生命ある者たち その4
ブリューゲルはティーネの様子を確認した後、一人で船の動力部を通り抜けた。その仕組みは、ブリューゲルが直接携わった。
瘴気を動力として動いており、結晶石がエネルギーへと変換する役割を担っている。その画期的な発明だけでも、利権を得ようと彼に接触しようと言う者が後を絶たないというほどに注目されていた。
(彼らはいつまで、争っているのだろうな)
ブリューゲルがこれを生み出したのは、単に瘴気を消そうとしたからだ。研究の傍ら、耳に入ってくるのは確実に世界を侵食する脅威が未だに我々を脅かしているということだけ。
その権力が無意味だと論じるつもりはなかったが、それでもその体制によって動きが鈍いと言わざるおえない。まさに、足の引っ張り合いだとでもいうように危機が目の前にあったとしても、それが目に入るまで彼らはそれを続けるのだろう。
ただ、瘴気が何も与えてくれないわけではなかった。瘴気がもたらす可能性を、ブリューゲルもまた欲していた。
そして、まさにその奇跡をブリューゲルは得られるあと少しのところまで来ていた。こうして関係者以外が入れないはずの通路で、ブリューゲルは背後を振り向いた。
「こんなところまで入ってきて、私に用でもあるのか?」
出てきた者たちは皆、聖職者の服を来ていた。
「少し道に迷ってしまいましてね。そういう貴方も、どちらへ行くおつもりか、聞いてもよろしいか?」
「……私はこの動力炉、私の作品を確認しに来ただけだ。不備があれば、整備できる者はごく僅かだからな」
「なるほど。しかし、上ではまだ饗宴も続いている様子。気が向かれたのなら行ってみては?」
「そんな気分ではない」
その一言で空気が変わる。
聖職者がブリューゲルを鋭い視線で見つめていた。
「ところで話は変わるのですが、我々には大切にしていた方がいましてね。しかし、大人しいと思っていたあの方は不埒者に拐かされて何処かに消えてしまったのです」
「そうか、私はお前たちのように遠い海から来たのではないからな。そういった事情は知らなかった」
「ええ、知らないのかもしれませんね。ただ、彼らも簡単には逃げられません。……そう、協力者がいないことには──」
聖職者は背後に合図を出した。
それを汲み取って、数人がブリューゲルへと襲いかかる。
「……私はただの学者なのだが」
ブリューゲルは懐から中折式散弾銃を取り出して、刺客たちと応戦を始めた。




