出会い
パーティーには、多くの人が集まっていた。
ドレスやアクセサリーは当たり前で、その会場として招かれた屋敷の絢爛さや窓から見える庭園にはどれほどお金がかけられているのか。その空気に圧倒されて、コハクは少し気後れしていた。
「適当に回ればいい」
そう言って去ろうとする師匠の裾を、コハクは引き留めた。
「いや、いい。ここはよく分からないし、下手に恥をかきたくないから。……師匠はいつもの服装で、よく堂々と歩き回れるね」
「一応、これもちゃんとしたものだよ。ここにいる人々とは形式が違うだけだ。ほら、お前に興味を持ってる奴も多いだろう」
興味本位で向かってくる視線に、つい睨み返してしまった。条件反射のようなもので、抑えることができない。
「緊張しすぎだ。私も一瞬、殺気かと思ったくらいだ」
「師匠が間違えるわけがないでしょ。……その、ティーネって人はどこにいるの?」
「まだいないみたいだな。まずはシュトラウスにでも挨拶しておくか」
会場の中心で、一人の男性が幼い少女とともに多くの来客の相手をしていた。男性が師匠に気付くと話を切り上げて、こちらにやってきた。
「いくら呼んでも来ないから、今度も来ないかと思ったよ」
「それは私が出向く必要がないからだ。ま、今回はせっかく参加したんだから、土産を色々と持って帰らせてくれ」
幼い少女は琥珀に気づいて怖じける様子もなく、快活に挨拶した。
「初めまして、私はミシェルだよ! よろしくね!」
「ああ…うん、初めまして。コハクよ」
「シュトラウス、あの子は随分と元気な娘だな」
「可愛いだろう? 私の天使だ」
「ほう? 私の可愛い弟子も負けてはないぞ」
「お父さん、また何かはなしてる……コハクお姉さん。一緒にあっちに行かない? いっぱいおはなし聞きたいの」
ミシェルが少し離れたところにある休憩スペースを指差した。
「面白いかどうか、分からないわよ?」
「大丈夫だよ! もしどう話せば分からないなら、私から質問するから。それでもいい?」
*
「コハクお姉ちゃんすごい!」
「そう?」
慕ってくれることに悪い気はしなかった。
全身で伝えてくれる子どもの活力に、少しずつ緊張がほぐれていった。自身や師匠、他の弟子たちから聞いた話を語ると、可愛らしくぴょんぴょんと跳ね回る。
「ミシェルは軍記とか活劇とか、そういったのが好きなのね」
「そうだよ。お父さんは少し困った顔をするけど、私は体を動かすほうが好きだし、そういう冒険とかしてみたい。だって、わくわくするもん」
目を輝かせて夢を語るミシェルに、コハクは自然と笑みがこぼれた。
少しサービスして術を見せたりすると、もっと見せて、とせがまれる。
「ざっと、こんなものよ」
「いいなぁ。お父さんに言えば、習わせてくれるかな?」
「時間があれば習得できるんじゃない? ミシェルも筋は良さそうだし。でも、うちのとこはあんまり綺麗じゃないから……」
もう一度周囲と家ともいえるあの場所を比べてみると、ミシェルが家に上がる想像がつかなかった。
「……なら、貴方がこちらに来て頂ければいいんじゃないかな?」
突然背後から聞こえた声にコハクは驚いた。
振り返ってみると、優しそうな雰囲気の少女が微笑みながら空いている席に座った。
「初めまして。私はティーネ。よかったら、私とも少し話さない?」
「ええ、アナタのことは聞いてるわ。初めまして、コハクよ」
「ティーネお姉ちゃんだ。来てくれたんだね!」
「ふふっ、新しいお友達と仲良くできた?」
「うん! きっとティーネお姉ちゃんもすぐ仲良くなるよ」




