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第十五試合 追う刃と絡む蛇

作品は完結させております。

安心してラストまでお楽しみ頂ければ幸いです。


たくさんのブックマーク、評価、コメント。

また誤字・脱字報告も全て受け付けしております。


よろしくお願いします。それではどうぞ!


第十四試合。


雷霆と金剛。


神話を代表する二つの雷が激突した戦いを制したのは、ケラウノスだった。


その余韻が残る闘技場。


しかし――。


まだ終わってはいない。


『さああああ!!』


実況の声が響き渡る。


『第一回戦も、いよいよ最後!!』


観客席から大歓声が巻き起こる。


『第一回戦、第十五試合!!』


最後の一戦を待ちわびていた観客たちが、一斉に立ち上がる。


『この試合が終われば、第一回戦に出場した三十振り、その全てが戦いを終えることになります!!』


闘技場の左右。


二つの入場口が開く。


そこから二人の人影が姿を現した。


一人は、黒髪を短く整えた青年。


細身ではあるが、その身体には無駄がない。


静かな表情。


しかし、その瞳には鋭い光が宿っている。


もう一人は――。


長い黒髪。


褐色の肌。


鋭い目つき。


その身体からは、獲物を狙う獣のような気配が漂っている。


二人が中央へ歩み寄る。


『最後の一戦を飾るに相応しい、非常に珍しい武器が登場します!!』


実況の声が響く。


『まずは――こちら!!』


青年が宝珠へ手を伸ばす。


光が弾ける。


青年の手へ、一つの巨大な武器が現れた。


それは――。


翼のように湾曲した形状。


両端から鋭い刃が伸びている。


大型ではある。


しかし、両手で扱うほど巨大ではない。


投げれば空を切り裂き、回転しながら戻ってくることを想像させる形状。


『刃付きの巨大ブーメラン!!』


観客席からどよめきが起こる。


『その特殊な形状から、投擲だけではなく、斬撃武器としても使用可能!!』


青年がブーメランを軽く回す。


ブンッ。


風を切る音。


『そして、それを操るのが――』


実況が声を張り上げる。


『シャルル!!』


シャルルはブーメランを肩へ担いだ。


「よろしく」


観客席から歓声が上がる。


実況は続ける。


『ただ投げて戻ってくるだけのブーメランではありません!!』


シャルルがブーメランを軽く放る。


ブーメランは空中へ飛び――。


突然、軌道を変えた。


『なっ!?』


実況の声が上ずる。


ブーメランが空中で急旋回。


シャルルの背後を通り抜ける。


そして――。


シャルルの手へ戻ってきた。


『自由自在に軌道を変える、超高精度の投擲武器!!』


シャルルは何事もなかったように受け止める。


『続いて――対するはこちら!!』


もう一人が宝珠へ手を伸ばした。


光が弾ける。


現れたのは――。


一本の鎖。


無数の金属の輪が連なった、長大な鎖だった。


鎖が地面へ落ちる。


ジャラ……。


『こちらは――鎖!!』


観客席からどよめきが起こる。


『単純な武器に見えるかもしれません!!』


アポピスが鎖を手に取る。


「……」


その瞬間。


鎖が蛇のように動いた。


ジャラララッ!!


空中へ跳ね上がり、螺旋を描く。


『しかし!!』


実況が叫ぶ。


『この鎖を操るのは――アポピス!!』


アポピスが鎖を振る。


鎖が空中で複雑な軌道を描く。


『その操作技術はまさに神業!!』


鎖が地面を這う。


右へ。


左へ。


そして――。


突然、シャルルへ向かって伸びた。


『速い!!』


シャルルが横へ跳ぶ。


鎖がその足元を掠める。


「……!」


シャルルが目を細める。


アポピスは静かに鎖を引く。


ジャラッ。


鎖が手元へ戻ってくる。


『追尾しているように見えるほど正確な鎖捌き!!』


観客席が沸き上がる。


『まるで自動追尾する鎖のようです!!』


アポピスは何も答えない。


ただ、鎖を構え直す。


シャルルもブーメランを構える。


『逃げながら敵を切り裂く刃!!』


『逃げる相手をどこまでも追い、捕らえる鎖!!』


実況が叫ぶ。


『第一回戦最後の試合――!!』


二人が構える。


『シャルル!!』


『アポピス!!』


一瞬の静寂。


『試合――開始!!』


シャルルが先に動いた。


「――ッ!」


ブーメランを投げる。


「行け!」


ブーメランが高速回転しながら飛翔する。


アポピスは動かない。


「……」


鎖を振る。


――ジャラァッ!!


鎖が飛ぶ。


ブーメランと鎖が空中で交差した。


――ガキィン!!


火花が散る。


ブーメランが弾かれる。


しかし。


その瞬間。


シャルルが手首を返した。


ブーメランの軌道が変わる。


「そこだ!」


ブーメランが大きく旋回。


アポピスの背後へ回り込む。


「……」


アポピスが鎖を引く。


鎖が空中で方向を変えた。


――ガキィン!!


ブーメランを弾き飛ばす。


観客席から歓声が上がる。


『すごい!!』


『両者とも、武器そのものが意思を持っているかのような操作です!!』


しかし。


違う。


ブーメランを動かしているのはシャルル。


鎖を動かしているのはアポピス。


二人の技術だった。


シャルルが走る。


ブーメランを投げる。


一つ。


二つ。


三つ。


いや。


ブーメランは一つしかない。


だが――。


投げて。


弾かれ。


戻る。


その一瞬で再び投げる。


複雑な軌道を描き続ける。


まるで三つの刃が飛び交っているようだった。


「くっ……!」


アポピスが鎖を振る。


鎖が空中を走る。


ブーメランを追う。


しかし。


ブーメランは急旋回。


鎖をかわす。


「逃がすか」


アポピスが腕を振る。


鎖が地面へ落ちる。


――ガシャン!


次の瞬間。


地面を這うようにシャルルへ迫った。


「――ッ!」


シャルルが跳ぶ。


鎖が足元を通過する。


そのまま背後へ伸びる。


「危ない!」


観客席から声が上がる。


しかしシャルルは空中で身体を捻った。


同時に。


「戻れ!」


ブーメランが戻ってくる。


シャルルの手へ。


そのまま振り抜く。


――ガキィン!!


鎖を弾き飛ばす。


「やるな」


シャルルが笑う。


「そっちこそ」


アポピスが答える。


そして――。


二人が同時に走った。


シャルルがブーメランを投げる。


アポピスが鎖を放つ。


空中で二つの武器が交差する。


――ガキィン!!


――ガァン!!


――ギィン!!


ブーメランと鎖。


刃と拘束。


何度もぶつかり合う。


それでも。


決着はつかない。


「なら――」


シャルルが距離を取る。


「これでどうだ!」


ブーメランを大きく振りかぶる。


そして――。


投げる。


ブーメランが飛ぶ。


真っ直ぐ。


アポピスへ。


「……」


アポピスは避けない。


鎖を構える。


「捕らえる」


鎖が飛ぶ。


ブーメランへ絡みつく。


――ガシャン!!


「取った!」


アポピスが鎖を引く。


しかし。


シャルルは笑った。


「それは――」


ブーメランが急旋回。


「囮だ!」


鎖に絡んだまま。


ブーメランがアポピスの横を通過する。


そのまま背後へ。


「――ッ!」


アポピスが振り返る。


ブーメランが戻ってくる。


シャルルの手へ――。


その直前。


アポピスが鎖を放した。


「なに!?」


鎖がシャルルへ向かう。


「しまっ――!」


ジャララララッ!!


鎖がシャルルの腕へ絡みつく。


さらに身体へ。


一周。


二周。


三周。


瞬く間に全身を拘束する。


「ぐっ……!」


シャルルがブーメランを落とす。


カランッ。


アポピスが鎖を引く。


「捕らえた」


シャルルの身体が引き寄せられる。


しかし――。


「まだだ!」


シャルルが叫ぶ。


「俺のブーメランは――」


アポピスの目が見開かれる。


落ちたはずのブーメラン。


それが――。


地面すれすれを飛んでいた。


「……!」


ブーメランが大きく旋回。


アポピスの背後へ回り込む。


「戻ってくるんじゃない」


シャルルが笑う。


「戻すんだ!」


ブーメランが加速する。


アポピスへ迫る。


「――ッ!」


アポピスが鎖を引きシャルルを盾にする。


ブーメランが急旋回。


シャルルの身体を避ける。


そして――。


アポピスの背後から迫る。


「くっ!」


アポピスが振り向きながら鎖を放つ。


しかし。


遅い。


ブーメランの刃が――。


アポピスの肩を捉えた。


――ザンッ!!


「ぐっ!!」


アポピスがよろめく。


その瞬間。


シャルルが身体を捻る。


鎖の拘束が一瞬緩んだ。


「今だ!!」


シャルルが力任せに抜け出す。


そして。


戻ってきたブーメランを掴む。


「終わりだ!!」


アポピスが鎖を構える。


「……まだだ」


鎖が飛ぶ。


シャルルもブーメランを投げる。


二つの武器が一直線に交差する。


――――ガァン!!


ブーメランが鎖を弾く。


そのままアポピスへ。


「――ッ!」


アポピスが避ける。


ブーメランが通り過ぎる。


「終わったと思ったか?」


シャルルが笑う。


ブーメランが大きく旋回する。


アポピスの背後へ。


「……!」


しかし。


アポピスも笑った。


「そう思わせた」


鎖が伸びる。


ブーメランへではない。


シャルルへ。


「――なっ!?」


鎖がシャルルの身体へ絡みつく。


「しまっ……!」


一瞬。


二瞬。


三瞬。


完全に拘束された。


「今度こそ――」


アポピスが鎖を引く。


「逃がさない」


シャルルの身体が地面へ叩きつけられる。


――ドゴォン!!


ブーメランが地面へ落ちる。


カラン――。


静寂。


シャルルは立ち上がろうとする。


しかし。


鎖は緩まない。


「くっ……!」


アポピスは鎖を握り締める。


「お前のブーメランは速い」


「……」


「だが――」


鎖を引く。


「俺の鎖は、お前より速い必要はない」


シャルルが顔を上げる。


「……何?」


アポピスが静かに言う。


「逃げ道を全部塞げばいい」


シャルルの目が見開かれる。


その言葉通り。


鎖はただシャルルを拘束しているだけではなかった。


地面。


空中。


背後。


左右。


全ての逃げ道を予測するように配置されている。


まるで――。


巨大な蛇が獲物を完全に包囲しているかのようだった。


シャルルはしばらく鎖を見つめ――。


やがて笑った。


「……参った」


鎖から力が抜ける。


アポピスが鎖を引き戻す。


ジャラ……。


そして。


『勝負あり!!』


実況の声が闘技場へ響き渡った。


『第一回戦、第十五試合!!』


観客席から歓声が巻き起こる。


『勝者――!!』


アポピスが静かに立つ。


『アポピス!!』


大歓声。


第一回戦最後の勝者が決まった。


シャルルは地面へ座り込みながら、苦笑する。


「いやぁ……」


自分のブーメランを見る。


「最後まで追いつけなかったな」


アポピスは鎖を肩へ掛ける。


「お前の刃も見事だった」


「そりゃどうも」


シャルルが笑う。


その瞬間。


闘技場全体から、これまでで最大の歓声が巻き起こった。


『これにて――!!』


実況が叫ぶ。


『第一回戦、全十五試合!!』


『全て終了です!!』


闘技場を揺らす大歓声。


三十振り。


三十の伝説。


そして――。


勝ち残った武器たち。


第一回戦を終え、次なる戦いへ進む権利を手にした者たちが、静かにその場へ立っていた。


第一回戦。


最後に勝利を掴んだのは――。


アポピスだった。

お疲れ様でした。

読んで下さり感謝致します。


話数は少ないので更新は一日一話の更新となります。

更新時間:毎日12:00となっております。

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