第三十一試合 荒ぶる神の剣と伝説の英雄の剣
作品は完結させております。
安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。
たくさんのブックマーク、評価、コメント。
また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。
よろしくお願いします。それではどうぞ!
準決勝。
その第一試合。
闘技場を包む空気は、これまでとは明らかに違っていた。
観客席には、これまでの戦いを勝ち抜いてきた者たちを称える熱狂が渦巻いている。
巨大スクリーンへ、二つの名前が映し出された。
天羽々斬。
そして――。
デュランダル。
『皆様あああああ!!』
実況の声が闘技場全体へ響き渡る。
『ついにここまで来ました!!』
観客席から大歓声が巻き起こる。
『第一回戦、第二回戦、そして準々決勝!!』
『数多くの伝説がぶつかり合ったこの大会も――!!』
実況が声を張り上げる。
『残すところ、あと三試合!!』
――おおおおおおおおおっ!!
会場が揺れる。
『その最初の一戦を飾るのは――!!』
巨大スクリーンへ、二人の姿が映し出される。
『日本神話の荒ぶる神剣!!』
『天羽々斬!!』
――うおおおおおおおおおっ!!
そして。
反対側へ映像が切り替わる。
『対するは――!!』
『英雄ローランが振るった、伝説の聖剣!!』
『デュランダル!!』
――おおおおおおおおおおっ!!
歓声がさらに大きくなる。
『神話の剣か!!』
『英雄の剣か!!』
『準決勝第一試合――!!』
実況の声が熱を帯びる。
『間もなく開始です!!』
左右の入場口が開く。
先に姿を現したのは――。
天羽々斬。
長い黒髪。
赤い戦装束。
ミョルニルとの激戦を制したその身体には、まだ傷が残っている。
それでも。
その歩みに迷いはなかった。
そして反対側。
デュランダルが姿を現した。
身体中には、これまでの戦いで刻まれた傷。
ミスティルテイン。
ゲイ・ボルグ。
そして――。
メテオスラッシュ。
数々の強敵を倒し、あるいは傷つきながらも、ここまで歩いてきた。
二人は闘技場中央へ進む。
やがて。
向かい合った。
天羽々斬がデュランダルを見る。
「……また会ったな」
デュランダルが笑う。
「そうだな」
「まさか、ここまで来るとは思わなかった」
「それはこっちの台詞だ」
デュランダルが肩をすくめる。
「お前、準々決勝じゃミョルニルを真正面から叩き斬ってたじゃないか」
「お前だってメテオスラッシュを倒しただろ」
「まあな……ただ」
「ん?」
「お前の剣とは、一度ちゃんと戦ってみたかった」
天羽々斬の口元が僅かに緩む。
「奇遇だな……私もだ」
『それでは――!!』
実況の声が響く。
『両者、武器を顕現!!』
二人の前に宝珠が浮かび上がる。
天羽々斬が手を伸ばす。
デュランダルもまた、宝珠へ手を伸ばした。
二つの宝珠が同時に輝く。
光が収束する。
天羽々斬の手に――。
一振りの神剣が現れた。
その刀身は鋭く、禍々しいほどの存在感を放っている。
対するデュランダルの手にも――。
重厚な聖剣が顕現する。
幾多の戦いを経ても、その刀身は未だに健在だった。
『荒ぶる神の剣!!』
『天羽々斬!!』
『そして――!!』
『伝説の英雄の剣!!』
『デュランダル!!』
観客席から歓声が爆発する。
二人は剣を構えた。
「……行くぞ」
デュランダルが笑う。
「ああ」
天羽々斬が答える。
『両者――構えて!!』
一瞬。
会場が静まり返る。
そして――。
『試合――開始!!』
――ドォォォン!!
先に飛び出したのは。
天羽々斬だった。
「――ッ!!」
地面を蹴る。
一瞬で距離を詰める。
「速い!!」
デュランダルが剣を構える。
――ガァァン!!
天羽々斬の一撃が叩き込まれた。
デュランダルが受け止める。
しかし――。
「ぐっ……!!」
身体が大きく後ろへ滑る。
「重い……!」
天羽々斬は止まらない。
二閃。
――ガキィン!!
三閃。
――ギィィン!!
四閃。
――ザァン!!
デュランダルが必死に受け流す。
「くっ……!」
天羽々斬が踏み込む。
「どうした!!」
「まだまだ!!」
デュランダルが剣を振り返す。
――ガァン!!
天羽々斬が受ける。
だが。
力が違った。
デュランダルの身体が弾き飛ばされる。
「ぐあっ!!」
地面を転がる。
しかし――。
デュランダルはすぐに立ち上がった。
「……まだだ」
天羽々斬が剣を構える。
「やはり立つか」
「不折れの剣だからな」
デュランダルが笑う。
「簡単には倒れないさ」
再び二人が激突する。
――ガキィン!!
――ズガァン!!
――ギィィン!!
天羽々斬の剣が何度も振るわれる。
その一撃一撃が重い。
デュランダルは受ける。
弾く。
避ける。
それでも。
天羽々斬はさらに踏み込んでくる。
「はあああっ!!」
――ザンッ!!
デュランダルの肩が斬られる。
血が飛ぶ。
「ぐっ……!」
それでもデュランダルは剣を握り直す。
「まだだ!!」
斬り返す。
――ガァン!!
今度は天羽々斬が後退した。
「……!」
デュランダルが追う。
「これで――!!」
一閃。
天羽々斬が受ける。
二閃。
三閃。
――ガキィン!!
――ギィン!!
天羽々斬が弾き返す。
「なるほど……」
剣を握り直す。
「お前も簡単には倒れないな」
「それが俺だからな」
デュランダルが笑う。
「お前こそ――」
剣を構える。
「まだ本気じゃないだろ?」
天羽々斬の目が鋭くなる。
「……よく分かったな」
「顔に出てる」
「そうか」
天羽々斬が一歩踏み込む。
「なら――」
地面が砕ける。
「見せてやる!!」
――ドォォン!!
天羽々斬の身体が一気に加速した。
「なっ――!!」
デュランダルが剣を構える。
天羽々斬の一閃。
――ズガァァン!!
デュランダルが弾き飛ばされる。
「ぐあっ!!」
壁へ叩きつけられる。
しかし。
「……っ!」
デュランダルは立ち上がる。
「まだだ……!」
天羽々斬が迫る。
「ならば――!」
二閃。
三閃。
四閃。
デュランダルが受ける。
「ぐっ……!」
五閃。
――ギィィィン!!
聖剣が大きく揺れる。
「くっ……!」
六閃。
――ザァン!!
刀身に小さな傷が走った。
デュランダルの目が見開かれる。
「……!」
天羽々斬は止まらない。
「まだだ!!」
七閃。
――ガァン!!
八閃。
――ズガァン!!
九閃。
――ギィィン!!
デュランダルが押し込まれる。
「ぐああああっ!!」
だが。
その場から退かない。
「俺は――!!」
デュランダルが剣を振り上げる。
「ここで終わるわけにはいかない!!」
――ドォン!!
天羽々斬の剣とデュランダルの剣が激突する。
二人の身体が同時に弾かれる。
距離が開く。
荒い呼吸。
傷ついた身体。
そして――。
二人の剣。
その刀身にも、確かな傷が刻まれていた。
天羽々斬が自分の剣を見る。
刀身に細かな亀裂。
デュランダルの剣にも、幾つもの傷が走っている。
それでも。
二人は構え直す。
「……まだだ」
天羽々斬が呟く。
「そうだ」
デュランダルが答える。
再び。
二人が走る。
――ガキィン!!
刃が交差する。
一度。
二度。
三度。
四度。
激しい金属音が闘技場を駆け抜ける。
――ギィィン!!
――ザァン!!
――ガァン!!
天羽々斬の刃がデュランダルを削る。
デュランダルの刃もまた、天羽々斬を削る。
互いに傷を負わせるたび。
互いの武器もまた、削れていく。
「まだだ!!」
「来い!!」
天羽々斬が斬り込む。
デュランダルが受ける。
――ガキィン!!
刀身が欠ける。
デュランダルが斬り返す。
――ザァン!!
天羽々斬の刀身にも亀裂が広がる。
「……!」
二人が一度、距離を取る。
天羽々斬は剣を見る。
デュランダルも自分の剣を見る。
どちらの刀身も――。
限界へ近づいていた。
それでも。
二人とも剣を下ろさない。
「……お互い」
天羽々斬が静かに言う。
「あと一撃、持つかどうかだな……」
デュランダルは自分の剣を見る。
そして。
「ああ」
静かに答える。
「そうだな……」
二人の間に静寂が落ちる。
天羽々斬が剣を構え直す。
「なら――」
デュランダルもまた、剣を構える。
天羽々斬が笑った。
「お前の不折れの剣……」
一歩。
踏み出す。
「俺が折って、勝ち上がるのは俺だ!」
デュランダルが目を細める。
そして――。
静かに笑った。
「不折れは……」
剣を握り締める。
「折れることが無いから不折れなんだ……」
さらに力を込める。
「決して折れん!」
天羽々斬も剣を握る。
「……そうか」
デュランダルが構える。
天羽々斬も構える。
二人の視線が交差する。
「行くぞ」
「ああ」
そして――。
二人が同時に駆け出した。
「うおおおおおおおおっ!!」
「はああああああああっ!!」
最後の一撃。
天羽々斬が剣を振り下ろす。
デュランダルが剣を振り上げる。
二つの刃が――。
正面から激突した。
――――――ガァァァァァン!!
凄まじい金属音。
一瞬。
二人の動きが止まった。
そして。
――ギギギギギ……。
刃が擦れる。
亀裂が走る。
さらに。
――バキィィィン!!
何かが弾け飛んだ。
一本の刃が空中へ舞い上がる。
クルクルと回転する。
誰も声を発しない。
その刃はゆっくりと落下し――。
――ドスッ。
闘技場の地面へ突き刺さった。
静寂。
完全な静寂。
天羽々斬とデュランダル。
二人はその場に立っている。
だが。
その手に握られている剣は――。
一本だけだった。
実況席から、震える声が響く。
『……え』
一拍。
『お、お……』
実況が言葉を失う。
そして――。
『お、折れず!!』
声が闘技場へ響き渡る。
『デュランダル選手の剣は――!!』
実況が叫ぶ。
『不折れ!!』
観客席から、一斉にどよめきが起こる。
「うおおおおおっ!!」
「折れなかった!!」
「デュランダルだ!!」
「不折れの聖剣!!」
闘技場へ突き刺さった一本の刃。
それは――。
天羽々斬の刃だった。
天羽々斬は、残された柄を見つめる。
そして。
「……チッ」
小さく舌打ちする。
「やっぱり折れなかったか……」
デュランダルは、自らの剣を見る。
刀身には無数の傷。
深い亀裂。
それでも――。
折れてはいない。
「伊達に不折れは名乗っていないからな……」
そして。
デュランダルは苦笑する。
「しかし――」
自分の剣を見る。
「本当に危うかった」
天羽々斬が顔を上げる。
デュランダルは続ける。
「あと一撃あったら……」
僅かに息を吐く。
「結果は逆だったかもしれない」
天羽々斬は――。
ニヤリと笑った。
「へっ」
残された柄を肩へ担ぐ。
「当たり前だ!」
デュランダルも笑う。
「そう言うと思ったよ」
二人はしばらく見つめ合う。
そして。
天羽々斬が言った。
「……強かったな」
「ああ」
デュランダルも頷く。
「お前もな」
天羽々斬は折れた自分の刃を見る。
「私の剣が、最後まで届かなかったか」
「いや」
デュランダルが首を振る。
「届いていたさ」
自らの剣に刻まれた無数の傷を見る。
「俺の剣が折れなかっただけだ」
天羽々斬は少しだけ笑った。
「……なるほど」
その時。
『……勝負あり!!』
実況の声が闘技場へ響き渡った。
『準決勝第一試合!!』
観客席が一斉に立ち上がる。
『激闘を制したのは――!!』
デュランダルが剣を掲げる。
『デュランダル!!』
――――おおおおおおおおおおっ!!
凄まじい歓声が闘技場を包み込んだ。
デュランダルはその歓声を聞きながら、静かに剣を下ろす。
そして。
折れた天羽々斬の刃へ目を向けた。
「……見事な剣だった」
天羽々斬は残された柄を見つめる。
「そうか」
そして。
「……なら、負けた甲斐はあったな」
二人は互いに笑った。
こうして。
準決勝第一試合。
荒ぶる神の剣と。
伝説の英雄の剣。
力で全てをねじ伏せてきた天羽々斬と。
傷つき、倒れ、それでも立ち上がり続けたデュランダル。
二つの剣は最後の一撃まで互いを削り合い――。
最後に残ったのは。
不折れの聖剣――デュランダルだった。
お疲れ様でした。
読んで下さり感謝致します。
話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。
更新時間:毎日12:00となっております。




