第二十二試合 空間切断と異次元硬度
作品は完結させております。
安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。
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よろしくお願いします。それではどうぞ!
第二回戦も、いよいよ終盤へ差し掛かっていた。
ここまで数々の強者たちが激戦を繰り広げ、闘技場には傷跡が刻まれている。
そして――
『さあ、続いては第二回戦、第七試合です!!』
実況の声が闘技場全体へ響き渡る。
『ここで登場するのは――第一回戦で、驚異の空間切断を見せつけた名刀!!』
左側の入場口から、長い黒髪をなびかせた青年が姿を現した。
華やかな衣装。
整った顔立ち。
そして、どこか余裕を感じさせる笑み。
『伊達政宗の愛刀として知られる名刀――燭台切光忠!!』
観客席から歓声が上がる。
燭台切光忠は軽く手を上げる。
「よろしくね」
そして――
『対するは!!』
反対側の入場口。
凛とした姿で立つ女性が姿を現した。
『古代ギリシャ神話において、女神アテナの防具として知られる神聖なる盾!!』
『その名は――イージス!!』
大歓声。
イージスは静かに一礼をした。
『第一回戦では、神槍ヴェールの猛攻を完全に防ぎ切った最硬の盾!!』
『しかし今回の相手は、盾そのものを斬る必要すらない!!』
実況の声が一段と熱を帯びる。
『空間そのものを切断し、その向こう側にまで斬撃を届かせる燭台切光忠!!』
『果たして、異次元の硬度を誇るイージスの盾は――空間を越えて襲い来る斬撃を防ぐことができるのか!!』
二人が中央へ歩み寄る。
燭台切光忠がイージスを見る。
「最硬の盾……か」
イージスは盾を構えたまま答える。
「そうよ」
「それは楽しみだね」
燭台切光忠が笑う。
「僕の刀が、どこまで通じるのか確かめてみよう」
イージスも薄く笑った。
「ええ」
『それでは、両者――武器を顕現!!』
二人が宝珠へ手を伸ばす。
光が弾ける。
燭台切光忠の手に、日本刀が現れた。
美しい刀身。
静かな威圧感。
対するイージスの手には――
黄金の盾。
その中央には、蛇の髪を持つ怪物――メドゥーサの顔が浮かんでいる。
『両者、構えて――』
燭台切光忠が刀を抜く。
イージスも盾を構える。
『試合――開始!!』
瞬間。
燭台切光忠が刀を振るった。
――ザンッ!!
空気が裂けた。
目には見えない斬撃が、イージスへ迫る。
「……!」
イージスは盾を構える。
だが――
「っ……!」
盾の後ろ。
イージスの頬に、一本の傷が走った。
血が流れる。
『な、なんと!!』
実況が叫ぶ。
『盾は一切傷ついていません!!』
『しかし、その後ろにいるイージス選手本人が斬られた!!』
燭台切光忠は刀を構え直す。
「なるほどね……やっぱり盾そのものを斬る必要はないんだね」
再び刀を振る。
――ザンッ!!
今度は肩。
イージスの身体に傷が走る。
「くっ……!」
さらに一閃。
――ザシュッ!!
脇腹。
もう一閃。
――ザンッ!!
腕。
さらに――
――ザシュッ!!
胸元。
イージスの身体が次々と斬り裂かれていく。
しかし。
盾には傷一つない。
『凄まじい!!』
実況が叫ぶ。
『燭台切光忠選手の斬撃が、イージス選手の盾を完全にすり抜けている!!』
『盾の硬度など関係ありません!!』
『空間そのものを切り裂く斬撃が、盾の向こう側にいるイージス選手を直接攻撃しています!!』
観客席がざわめく。
「もうやめろ!!」
誰かが叫んだ。
「イージスはもう限界だ!」
「試合を止めろ!!」
「これ以上は無理だ!!」
次々と声が上がる。
イージスの身体は傷だらけだった。
白い肌を伝う様に血が流れ続けている。
盾を構える腕にも力が入りづらくなっている。
実況は言葉を失いかけた。
『こ、これは……』
観客席を見る。
そして――
イージスを見る。
「……」
イージスは俯いていた。
実況が審判へ視線を向けようとした、その時。
イージスが顔を上げた。
その目には――
まだ光があった。
諦めていない。
それどころか。
口元に――
薄い笑みすら浮かんでいる。
『……!』
実況が息を呑む。
『イージス選手……まだ戦う意思を失っていません!!』
燭台切光忠も、その表情に気付いた。
「……笑ってる?」
イージスは答えない。
ただ盾を構える。
「面白いね」
燭台切光忠が刀を構え直した。
「でも――」
一閃。
――ザンッ!!
また傷が増える。
「このままじゃ、終わらないよ」
「……ええ」
イージスが小さく呟く。
「そうね」
燭台切光忠は距離を取る。
刀を振る。
――ザンッ!!
――ザシュッ!!
――ザンッ!!
何度斬っても、イージスは倒れない。
血に濡れながらも立ち続ける。
燭台切光忠が眉を寄せる。
「……遠距離からじゃ、なかなか仕留められないな」
イージスは何も答えない。
燭台切光忠が刀を握り直す。
そして――
一歩。
また一歩。
距離を詰めていく。
「だったら」
刀を構える。
「直接、斬る」
イージスがその姿を見る。
そして――
「……やっと」
小さく笑った。
「近づいてきたわね」
燭台切光忠が足を止める。
「何?」
イージスは盾を――
自らの横へ立てるように置いた。
「……!」
盾を構えない。
身体を完全に晒す。
傷だらけの身体。
血に染まった顔。
無防備な姿。
観客席が騒然となる。
「何をしてるんだ!?」
「盾を捨てた!?」
「危ない!!」
しかし。
燭台切光忠は静かに刀を構えた。
そして――
「その心意気……潔し」
目を細める。
「なら、一撃で仕留める」
燭台切光忠が踏み込んだ。
刀を大きく振り上げる。
イージスは動かない。
その身体へ向けて――
刀が迫る。
あと僅か。
あと数センチ。
その瞬間。
イージスが笑った。
「潔い?」
燭台切光忠の目が僅かに見開かれる。
「私は――」
イージスの手が、横に置かれていた盾へ伸びる。
「往生際が悪いわよ!!」
――ガァァァン!!
盾が振り抜かれた。
燭台切光忠の刀。
その刀身の側面へ――
最硬の盾が、真正面から叩き込まれた。
「――なっ!?」
――ポキン。
乾いた音が響いた。
燭台切光忠の刀が――
折れた。
「……!」
会場が静まり返る。
折れた刀身が地面へ落ちる。
――カラン。
燭台切光忠は呆然と刀を見る。
「僕の……刀が……」
イージスは盾を握ったまま立っている。
傷だらけ。
血まみれ。
それでも――
笑っていた。
「どんなに凄い斬撃でも」
盾を構え直す。
「刀そのものに弱点がないわけじゃないでしょう?」
燭台切光忠は折れた刀を見つめる。
そして――
ゆっくりと笑った。
「……なるほど」
イージスが盾を構える。
「ようやく、捕まえたわ」
燭台切光忠は折れた刀を下ろした。
「これは……一本取られたね」
実況がようやく我に返る。
『勝負あり!!』
会場中へ声が響き渡る。
『第二回戦、第七試合――!!』
観客席が息を呑む。
『勝者――イージス!!』
瞬間。
会場中から大歓声が爆発した。
イージスは盾を下ろす。
身体中から血を流しながら、それでも倒れない。
「……ふぅ」
大きく息を吐く。
そして――
折れた燭台切光忠の刀へ目を向ける。
「あなたの斬撃……本当に凄かったわ」
燭台切光忠が苦笑する。
「そっちこそ……まさか、最後に盾をぶつけてくるとは思わなかったよ」
イージスは笑った。
「最硬の盾よ?」
盾を軽く叩く。
「使い方は、防ぐだけじゃないの」
燭台切光忠は肩をすくめる。
「……参ったな」
そして、静かに目を閉じた。
『第二回戦、第七試合!!』
『空間を切り裂く斬撃を耐え抜き――』
実況の声が闘技場へ響き渡る。
『最後はその最硬の盾そのものを武器として勝利を掴み取ったのは――!!』
イージスが盾を掲げる。
『勝者――イージス!!』
再び、大歓声が闘技場を揺らした。
傷だらけの身体。
血に染まった顔。
それでも、その瞳には確かな勝利の光が宿っていた。
空間を切断する斬撃。
異次元の硬度を誇る盾。
その激突を制したのは――
最後まで諦めなかった、最硬の盾だった。
お疲れ様でした。
読んで下さり感謝致します。
話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。
更新時間:毎日12:00となっております。




