『それでは――』
会場が静まり返る。
『第一回戦、第六試合――!』
ロンギヌスの槍先がソニックブレードへ向く。
ソニックブレードの刃が唸る。
『開始!!』
鐘が鳴った。
同時に、ロンギヌスが踏み込んだ。
速い。
長い槍の間合いを最大限に生かした突き。
「うおっ!」
ソニックブレードが横へ飛ぶ。
槍先が頬を掠める。
「いきなりガチじゃん!」
「戦いだからな」
ロンギヌスが槍を引く。
二撃目。
ソニックブレードが刃を合わせる。
ガキィン!
金属音が響く。
「おっ!」
ソニックブレードが押し返される。
「重っ!」
ロンギヌスは無言。
そのまま槍を振り下ろす。
ソニックブレードが受ける。
ギィン!
「ぐっ!」
足元が沈む。
「……マジかよ」
ロンギヌスの槍は重い。
長い年月を経てもなお、その一撃には確かな力がある。
ソニックブレードは後退する。
「なるほどね……」
刀身を見つめる。
「普通に斬ったんじゃ、こいつには届かないか」
ロンギヌスが歩み寄る。
「何を考えている」
「いや」
ソニックブレードが笑う。
「俺、最新型なんで」
刃が唸る。
ヴィィィィィン……。
「ちょっとくらい、新しい戦い方を見せないとな!」
ソニックブレードが駆け出した。
ロンギヌスも迎え撃つ。
槍と刃がぶつかる。
ガァン!
ソニックブレードが刃を滑らせる。
ロンギヌスが槍を引く。
ソニックブレードが懐へ飛び込む。
「そこ!」
横薙ぎ。
ロンギヌスが槍の柄で受ける。
だが――。
ギギギギギ……!
ロンギヌスの表情が僅かに変わった。
「……何だ?」
「これが俺の武器!」
ソニックブレードが笑う。
「超音波振動ってやつ!」
刃が高速で振動する。
ロンギヌスの槍の柄に、細かな亀裂が走った。
「……!」
ロンギヌスが距離を取る。
ソニックブレードは追う。
「どうよ!」
「……奇妙な力だ」
「科学ってすげぇだろ?」
「科学……」
ロンギヌスはその言葉を噛みしめるように呟いた。
「私は、そんなものを知らぬ」
「そりゃそうだろ。何千年前の人だよ」
「……」
「いや、ごめん。今のは失礼だった」
「構わない」
ロンギヌスは槍を構え直した。
「知らぬものならば――」
一歩。
「知るまでだ」
ロンギヌスが突進する。
ソニックブレードも迎え撃つ。
「そうこなくっちゃ!」
槍と刃が激突する。
一撃。
二撃。
三撃。
互いに一歩も引かない。
ロンギヌスの突きがソニックブレードの肩を掠める。
血が飛ぶ。
「痛ぇ!」
ソニックブレードが笑う。
「けど、まだいける!」
刃を振る。
ロンギヌスが槍で受ける。
――ギィィィィン!
その瞬間。
槍の穂先に細かな亀裂が走った。
「……!」
ロンギヌスが目を見開く。
ソニックブレードが踏み込む。
「これで――!」
一閃。
聖槍ロンギヌスの穂先が――
弾き飛ばされた。
会場が凍りつく。
ロンギヌスは残った槍を見つめた。
そして、静かに笑った。
「……見事だ」
「へ?」
「人は、ここまで進んだのか」
ソニックブレードは少し驚いた顔をする。
「……まあな」
ロンギヌスは槍を下ろす。
「ならば、私は敗北を認めよう」
『ロンギヌス選手、戦闘続行不能!』
実況が叫ぶ。
『勝者――!』
一拍。
『ソニックブレード!!』
会場が大歓声に包まれる。
ソニックブレードは刃を肩に担いだ。
「っしゃ!」
そして観客席へ向かって叫ぶ。
「覚えたかー!?」
歓声が返ってくる。
「ソニックブレードだぞー!」
さらに歓声が大きくなる。
ソニックブレードは満足そうに笑った。
その少し離れた場所。
控室のモニターで、その戦いを見ていた名も無き剣がいた。
「……ソニックブレード。自分で……名前を付けたのか」
なぜか胸の奥がざわついた。
「名前……」
その言葉に触れた瞬間。
また、頭の奥で何かが弾けた。
――誰かが、自分の名を呼んでいる。
だが。
その声は聞き取れない。
「……誰だ」
答えは返ってこなかった。
お疲れ様でした。
読んで下さり感謝致します。
話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。
更新時間:毎日12:00となっております。




