第三十試合 四つの頂点とそれぞれの想い
作品は完結させております。
安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。
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また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。
よろしくお願いします。それではどうぞ!
準々決勝。
その全四試合が――終わった。
闘技場には、激戦の爪痕が残されている。
砕けた地面。
削れた壁。
焦げた床。
そして――。
そのすべてを見届けた観客たちの熱気が、未だ冷めることなく渦巻いていた。
『皆様あああああ!!』
実況の声が闘技場へ響き渡る。
『激闘!! 激闘!! 激闘の連続でした!!』
巨大スクリーンへ、準々決勝の戦いが映し出されていく。
『まず第一試合!!』
雷を纏った巨大な槌。
それを振るうミョルニル。
対するは、日本神話の神剣――天羽々斬。
二つの神話が正面からぶつかり合った。
『護るための力を思い出した雷神の槌!!』
『対する天羽々斬は、創られた者としての存在を証明するため、最後まで立ち続けました!!』
映像の中で、ミョルニルの槌と天羽々斬の剣が激突する。
――ズガァァン!!
最後の一撃。
天羽々斬の剣がミョルニルを捉える。
槌が地面へ落ちる。
そして――。
『勝者!! 天羽々斬!!』
観客席から歓声が上がる。
天羽々斬は静かに剣を掲げていた。
その姿は、まるで自らの存在を世界へ刻みつけるかのようだった。
『そして第二試合!!』
映像が切り替わる。
星空を宿した剣。
メテオスラッシュ。
そして――。
不折れの聖剣。
デュランダル。
『無名だった剣と!!』
『英雄の剣!!』
激しい剣戟。
幾度となく交差する二つの刃。
最後にデュランダルの一撃がメテオスラッシュを捉えた。
そして――。
倒れたメテオスラッシュの中に、眠っていた記憶が蘇った。
隕石。
古代人。
そして――。
自分を生み出した者たち。
『メテオスラッシュ選手は敗北しました!!』
『しかし!!』
実況の声が熱を帯びる。
『彼は最後の最後で、自らの起源を思い出したのです!!』
観客席から静かな拍手が広がっていく。
『勝者!! デュランダル!!』
デュランダルは、倒れたメテオスラッシュを見つめていた。
「……思い出せてよかったな」
その声は、誰にも届かない。
だが――。
どこか優しかった。
そして――。
『第三試合!!』
巨大な戦斧。
パラシュ。
対するは――。
黄金の盾。
イージス。
『砕く者と!!』
『砕かれぬ者!!』
パラシュの斧が何度も盾へ叩き込まれる。
一撃。
二撃。
三撃。
五撃。
十撃。
それでも――。
イージスの盾は砕けなかった。
そして最後の一撃。
――ドォォォォォン!!
盾が吹き飛ぶ。
しかし。
同時に――。
パラシュの斧も砕け散った。
『勝者!! イージス!!』
観客席が大きく沸いた。
パラシュは砕けた斧の柄を肩へ担ぐ。
「本当に硬ってーな!姉ちゃんの盾は……!」
イージスは亀裂の入った盾を見つめる。
「あなたの一撃も……凄かったわ」
二人は笑った。
そして――。
『準々決勝、最後の一戦!!』
スクリーンへ、二人の姿が映し出される。
雷霆。
ケラウノス。
そして――。
十二の功業を宿す英雄。
ヘラクレス。
『父と子とも呼べる因縁を持つ二人!!』
『雷霆と英雄!!』
『最後に立っていたのは――!!』
映像の中で、ヘラクレスが大バサミを構える。
ケラウノスが両手を上げる。
『ヘラクレス!!』
――おおおおおおおおおおっ!!
闘技場が揺れた。
映像が止まる。
そこに、四人の姿が並んだ。
天羽々斬。
デュランダル。
イージス。
ヘラクレス。
実況が叫ぶ。
『これで――!!』
『準決勝進出者が決定しました!!』
四人。
たった四人。
数多くの伝説。
数多くの神話。
数多くの武器たちを打ち破り――。
ここまで辿り着いた者たち。
だが。
戦いが終わったわけではない。
むしろ――。
ここからが本番だった。
⸻
一方。
闘技場から少し離れた選手用の休憩区画。
天羽々斬は、一人で椅子に座っていた。
身体には、まだミョルニルとの戦いで受けた傷が残っている。
治療を受けているものの、完全に回復しているわけではない。
天羽々斬は、自分の手を見る。
「……私が、ここまで来たのか」
手を握る。
バルムンクとの戦い。
方天戟との戦い。
そして――。
ミョルニルとの戦い。
自分が何者なのか。
なぜ存在するのか。
その答えは、まだ完全には見つかっていない。
それでも。
「……私は、進む」
その言葉に迷いはなかった。
⸻
別の控室。
デュランダルは、壁へ背を預けていた。
身体中に傷。
肩にも大きな裂傷が残っている。
それでも――。
その顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。
「……メテオスラッシュ」
彼は小さく呟く。
「名前だけじゃない」
彼が最後に見せたもの。
過去を取り戻した、あの目。
「あいつは……ようやく自分自身を見つけたんだな」
デュランダルは目を閉じる。
「なら、俺も負けていられないな」
聖剣を見つめる。
「英雄の剣として――」
静かに立ち上がる。
「最後まで戦おう」
⸻
そして医務室。
イージスはベッドへ腰掛けながら、顕現させた自らの盾を見ていた。
大きな亀裂。
これまで、一度たりとも砕けることのなかった盾に刻まれた傷。
「……初めてね」
少しだけ笑う。
そこへ――。
「おーい」
扉が開いた。
「……パラシュ?」
そこには、包帯だらけになったパラシュが立っていた。
「いやぁ」
パラシュは頭を掻く。
「ちょっと見に来ただけだ」
イージスが盾を見る。
「これ?」
「ああ」
パラシュは盾の亀裂を見つめる。
「……結局、砕けなかったな」
「ええ」
「傷……悔しいか?」
イージスが少し考える。
「……いいえ」
そして笑った。
「あなたの斧が、私の盾に傷を残したことは誇りに思うわ」
「……そうか」
パラシュは嬉しそうに笑った。
「なら、よかった」
扉を閉める前に、パラシュは振り返る。
「……次も勝てよ」
「ええ」
イージスは頷いた。
「あなたの分までね」
⸻
そして最後。
選手控室の一角。
ヘラクレスはベンチに座りながら、腕を組んでいた。
「……」
そこへ。
「お前」
声がした。
ヘラクレスが顔を上げる。
「……なんだよ」
ケラウノスだった。
身体には治療の跡が残っている。
それでも歩ける程度には回復しているらしい。
「勝った気分はどうだ?」
「別に」
ヘラクレスはそっけなく答える。
「ただ次に行くだけだ」
「そうか」
ケラウノスが笑う。
「相変わらず可愛げがないな」
「誰が可愛いって?」
「言ってない」
「……チッ」
ヘラクレスがそっぽを向く。
ケラウノスは少しだけ目を細めた。
「だが――」
「……?」
「本当に強くなったな」
ヘラクレスは黙った。
「昔とは比べ物にならない」
「……」
「お前はもう――」
ケラウノスが微笑む。
「立派な英雄だ」
ヘラクレスはしばらく黙っていた。
そして。
「……うるせえよ」
「そうか」
「そういうこと言われると調子狂うんだよ」
「やれやれ」
ケラウノスは笑った。
ヘラクレスは立ち上がる。
「俺はもっと強くなる」
拳を握る。
「まだ終わってねえからな」
その目には――。
燃えるような闘志が宿っていた。
⸻
そして。
数時間後。
闘技場の照明が落とされる。
観客たちは一度会場を離れ、次なる戦いへ備えていた。
選手たちもまた。
それぞれの場所で傷を癒やしている。
だが――。
巨大スクリーンには、すでに次の文字が浮かび上がっていた。
準決勝。
その文字を見つめる者たちがいる。
天羽々斬。
デュランダル。
イージス。
ヘラクレス。
四人。
あと二試合。
勝てば――。
決勝。
そして。
この大会の頂点へと手が届く。
『皆様!!』
実況の声が、まだ誰もいない闘技場へ響く。
『準々決勝は終わりました!!』
スクリーンへ、四人の姿が映し出される。
『しかし!!』
『戦いは――まだ終わっていません!!』
四人の視線が、それぞれ別の場所で鋭くなる。
『次はいよいよ――!!』
『準決勝!!』
『勝者は決勝へ!!』
『敗者は――ここで終わり!!』
『果たして!!』
実況の声が大きく響き渡る。
『神剣か!!』
『聖剣か!!』
『最硬の盾か!!』
『それとも――!!』
最後に映し出されたのは。
黄金の手甲を握るヘラクレス。
『十二の功業を宿す英雄か!!』
――そして。
スクリーンが暗転する。
残された文字は――。
準決勝。
それだけだった。
激戦の傷を癒やす時間は――もう終わる。
次に闘技場へ立つ者は。
四人のうち――二人。
そして。
その二人だけが――。
決勝への道を歩む。
静まり返った闘技場の奥で。
まだ見ぬ戦いの幕が――。
ゆっくりと、上がろうとしていた。
お疲れ様でした。
読んで下さり感謝致します。
話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。
更新時間:毎日12:00となっております。




