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第一試合 王の剣と王を守る剣

作品は完結させております。

安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。


たくさんのブックマーク、評価、コメント。

また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。


よろしくお願いします。それではどうぞ!


聖剣、魔剣、伝説の剣、名刀、神槍。


世界には、数え切れないほどの武器が存在する。


人の命を奪い、国を守り、英雄を生み、時には歴史そのものを変えた武器たち。


その中には、いつしか人々の記憶から姿を消したものもあれば、神話や伝説として現代まで語り継がれているものもある。


では――。


世界で最も強い武器とは、いったい何なのか。


アーサー王が手にした聖剣、エクスカリバー。


英雄ローランが振るった聖剣、デュランダル。


クー・フーリンの愛剣とも、槍とも伝えられるゲイ・ボルグ。


スサノオがヤマタノオロチを打ち倒した神剣、天羽々斬。


数多の伝説に名を刻んだ武器たち。


その答えを決めるため――。


世界中から三十振りの武器が集められた。


場所は、世界のどこにも存在しない巨大な闘技場。


観客席を埋め尽くす人々の前に、巨大なスクリーンが浮かび上がる。


『――Ladies and gentlemen!』


轟音のような歓声が、会場を揺らした。


『ようこそ、世界最強武器決定戦――』


スクリーンに、大きな文字が映し出される。


『Last War――Weapons’ Tournamentへ!』


さらに大きな歓声が上がった。


会場中央。


円形の舞台へ続く通路の左右には、出場する武器たちが並んでいた。


その姿は、人間と何ら変わらない。


ただし、その誰もが普通の人間ではない。


銀色の鎧を纏った男。


黒衣に身を包んだ長身の男。


和装の侍。


神官のような姿をした女。


巨大な槍を背負った戦士。


そして――。


全員の手元には、同じ形をした小さな宝珠が一つ。


大会運営が用意した、戦闘用の武器を生み出すためのものだ。


武器そのものが戦うわけではない。


試合開始と同時に、宝珠はそれぞれの持ち主に合わせた武器へと姿を変える。


その材質も、耐久性も、基本的な性能も統一されている。


違うのはただ一つ。


何者として戦うのか。


それだけだった。


『それでは! 記念すべき第一試合の出場者を発表します!』


スクリーンに一人の男が映し出される。


銀色の髪。


白銀の鎧。


堂々とした立ち姿。


腰には何もない。


だが、その姿を知らない者はほとんどいなかった。


『一人目――!』


会場の照明が、一斉に彼へ向けられる。


『ブリテンの王、アーサー・ペンドラゴンが手にした聖剣!』


男がゆっくりと顔を上げる。


『――エクスカリバー!』


割れんばかりの歓声。


エクスカリバーは、それを当然のように受け止めていた。


「……騒がしいな」


隣にいた武器が笑う。


「人気者は大変だね」


「当然だろう」


エクスカリバーは鼻を鳴らした。


「俺はエクスカリバーだ」


その声には、揺るぎない自信があった。


『そして対するは――!』


スクリーンが切り替わる。


今度は、一人の騎士が映し出された。


青いマント。


白銀の鎧。


静かな眼差し。


腰には、やはり武器はない。


『円卓の騎士、ランスロットが振るった剣!』


会場の一部から歓声が上がる。


『――アロンダイト!』


アロンダイトは、静かに歩き出した。


歓声には反応しない。


ただ、前だけを見ている。


エクスカリバーとすれ違う。


「……ランスロットの剣か」


エクスカリバーが呟いた。


アロンダイトが足を止める。


「そうだ」


「お前が俺と戦うのか」


「そのようだな」


「奇妙なものだ」


エクスカリバーが振り返る。


「かつて同じ王の物語に存在した二振りが、こうして刃を交えるとは」


アロンダイトはしばらく黙っていた。


そして、静かに答える。


「……王の物語ではない」


「何?」


「俺が背負っているのは、ランスロットという騎士の物語だ」


アロンダイトはエクスカリバーを真っ直ぐ見つめる。


「そして俺は――騎士の剣だ」


「ふっ」


エクスカリバーが笑った。


「ならば、王の剣の前で己の誇りを示してみろ」


二人が舞台へ上がる。


観客席から、再び歓声が巻き起こった。


『両者、所定の位置へ!』


舞台の中央。


二人が向かい合う。


同じ宝珠を手にする。


『それでは――武器を!』


二人が宝珠を掲げた。


瞬間。


二つの宝珠が光を放つ。


エクスカリバーの手の中で、光が一本の剣へと変わった。


白銀の刀身。


黄金の柄。


一目で、それが彼の名を象徴する形だと分かる。


対するアロンダイトの手にも、一本の剣が現れる。


その姿を見た瞬間、アロンダイトの表情が僅かに変わった。


「……久しいな」


自分の手に収まった剣を見つめる。


「この感触」


エクスカリバーが構える。


「準備はできたか?」


「ああ」


アロンダイトも剣を構えた。


「いつでも」


会場が静まり返る。


実況の声が響く。


『――第一試合!』


二人の眼光がぶつかる。


『エクスカリバー――』


一拍。


『――対――』


さらに一拍。


『アロンダイト!』


鐘が鳴った。


同時に、エクスカリバーが踏み込んだ。


速い。


観客席からどよめきが起こる。


「――ッ!」


アロンダイトが剣を横に構え、受け止める。


甲高い金属音。


一撃。


二撃。


三撃。


エクスカリバーの斬撃が次々と叩き込まれる。


アロンダイトは防ぐ。


受ける。


流す。


そして一歩だけ下がる。


「どうした!」


エクスカリバーが叫ぶ。


「その程度か、ランスロットの剣!」


アロンダイトは答えない。


ただ、相手の動きを見ていた。


エクスカリバーの剣筋。


踏み込み。


呼吸。


そして――。


「……なるほど」


アロンダイトが呟く。


「何が分かった?」


「お前は強い」


「当然だ」


「だが――」


アロンダイトの構えが変わった。


「お前は、守るために戦っていない」


エクスカリバーの眉が動く。


「何だと?」


「お前は王の剣だ」


アロンダイトが一歩踏み出す。


「王の威光を示す剣」


さらに一歩。


「王の命を受ける剣」


さらに一歩。


「王の名を背負う剣」


エクスカリバーが剣を振り下ろす。


アロンダイトが受ける。


「だが俺は違う」


ギィンッ!


弾かれた。


エクスカリバーが目を見開く。


アロンダイトが踏み込む。


「俺は――」


一閃。


エクスカリバーが辛うじて受ける。


しかし、さらに二撃目。


三撃目。


今度はアロンダイトが攻める。


「王を守るための剣だ!」


エクスカリバーの足が止まった。


「――ッ!」


その瞬間。


アロンダイトの一撃が、エクスカリバーの剣を弾き飛ばした。


剣が宙を舞う。


観客席から悲鳴が上がる。


エクスカリバーはすぐに距離を取ろうとする。


だが遅い。


アロンダイトの剣先が、エクスカリバーの喉元で止まった。


静寂。


誰も声を発しない。


実況席の男すら、言葉を失っていた。


エクスカリバーは、自分に突きつけられた刃を見つめる。


そして、ゆっくりと笑った。


「……そうか」


アロンダイトは何も言わない。


「俺は……王の剣であることに誇りを持っていた」


エクスカリバーが立ち上がる。


「だが、お前は王を守ることそのものに誇りを持っている」


「……ああ」


「ならば――」


エクスカリバーが拳を握る。


「俺の敗北だ」


アロンダイトが剣を下ろした。


直後。


『勝者――――』


実況の声が会場中に響き渡る。


『アロンダイトォォォォォッ!!』


爆発するような歓声。


アロンダイトは振り返らない。


ただ静かに、自分の手にある剣を見つめる。


「……俺は、王を守る剣だ」


誰に聞かせるでもなく、呟いた。


その声は、歓声にかき消された。


こうして――。


世界最強の武器を決める戦い。


『Last War』Weapons’ Tournament。


その最初の一振りが、舞台から去った。

お疲れ様でした。

読んで下さり感謝致します。


話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。

更新時間:毎日12:00となっております。

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