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第二十八試合 砕く覚悟と砕かれざる覚悟

作品は完結させております。

安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。


たくさんのブックマーク、評価、コメント。

また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。


よろしくお願いします。それではどうぞ!


準々決勝も、第三試合へと突入していた。


ここまで勝ち残った武器は、すでに並の武器ではない。


その中でも――


今回の対戦は、極めて分かりやすい力関係を持っていた。


砕く者。


そして――砕かれぬ者。


『さあ!! 続いて準々決勝、第三試合です!!』


実況の声が闘技場全体へ響き渡る。


『登場するのは――!!』


巨大スクリーンに、一人の大男が映し出される。


屈強な肉体。


傷だらけの身体。


『第一回戦では、伝説の剣カラドボルグを真正面から叩き伏せ!!』


『第二回戦では、死神の鎌デスサイズを自らの腕で捕らえ、圧倒的な一撃を叩き込んだ!!』


実況の声が熱を帯びる。


『インド神話に名を残す英雄、パラシュラーマの伝説の斧――!!』


『パラシュ!!』


観客席から大歓声が巻き起こる。


パラシュが入場口から姿を現す。


その巨体だけで、会場の空気が震えるようだった。


そして――。


『対するは!!』


スクリーンが切り替わる。


そこに映し出されたのは、一人の女性。


凛とした姿。


静かな眼差し。


『第一回戦では神槍ヴェールの猛攻を完全に防ぎ!!』


『第二回戦では、空間そのものを切り裂く燭台切光忠の斬撃を耐え抜いた!!』


実況が叫ぶ。


『古代ギリシャ神話、女神アテナの神聖なる盾!!』


『最硬の盾――!!』


『イージス!!』


会場が大きく沸いた。


左右の入場口から、二人が姿を現す。


パラシュ。


そして――イージス。


二人は闘技場中央へ歩み寄る。


互いに向かい合う。


パラシュがイージスを見る。


「……盾か」


「ええ」


イージスは静かに答える。


「随分と自信がありそうだな」


パラシュが笑う。


「これまで、誰にも砕かれていないから」


イージスも微笑む。


「そうか……なら俺が砕く」


パラシュがそう言うと、イージスはパラシュを見つめて答えた。


「やってみなさい」


『両者――武器を顕現!!』


二人が宝珠へ手を伸ばす。


光が弾けた。


パラシュの手に、巨大な戦斧が現れる。


分厚い刃。


重厚な柄。


その姿だけで、圧倒的な破壊力を感じさせる。


対するイージス。


黄金の光が収束し――。


その手に、巨大な盾が現れた。


中央には、蛇の髪を持つ怪物――メドゥーサの顔。


これまで幾度もの戦いを耐え抜いてきた、最硬の盾。


『両者、構えて――』


パラシュが斧を握り直す。


イージスも盾を正面へ構える。


『準々決勝、第三試合――!!』


会場が静まり返る。


『開始!!』


鐘が鳴った。


瞬間――。


パラシュが踏み込んだ。


「おおおおおおっ!!」


巨大な身体が一気に距離を詰める。


イージスが盾を構える。


「来なさい!」


パラシュが斧を振り上げた。


「砕けろぉぉぉ!!」


――ドゴォォォォン!!


凄まじい衝撃。


イージスの身体が後方へ滑る。


「くっ……!」


盾の向こうから衝撃が全身へ突き抜ける。


それでも――。


盾は無傷。


「……なるほど」


パラシュが笑う。


「さすがだな」


再び斧を振り上げる。


「なら、もう一発だ!!」


――ドォォン!!


二撃目。


イージスの腕が震える。


「ぐっ……!」


三撃目。


――ドゴォン!!


四撃目。


――ガァァン!!


五撃目。


――ドォォン!!


そのたびに、イージスの身体が後ろへ押し込まれる。


だが――。


盾は砕けない。


『凄まじい!!』


実況が叫ぶ。


『パラシュ選手、開始直後から一切の小細工なし!!』


『ただひたすらに、イージス選手の盾を砕くための一撃を叩き込んでいます!!』


観客席が沸く。


「いけぇぇぇ!!」


「砕けるぞ!!」


「イージス、耐えろ!!」


パラシュがさらに踏み込む。


「まだだ!!」


斧を振り下ろす。


――ドゴォォォン!!


イージスの身体が大きく沈む。


「ぐっ……!」


両腕で盾を支える。


その腕が震えている。


「重い……!」


「だったら――」


パラシュが斧を振り上げる。


「もっと重くしてやる!!」


――ゴォォォォン!!


凄まじい一撃。


盾が大きく震えた。


その瞬間――。


ピシッ。


「……!」


イージスの目が見開かれる。


盾の表面。


そこに――。


小さな亀裂が走っていた。


観客席が静まり返る。


『な……なんと!!』


実況が叫ぶ。


『イージス選手の盾に――亀裂が入りました!!』


『あの最硬の盾に、初めて傷が刻まれた!!』


パラシュが亀裂を見つめる。


そして――。


「……へへ」


笑った。


「やっと入ったか」


イージスは盾を見る。


確かに亀裂がある。


だが、まだ砕けてはいない。


「……まだよ」


盾を握る腕へ力を込める。


「この程度じゃ、砕けない」


「そうか!」


パラシュが笑う。


「なら――」


斧を構える。


「砕けるまで叩くだけだ!!」


再び斧が振り下ろされる。


――ドォォォン!!


「ぐっ!!」


イージスの腕が大きく震える。


次の一撃。


――ガァァン!!


「くっ……!」


さらに一撃。


――ドゴォォン!!


「んんっ……!」


腕に限界が近づいていく。


それでも盾を離さない。


パラシュもまた、すでに満身創痍だった。


肩で荒く息をする。


身体中に傷がある。


それでも斧を握る手だけは緩まない。


「……はぁ……はぁ……」


イージスも息を切らしている。


「……まだ……」


パラシュが顔を上げる。


「まだだ!!」


最後の力を振り絞る。


斧を頭上へ掲げる。


「いい加減――」


全身の力を一点へ集める。


「砕けろぉぉぉぉぉぉ!!」


――ドォォォォォン!!


今までとは比べものにならない重量の一撃。


砕かんとする衝撃を盾が真正面から受け止める。


「――っ!!」


しかしイージスの腕が限界を迎え、盾が手から弾き飛ばされた。


「きゃあっ!!」


盾が大きく吹き飛び、地面を転がる。


――ガァン!!


イージスの身体もその場に崩れかけた。


「……!」


闘技場が静まり返る。


イージスは盾を見た。


遠くに転がっている。


自分の手には――何もない。


「……」


イージスは目を閉じた。


「……私の負けね」


そう覚悟した……その瞬間だった。


「俺の負けだ!!」


「……へっ?」


イージスが目を開く。


目の前に立っているパラシュ。


だが――。


その手に握られていたのは巨大な斧の柄だけだった。


「……え?」


イージスが呆然とする。


パラシュは自分の手元を見る。


「俺の斧は――」


そこには、砕け散った刀身。


地面には無数の破片が散らばっている。


「砕け散った……」


パラシュはゆっくりと、吹き飛ばされた盾へ目を向ける。


イージスの握っていた盾は――。


大きな亀裂こそ刻まれている。


だが砕けてはいなかった。


パラシュが笑う。


「……あんたの盾は」


一歩、盾へ近づく。


そして――。


「いやー!」


大きな声を上げる。


「本当に硬ってーな! 姉ちゃんの盾は……!」


イージスは盾を見る。


亀裂の入った黄金の盾。


それでも、確かに形を保っている。


そして――。


イージスは微笑んだ。


「当然でしょ?」


パラシュが笑う。


「……そうか」


柄だけになった斧を肩へ担ぐ。


「だったら、俺の負けだ」


イージスは静かに頷いた。


『……勝負あり!!』


実況の声が闘技場へ響き渡る。


『準々決勝、第三試合――!!』


観客席が息を呑む。


『最後まで砕くことを諦めなかったパラシュ!!』


『そして――最後まで砕かれなかったイージス!!』


実況が叫ぶ。


『勝者――!!』


『イージス!!』


瞬間。


会場中から大歓声が爆発した。


イージスは吹き飛んだ盾を拾い上げる。


その盾には、大きな亀裂が残っていた。


だが――。


砕けてはいない。


パラシュはそれを見て笑う。


「……大したもんだ」


イージスも笑った。


「あなたの斧も、凄かったわ」


パラシュは柄だけになった斧を見る。


「そうか?」


「ええ」


「なら――」


パラシュは笑いながら歩き出す。


「砕けた甲斐はあったな」


イージスはその背中を見送る。


そして、自らの盾へ視線を落とした。


「……本当に、凄い一撃だったわ」


その声は、誰にも届かないほど小さかった。


こうして――。


すべてを砕こうとした戦斧は砕け。


最後まで砕かれなかった盾が、勝者として残った。


砕く覚悟と砕かれざる覚悟。


その激突を制したのは――。


最硬の盾。


イージスだった。

お疲れ様でした。

読んで下さり感謝致します。


話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。

更新時間:毎日12:00となっております。

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