第二試合 雷槌と神槍
作品は完結させております。
安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。
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また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。
よろしくお願いします。それではどうぞ!
『――第一試合、終了!』
会場を包んでいた歓声が、少しずつ落ち着いていく。
舞台の上には、先ほどまで激闘を繰り広げていた二人の姿はもうない。
エクスカリバーは敗れ、アロンダイトが勝ち残った。
世界最強の武器を決める大会。
その記念すべき最初の試合で、最大級の番狂わせが起きた。
そして――。
『さあ! 興奮冷めやらぬ中、続いて第二試合へ参りましょう!』
観客席が再び沸き立つ。
『第一試合に負けず劣らず、いや! むしろそれ以上の超大物対決です!』
巨大スクリーンに二つの紋章が浮かび上がった。
一つは雷。
もう一つは、一本の槍。
『まずは――北欧神話より!』
雷鳴が轟く。
『雷神トールが振るった雷槌――!』
スクリーンに、一人の大男が映し出される。
赤い髪。
鍛え上げられた肉体。
無数の傷跡。
肩には黒い外套を掛け、豪快な笑みを浮かべている。
男は観客席を見渡すと、拳を突き上げた。
『ミョルニル!!』
「おおおおおおおっ!!」
凄まじい歓声。
ミョルニルは、その声に満足そうに笑った。
「いいぞ!」
拳を握る。
「こういうのを待ってたんだ!」
そしてもう一方。
会場の照明が落ちる。
静寂。
『対するは――!』
一本の光が舞台の中央を照らした。
そこに立っていたのは、長い白髪の男。
片目を隠す黒い眼帯。
黒い外套。
手には、まだ何もない。
だが、その立ち姿には異様な威圧感があった。
『北欧神話の主神!』
観客席からどよめきが起こる。
『神々の王、オーディンが手にした神槍――!』
男がゆっくりと顔を上げる。
『グングニル!!』
歓声が爆発した。
ミョルニルが笑う。
「お前か!」
グングニルは静かにミョルニルを見る。
「……何が嬉しい」
「決まってるだろ!」
ミョルニルは肩を回す。
「強そうな奴と戦える!」
「……単純だな」
「何だと?」
「噂通りだ」
グングニルは淡々と言う。
「力だけはありそうだ」
ミョルニルの口元が吊り上がる。
「へえ……」
一歩、前へ出る。
「じゃあ、試してみるか?」
「構わん」
二人は舞台へ向かって歩き出した。
――――
『それでは、両者とも宝珠を!』
ミョルニルが手のひらに宝珠を乗せる。
グングニルも同じように宝珠を掲げた。
『武器、顕現!』
二つの宝珠が同時に輝いた。
ミョルニルの手の中に現れたのは、巨大な戦槌。
分厚い金属の頭部。
短い柄。
一見して、扱うだけでも相当な腕力を必要とする武器だった。
「ははっ!」
ミョルニルはそれを片手で軽々と振り回す。
「最高だ!」
一方。
グングニルの手には一本の長槍が現れた。
細く、長い。
無駄な装飾はない。
それなのに、見る者の背筋を自然と伸ばさせるような威圧感がある。
グングニルが槍を構えた。
「行くぞ」
『――試合開始!!』
鐘が鳴った。
瞬間。
ミョルニルが飛び出した。
「うおおおおおっ!!」
正面からの突撃。
速い。
巨体からは想像できないほどの速度だった。
「ぬっ!」
グングニルが槍を突き出す。
ミョルニルの肩を狙った一撃。
だが――。
「そんなもの!」
ミョルニルは身体を捻った。
槍が頬を掠める。
そのまま踏み込む。
「効くかぁぁぁ!!」
戦槌が振り下ろされる。
グングニルは槍の柄で受けた。
轟音。
「――ッ!」
足元の床が砕ける。
グングニルの身体が僅かに沈んだ。
「どうした!」
ミョルニルが笑う。
「その槍、飾りか!?」
「……なるほど」
グングニルが槍を押し返す。
「確かに、力はある」
一歩下がる。
「だが――」
槍先が、ミョルニルの目の前へ消えた。
「遅い」
「なっ――!」
ミョルニルが顔を逸らす。
槍が頬を切り裂いた。
血が飛ぶ。
「ははっ!」
ミョルニルが笑う。
「やるじゃねえか!」
グングニルは構えを崩さない。
「褒めている暇があるのか?」
「あるさ!」
ミョルニルは血を拭う。
「楽しくなってきた!」
再び突撃。
戦槌が唸る。
グングニルは槍で受け流す。
一撃。
二撃。
三撃。
ミョルニルの攻撃を紙一重で避け、槍を突き込む。
ミョルニルは身体を捻り、槌で弾く。
互いに一歩も譲らない。
観客席から歓声が上がる。
『凄い! 凄まじい攻防です!』
戦槌を振り上げながら、ミョルニルが叫んだ。
「俺の攻撃、全て耐えられるか!」
「無論」
グングニルが構える。
「そんな守り――」
ミョルニルが踏み込んだ。
「全部ぶっ壊す!!」
戦槌が振り下ろされた。
グングニルは槍を突き出す。
正面衝突。
槌と槍が激突した。
衝撃波が舞台を走る。
「ぐっ……!」
グングニルの足が後ろへ滑る。
「おおおおおおっ!」
ミョルニルがさらに力を込める。
一歩。
また一歩。
グングニルが押される。
「……ッ!」
ついに片膝が床についた。
ミョルニルが笑う。
「終わりだ!」
戦槌を振り上げる。
グングニルが顔を上げた。
その目には、まだ戦意があった。
「……まだだ」
槍が閃く。
ミョルニルの胸元へ一直線。
「――ッ!」
ミョルニルが身体を捻る。
だが――。
遅かった。
槍先が胸当てを貫き、ミョルニルの身体を弾き飛ばす。
「ぐあっ!」
地面を転がる。
会場が沸いた。
グングニルが立ち上がる。
「……これで終わりだ」
ミョルニルは倒れたまま、拳を握る。
「……へへ」
ゆっくり立ち上がる。
「そうこなくっちゃな」
血を吐き捨てる。
「まだ、終わってねえ!」
再び走り出す。
グングニルも迎え撃つ。
槍が迫る。
ミョルニルは避けない。
「な――!」
槍が肩を貫く。
それでも止まらない。
「うおおおおおおおっ!!」
ミョルニルが槌を振り抜いた。
グングニルが槍を戻す。
間に合わない。
戦槌が腹部へ直撃した。
「――ッ!!」
グングニルの身体が宙へ浮く。
そのまま舞台の端まで吹き飛ばされる。
「ぐっ……!」
床に叩きつけられた。
ミョルニルも膝をつく。
荒い呼吸。
しかし、その顔には笑みが浮かんでいた。
グングニルは立ち上がろうとする。
一度。
二度。
だが、身体が言うことを聞かない。
やがて、片手を床についた。
『――立てない!』
実況の声が響く。
『グングニル、戦闘続行不能!』
一瞬の静寂。
そして――。
『勝者――!』
ミョルニルが顔を上げる。
『ミョルニル!!』
会場が爆発した。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
ミョルニルは拳を高く掲げる。
「よっしゃああああっ!!」
観客席に向かって吠える。
その姿は、勝利を純粋に喜ぶ戦士そのものだった。
グングニルは舞台から運ばれながら、ミョルニルを見る。
「……力だけ、ではなかったな」
ミョルニルが振り返る。
「ん?」
「最後の一撃」
グングニルが僅かに笑った。
「私の槍を受けながら踏み込んだ」
「そりゃあ――」
ミョルニルは拳を握る。
「勝ちたかったからな!」
グングニルは目を閉じる。
「……そうか」
ミョルニルは知らない。
自分が何を守るために、何度この槌を振るってきたのか。
まだ、思い出してはいない。
今の彼にあるのはただ一つ。
強い相手と戦い、勝つ。
それだけだった。
だが――。
この勝利が、やがて彼自身の忘れていた記憶を呼び起こすことになる。
次なる対戦相手。
王を守る剣――アロンダイト。
そして雷神の槌――ミョルニル。
二つの武器が再び舞台で向かい合う時。
ミョルニルは初めて知ることになる。
自分が振るってきた力が――
一体、何のためにあったのかを。
お疲れ様でした。
読んで下さり感謝致します。
話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。
更新時間:毎日12:00となっております。




