ユルの野望と、現在の旅路
かつて魔導士ユルには、壮大な夢があった。それは、相棒の精霊獣(愛猫)タマンを連れて、魔導移動要塞(超豪華な魔導馬車)で広大な日ノ本の国を巡り、己の魂が本当に安らぐ「約束の地」を見つけることだった。
旅の途中、ユルが最近傾倒している「星読みの聖地」で行われる修練合宿にも、タマンを連れて参加するつもりだ。かつてタマンを癒しの教会へ一晩預けた際、環境の変化に怯えて一切の食事を口にしなくなった苦い経験がある。だからこそ、夜は宿屋に泊まるのではなく、住み慣れた魔導馬車の中でタマンと共に眠りたいのだ。
なお、この聖地での合宿修練は、ユルが日々行う「星読みの啓示(スピリチュアル配信)」の魔力を高め、その精度を飛躍的にアップさせるために不可欠な試練でもある。
当初は1000万ゴールドもする、王族仕様の豪華な魔導要塞を夢見ていたユルだったが、そんな大金はどこをひっくり返しても出てこない。そこでユルは現実を見つめ直し、計画を切り替えた。今は、小さな「乗用魔導小馬車(軽キャンピングカー)」の中古を手に入れ、壊れた魔導回路を自分で修理しながら、身の丈に合った旅を始めようと画策している。
ユルが日々紡ぐ、街での「六つの修練」
果てなき旅の資金を稼ぐ本業の傍ら、ユルは来るべき旅立ちに向けて、毎日欠かさず以下の「日課」をこなしている。
1. 幻影劇(アニメ・映画)の伝令鳥飛ばし
街で上映される「異界の幻影劇」の情報を、毎日一通、伝令鳥で人々に発信し続けている。少し前までは幻影劇専門だったが、最近は長編の「大幻影活劇(映画)」の魅力にも目覚め、その噂も一緒に届けるようになった。
2. 吟遊詩人の調べ(Jazz)の空中歌
ユルが愛してやまない、大人の哀愁漂う旋律「ジャズの調べ」を、毎日一曲、街の拡声魔導器で響かせている。近々、より遠くの街まで音が届く「新たなる魔導拡声スタンド」を急ぎ設置する予定だ。
3. 吟遊文学(小説)の連載
一話で綺麗に結末を迎える短い物語を、毎日一話、街の大図書館の掲示板(「カクヨムの壁」「小説家になろうの掲示板」)に貼り出している。
4. 星読みの啓示(スピリチュアルnote)
日々の気づきや星の教えを、短い言葉の魔術「つぶやきスクロール」にして、毎日一つ、情報伝達ギルド(note)から発信している。将来、聖地での合宿を終えればさらに精度が増す予定のこの啓示だが、現在の受信者が200人を超え、一か月の閲覧数が2000回に達した暁には、一度だけ「禁断の有料魔導書(有料記事)」を販売してみようと目論んでいる。
5. 持ち物の「無」への還元
将来の小馬車生活を見据え、身軽になるための儀式。毎日必ず「一つ」の私物、または魔導通信機内の魔法陣や通信の魔石(連絡先)を破棄している。さらに、記録の水晶に保存された過去の幻影(写真)も、毎日5枚ずつ消去している。これは、来たるべき旅の省スペース化への完璧な前修練となっている。
6. 肉体の鍛錬と、日々の行軍
かつては高名な「鬼教官」を雇い、肉体を限界まで追い込む過酷な筋力修練に励んでいたが、現在はその大掛かりな鍛錬を一時的に休止している。しかし、決して怠惰に流されたわけではない。その代わりとして、毎日、本業のギルド(会社)へと続く道を、片道一時間半かけて、黙々と徒歩で行軍(通勤)しているのだ。
小さき魔導馬車に夢を乗せ、不要なものを削ぎ落としながら、ユルとタマンの「約束の地」を探す旅の準備は、今日も一歩ずつ進んでいる。




