第十六試合 クールタイムとダイジェスト
作品は完結させております。
安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。
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また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。
よろしくお願いします。それではどうぞ!
第一回戦、全十五試合が終わった。
闘技場に満ちていた歓声は、まだ完全には消えていない。
しかし舞台の照明は落とされ、代わりに控室エリアの明かりが灯り始めていた。
『――第一回戦を勝ち抜いた十五振りの皆様、お疲れ様でした!』
実況の声が、これまでとは違う穏やかな調子で響く。
『第二回戦開始までの間、しばしのクールタイムに入ります』
会場の巨大スクリーンに、大きな文字が浮かび上がった。
『次回までの――ダイジェスト!』
映像が流れ始める。
エクスカリバーが弾き飛ばされる瞬間。
ミョルニルが吠えながら踏み込む瞬間。
方天戟の一撃で蜻蛉切が崩れ落ちる瞬間。
天羽々斬の刃がバルムンクの剣を砕く瞬間。
名も無き剣が、迷いながらもブラダマンテを打ち破る瞬間。
十五の激突が、次々と早送りで映し出されていく。
観客席からは、思い出したように歓声や拍手が上がった。
――――
控室の一角。
アロンダイトは壁に寄りかかり、静かに目を閉じていた。
「……勝ったな」
隣の椅子に、ミョルニルが荒々しく腰を下ろす。
包帯を巻いた腕を軽く回しながら、笑った。
「お互いにな」
アロンダイトは薄く目を開けた。
「お前は無茶な戦い方をする」
「褒め言葉として受け取っとくよ」
ミョルニルはニヤリと笑い、そのまま天井を見上げる。
「なあ、お前はさ」
「何だ」
「王を守るために戦ってるんだろ」
アロンダイトは少し間を置いてから答えた。
「そうだ」
「俺には、それがよく分からねえんだよな」
ミョルニルは自分の拳を見つめる。
「俺が何のために戦ってきたのか……最近、うまく思い出せねえ」
その言葉に、アロンダイトは何も言わなかった。
ただ、静かにミョルニルを見つめていた。
――――
別の一角。
デュランダルは、傷だらけの身体を椅子に預けていた。
治療用の光が身体を包み、傷が少しずつ癒えていく。
その横に、ゲイ・ボルグが音もなく現れた。
「……お前もか」
デュランダルが目だけを向ける。
「治療中に話しかけるとは、無粋な奴だ」
「そうか」
ゲイ・ボルグは椅子に座らず、壁際に立ったままだった。
「お前の戦い方は――気に入った」
「ほう」
「何度倒れても立つ。俺の武器と似ている」
デュランダルが薄く笑う。
「お前のは、一度刺せば十分なんだろう」
「ああ」
「俺のは、何度でも立ち上がるだけだ」
二人の間に、しばらく沈黙が流れた。
「――次の相手が誰か、知っているか」
ゲイ・ボルグが問う。
デュランダルは目を閉じた。
「まだ聞いていない」
「そうか」
ゲイ・ボルグはそれ以上何も言わず、静かにその場を後にした。
――――
一方、控室のモニター前。
名も無き剣は、一人でスクリーンを見つめていた。
映し出されているのは、自分自身の戦いの映像。
ブラダマンテの槍を弾いた瞬間。
自分でも覚えのない動きだった。
「……俺は」
画面の中の自分を見つめる。
その表情は、まるで他人のもののように見えた。
「勝った理由すら、俺には分からない」
そのとき。
背後から声がかかった。
「一人で難しい顔してるじゃん」
振り返ると、ソニックブレードが立っていた。
肩に担いだ刃を軽く揺らしながら、気軽な調子で近づいてくる。
「あんたが例の、名前なしの剣だろ?」
「……ああ」
「俺もついこの前、自分で名前つけたばっかだからさ」
ソニックブレードは笑いながら隣に座った。
「なんか、他人事に思えなくて」
名も無き剣は、少しだけ視線を上げた。
「お前は……迷わなかったのか」
「迷ったよ、めちゃくちゃ」
ソニックブレードは肩をすくめる。
「でもさ、名前なんて後からついてくるもんだって、誰かが言ってた気がすんだよな」
「誰かって?」
「さあ? 忘れた」
軽い口調だった。
だが、その言葉は名も無き剣の胸に、小さく残った。
「……名前は、後からついてくる、か」
呟くように繰り返す。
その瞬間、また頭の奥で何かが微かに光った。
燃える戦場。
誰かの声。
そして――名前らしき響き。
だが、すぐに消える。
「……くそ」
名も無き剣は頭を振った。
ソニックブレードが横目で見る。
「大丈夫か?」
「……いや、何でもない」
――――
そのころ、闘技場のスクリーンには、次の対戦カードが次々と映し出されていた。
第二回戦
アロンダイト 対 ミョルニル
方天戟 対 天羽々斬
ゲイ・ボルグ 対 デュランダル
名も無き剣 対 ソニックブレード
ケラウノス 対 パラシュ
イージス 対 打出の小槌
デスサイズ 対 燭台切光忠
アポピス 対 シード枠
観客席がどよめいた。
「おいおい、名無しの剣とソニックブレードが当たるのかよ!」
「両方とも、名前絡みの因縁があるってことか……?」
「アロンダイトとミョルニルって、さっき仲良さそうにしてなかったか?」
会場の熱気は、休憩に入ってもなお冷めることがなかった。
『――さあ、第二回戦の組み合わせが決定いたしました!』
実況の声が響き渡る。
『クールタイムは、まもなく終了です!』
控室のあちこちで、武器たちがそれぞれの相手の名を確認していく。
ある者は静かに闘志を燃やし。
ある者は不敵に笑い。
ある者は――まだ何も分からないまま、ただ拳を握りしめていた。
名も無き剣は、対戦カードに刻まれた自分の相手の名を見つめる。
「ソニックブレード……か」
隣に座ったままの当人が、にっと笑った。
「よろしくな、名無し」
「……ああ」
短く答えながらも、名も無き剣の胸には、まだ晴れない靄が残っていた。
自分が何者なのか。
その答えは、まだ遠い。
だが――。
戦いの中でしか、見つけられないものがあることを、彼はすでに知り始めていた。
こうして――。
短いクールタイムは終わりを告げ。
十五振りの武器たちは、再び舞台へと向かう準備を始める。
第二回戦。
その幕が、静かに上がろうとしていた。
お疲れ様でした。
読んで下さり感謝致します。
話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。
更新時間:毎日12:00となっております。




