生命ある者たち その2
ワイングラスを交わす音が響き合う。
深まる夜の中でも饗宴は続く。
黄金のように眩く煌めき、酔いしれる夢見心地の中でさらなる夢を見ようとする。
「おや、奇遇ですな。ここで会うことになるとは」
パーティーが始まり、どう動こうかと考えていると以前出会った貴族の男性にティーネは声をかけられた。
「ええ、珍しく兄から誘われて」
どうしてか、その目の鋭さは以前出会った時よりも輝いている。もしくは、こちらが本来の姿なのかもしれないとティーネは感じた。
「兄君がこの船に? ……ふむ、そうですか。なら、あちらに行く方がよろしいかと。シュトラウス殿がいますからね」
その言葉で何かを確信した笑みを深める。
「貴方はどうするの?」
男は何かの荷が降りたかのように、清々しい表情をしていた。
「気を見てそちらへ向かいますよ。まだやることがあるので」
ティーネが離れたのを見て、男は小さく呟いた。
ここからが男にとっての最後のダメ押しと、シュトラウスたちとは反対側に歩いていく。
「立場がなければ人は従わないというのに、それに足を取られては身動きを取りづらくなってくる。本当に、ままならぬものですね」
*
誰が何を企んでいるのか。
ティーネはそれを確かめるしかなかった。
しかし、直接口から聞ける人は少ない。
「……」
打てる手はあまりにも少ない。
そういった伝手を作らなかったのは、まさかこんな状況に放り込まれることを想像していなかったからだ。
ティーネは朝にブリューゲルに会ってから、まともに食事が喉を通らなかった。
「──っ、けほっ」
仕方なく、取ってきたパンを口にいれると、喉にパンが詰まった。慌てて近くにあるグラスを手に取って流し込んで何とか嚥下した。
しかし、次には別のことに襲われた。
「は、はれ?」
ぐわんぐわんと視界が揺れている。
おかしいな、と思ってティーネは飲んだグラスを見ると自分の持っていたものではなかった。ワインなんて一度も飲んだことはない。
こんなに失態が連続するのかと混乱しながら、何とか体をテーブルで支えようとするが酷い酩酊感で足腰が立たなくなった。
みんながこちらを見ている。
しかし、頭では分かっていても表情がにへらとだらしなく笑ってしまう。
「うふふ…えへへ」
慌てて誰かが肩を担いで、パーティーから退出していった。




