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19/33

第十九試合 太古と未来

作品は完結させております。

安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。


たくさんのブックマーク、評価、コメント。

また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。


よろしくお願いします。それではどうぞ!


第二回戦、第三試合。


アロンダイトとミョルニル。


方天戟と天羽々斬。


二つの激戦を終え、闘技場には再び静かな緊張が漂っていた。


観客たちは、次に姿を現す武器を待ち構えている。


『さあ! 続いて第二回戦、第三試合です!!』


実況の声が響き渡る。


『ここで激突するのは――!』


巨大スクリーンに、二つのシルエットが映し出された。


一つは、飾り気のない石剣。


そしてもう一つは、細身の刃。


その刀身から、微かな振動音が響いている。


『第一回戦で、魔槍ブラダマンテを破った謎の武器――!』


観客席がざわめく。


『名前――なし!』


「またか!」


「名無しの剣だ!」


「正体不明のまま勝ち上がってるぞ!」


実況が続ける。


『対するは、第一回戦で聖槍ロンギヌスを破り、自らその名を得た武器!』


『科学の力を宿す超音波振動ブレード――ソニックブレード!!』


「おおおおおっ!!」


会場が沸いた。


二つの入場口から、二人の男が姿を現す。


名無し。


そして――ソニックブレード。


ソニックブレードはいつものように気軽な足取りで歩いてくる。


一方の名無しは、無言のまま舞台へ向かっていた。


二人が中央で向かい合う。


ソニックブレードが、名無しを見て笑った。


「よお、名無し」


「……ああ」


「また会ったな」


「そうだな」


ソニックブレードは、名無しの顔を見つめ尋ねる。


「相変わらず、名前はないんだな」


「……ない」


「そっか」


ソニックブレードは肩をすくめる。


「まあ、俺も最初はなかったけどな」


名無しがソニックブレードを見る。


「お前は、自分で付けた」


「そうそう」


ソニックブレードは笑う。


「ソニックブレード。いい名前だろ?」


「……ああ」


「なら、お前もそのうち決まるって」


名無しは答えなかった。


自分の名前。


その言葉を聞くたびに、胸の奥がざわつく。


何かを忘れている。


何かを知っている。


それなのに――。


思い出せない。


『両者、宝珠を!』


二人が同時に宝珠を手に取った。


『戦闘武器――顕現!!』


光が弾ける。


ソニックブレードの手に、細身の刃が現れた。


ヴィィィィィン……。


低い振動音。


刀身が高速で振動している。


ソニックブレードは刃を眺め、満足そうに笑った。


「今日も絶好調!」


対する名無し。


その手に現れたのは、第一回戦と同じ石剣だった。


無骨で、何の装飾もない。


名無しはそれを握る。


「……また、これか」


ソニックブレードが苦笑した。


「いやあ……」


刃を肩へ担ぐ。


「俺の未来科学ブレードと、その石剣か」


「……」


「なんか、時代が違いすぎない?」


名無しは石剣を見つめた。


「……俺にも分からない」


「だよな」


ソニックブレードは笑った。


「じゃあ――」


刃を構える。


「その石器、壊してみるわ」


名無しも剣を構えた。


「……来い」


『それでは――!』


会場が静まり返る。


『第二回戦、第三試合――』


一瞬。


『開始!!』


鐘が鳴った。


同時に――。


ソニックブレードが消えた。


「――ッ!」


次の瞬間。


ギィィィン!!


名無しの剣とソニックブレードの刃が激突した。


「速い……!」


名無しが押し返される。


ソニックブレードはそのまま横へ回り込む。


「ほら!」


横薙ぎ。


名無しが石剣で受ける。


ギィン!


「くっ!」


「第一回戦より、ちょっと本気でいくぞ!」


再び踏み込む。


一撃。


二撃。


三撃。


ソニックブレードの刃が閃く。


名無しは必死に受け流す。


だが、速度が違う。


「そこ!」


刃が名無しの肩を掠めた。


「……っ!」


服が裂ける。


名無しは距離を取る。


ソニックブレードは追撃する。


「どうした?」


「……」


「その剣、ブラダマンテには勝ったんだろ?」


名無しは石剣を握り直す。


「そうだ」


「じゃあ――」


ソニックブレードが笑う。


「俺にも勝ってみろよ!」


踏み込む。


ヴィィィィィン――!!


振動音が一気に高くなる。


「な……!」


ソニックブレードの刃が石剣へ叩き込まれた。


――ギギギギギギッ!!


石剣の表面に細かな亀裂が走る。


名無しの目が見開かれる。


「……!」


「これが超音波振動!」


ソニックブレードが押し込む。


「硬いものでも、内部から壊せるんだよ!」


名無しは両手で石剣を支える。


「ぐっ……!」


「もう一段!」


ソニックブレードの出力が上がる。


ヴィィィィィィィィン!!


「――砕けろ!」


――バギィィィン!!


石剣が砕け散った。


破片が床へ落ちる。


カラン。


カラン。


カラン。


名無しの手には――何も残っていない。


静寂。


「……」


名無しは、自分の手を見つめた。


実況が叫ぶ。


『名無し選手の武器が破壊された!!』


観客席からどよめきが起こる。


「石剣が砕けたぞ!」


「武器を失った!」


『これは戦闘続行不能か!?』


実況が声を張り上げる。


『ソニックブレード選手の勝利――』


「まだだ!」


突然、ソニックブレードが叫んだ。


実況が止まる。


『……え?』


ソニックブレードは、名無しを見つめていた。


「まだ終わってねえ!」


「……?」


名無しも自分の手を見る。


そのときだった。


砕けた石剣。


その中心から――。


何かが光った。


「……何だ?」


破片が崩れ落ちる。


その中から一本の刀身が姿を現した。


細く、長い。


しかし通常の金属とは明らかに違う。


黒とも銀ともつかない、不思議な色。


光を受けるたび、内部から星空のような輝きが浮かび上がる。


名無しは、それを握った。


「……」


ソニックブレードの顔から笑みが消える。


「おいおい……」


刀身を見つめる。


「そんな隠し玉、持ってたなんてね……」


名無しは首を横に振る。


「……俺は知らない」


「は?」


「なぜ、これが出てきたのか……俺にも分からない」


ソニックブレードは目を細めた。


「マジかよ」


名無しは新たな剣を見つめる。


握った感触。


重さ。


冷たさ。


どれも知らないはずなのに――。


なぜか手に馴染んでいた。


「……これを、俺は知っている」


「また記憶か?」


「……分からない」


ソニックブレードは肩を回した。


「まあいいや」


再び刃を構える。


「なら、もう一回壊すだけだ!」


『試合続行!!』


ソニックブレードが駆ける。


「いくぞ、名無し!!」


名無しも構えた。


「……来い!」


二人が激突する。


ガァン!!


ソニックブレードの刃が、新たな剣へ叩き込まれる。


ギギギギギギ――!!


だが。


「……なに?」


ソニックブレードの目が見開かれた。


傷がない。


亀裂すらない。


「嘘だろ……」


名無しの剣は、微動だにしていなかった。


「俺の振動を……受け止めてる?」


ソニックブレードは一度距離を取る。


「じゃあ、出力を上げる!」


刃の振動音が変わる。


ヴィィィィィィィィィン!!


「まだだ!」


踏み込む。


「これでも――!」


斬撃。


名無しが受ける。


ギィィィィィン!!


火花が散る。


だが――。


刀身には何の傷もない。


「くっ……!」


ソニックブレードがさらに出力を上げる。


「だったらもっと!」


ヴィィィィィィィィィィィン!!


「もっとだ!!」


名無しが押される。


だが剣は折れない。


「なんでだよ……!」


ソニックブレードの額に汗が浮かぶ。


「なんで壊れないんだ!?」


名無しも困惑していた。


「……俺にも分からない」


「お前、そればっかだな!」


ソニックブレードは笑った。


だが、その笑顔にも余裕がなくなっている。


刀身から異常な熱が発生し始めた。


「……あれ?」


ヴィィ……。


振動音が一瞬途切れる。


「おい……」


ソニックブレードが自分の武器を見る。


「ちょっと待て」


刃が赤く熱を帯び始めた。


「マジかよ……」


「どうした?」


「出力、上げすぎた……」


ヴィィィィ……。


音が不安定になる。


「冷却が追いついてない」


「……」


「このままだと――」


突然。


ブツン!!


音が消えた。


ソニックブレードの刃が完全に停止する。


「……あ」


会場が静まり返る。


ソニックブレードは刃を軽く振る。


反応がない。


「……死んだ」


実況が戸惑う。


『ソニックブレード選手の武器が――停止!?』


「……完全にオーバーヒートだな」


ソニックブレードは苦笑した。


「まいった」


名無しは剣を下ろす。


「まだ戦える」


「いや」


ソニックブレードは首を振った。


「武器がこれじゃ、俺は戦えない」


そして――。


「俺の負けだ」


会場がどよめく。


『ソニックブレード選手――』


一拍。


『降参を宣言!!』


歓声が爆発した。


『勝者――!!』


実況が叫ぶ。


『名無し!!』


大歓声。


名無しは、歓声の中でただ自分の剣を見つめていた。


「……俺が?」


その刀身は、静かに光を返している。


――――


試合後。


控室へ戻る途中。


ソニックブレードが名無しを呼び止めた。


「なあ」


「何だ?」


「ちょっと、その剣見せてくれよ」


名無しは剣を差し出す。


ソニックブレードは両手で持ち、あちこちから刀身を眺める。


「うーん……」


「……」


「やっぱ変だな」


刀身を指で軽く弾く。


キィン――。


澄んだ音が響いた。


「普通の鉄じゃない」


「……」


「俺の振動でも傷一つつかなかったし」


ソニックブレードは刀身をじっと見つめる。


そして――。


「これってさ」


名無しを見る。


「隕石で作られた剣じゃね?」


「……隕石?」


名無しが呟く。


その言葉。


その響き。


なぜか胸の奥に引っかかった。


「隕石……」


ソニックブレードは笑う。


「そうそう。宇宙から落ちてきた石」


名無しは刀身を見る。


「……」


何も思い出せない。


だが――。


頭の奥で、一瞬だけ光が走った。


暗い空。


燃える何か。


そして、遥か彼方から落ちてくる巨大な光。


「……っ」


名無しが目を閉じる。


しかし、その映像はすぐに消えた。


「どうした?」


「……いや」


名無しは首を振った。


「何でもない」


ソニックブレードはニヤリと笑う。


「じゃあさ」


「?」


「名前、決めようぜ」


名無しが顔を上げる。


「名前……」


「そう!」


ソニックブレードは刀身を指差した。


「隕石みたいな剣なんだろ?」


「……分からない」


「いいじゃん、分からなくても」


ソニックブレードは腕を組んで考える。


「隕石……宇宙……流星……」


そして。


「決めた!」


名無しを見る。


「メテオスラッシュ!」


「……」


「どうよ!」


名無しは何も言わない。


ソニックブレードは笑った。


「俺が勝手につけた!」


「……勝手に?」


「そう!」


ケラケラと笑いながら歩き出す。


「じゃあな、名無し!」


少し離れたところで振り返る。


「いや――」


ニッと笑う。


「メテオスラッシュ!」


そのまま、ソニックブレードは手を振りながら控室の奥へ消えていった。


名無しは一人、その場に残された。


手の中の剣を見る。


「……メテオスラッシュ」


その名前を、ゆっくりと口にする。


不思議だった。


自分で決めた名前ではない。


正式な名前でもない。


ただ、ソニックブレードが勝手につけただけの名前。


それなのに――。


「……嫌じゃない」


刀身が、淡く輝いた。


名無しはその光を見つめる。


そして初めて。


自分の剣を呼ぶための言葉を、手に入れた。


メテオスラッシュ。


それが本当の名前なのかは、まだ誰にも分からない。


ただ――。


太古の記憶を宿す名無しの剣と、未来の科学を宿すソニックブレード。


その戦いは、確かに一つの名前を残した。


そして、名無しの過去は。


また一歩だけ、現在へ近づいた。

お疲れ様でした。

読んで下さり感謝致します。


話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。

更新時間:毎日12:00となっております。

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