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Are you ready?  作者: 和島祥加
第一章 ~ゲーム~
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第五準備 〜困惑〜

どうすればいいか、今は決めることができない。

しかし、ここにいれば絶対に参加することになる。

逃げることに必要はないかもしれない。


しかし彼による、ここ周辺地域の国事情についての矛盾ある説明が彼の言葉の真偽性を低下させていた。


見返りのいいものは必ずオチがある。行く当てはないが、一度距離を置いた方がいいかもと考えたのだ。




とりあえずベッドに戻る。寝転がって考える。


ベッドの四隅には未だに鎖が繋がれている。頑丈で引っ張っても取れなかった。


その先には鍵付きの枷がある。

その鍵を抜いてポケットにしまった。足の分しか鍵を使ってないので二つしか手に入らない。


シーツを寄せると、四つの手錠が一つの鎖で繋がっているようにみえる。長すぎるだろ、この鎖。

ベッドはふかふかで、上から落ちても跳ね返って怪我ひとつしなさそう、それぐらい柔らかいものだった。姿勢のいい身体に取っては寝心地があまり良くないことに気づく。これからは硬めを買おうと無駄な心配をした。



胡座をかきながら、まくらを弄る。


逃げるルートを編み出せない。決死の覚悟で階段を登るのもいいが、もしなしたらそこにも[おまじない]がかけられているかもしれない。未知数の罠に飛び込むのはバカのすることだ。



しかし、そうかんがえるのが自分の平静を保つ唯一の手段としているのは明白だった。


ここへきた理由は彼女を救うためというのは絶対なのだ。


逃げようなどとゲーム以外のことに脳を使わないと、どうにかなりそうだった。


しかし何も思い浮かばず、逃走の念が尽きようとしていた。別にゲームしたほうがよくね?




そんな時だった。静かにしていた部屋が大きな音をたてて揺れた。


何かが嵌るような、歯車が噛み合ったような音がした。

そして板に歪ができるような、そんなイメージが頭に入り込む。


同時に天井からでかい何かが降ってきた。


それはベッドに着地し、俺の手を掴んだ。唐突で頭が付いていかない。


「目標、捉えました」

降ってきたのは人間だった。


黒い服装で顔にはガスマスクを着用しているために、誰かは分からない。

その声は女のそれに似ていた。彼女は安定しない足場でこちらに近づき、手錠を自分と俺につけた。ベッドに落ちている、足枷を。

俺はニヤリと笑う。

「お姉さん、もう一個付けるのは如何ですか」

言って彼女にもう一つ枷をつける。そして鍵を取り出し、俺のを外した。彼女はマスク越しに驚いた表情をしていた。


降ってきた人の腰にはワイヤーがついており、それを握る。そしてベッドから飛び出した。襟首の後ろを彼女の手が掠める。そして飛び出そうとして、彼女はがくんとベッドに引き戻された。

巻き戻していいと思ったのか、ワイヤーが上に引かれていく。それに引っ張られながら、俺は部屋を脱出した。


まさか自分を拘束していた物が俺を助けてくれるとはな。驚きだ。



可笑しくて笑みを浮かべていると、幾つもの部屋が視界を上から下へ流れていった。


俺を助けてくれた恩返しにと、手錠の鍵を一つ、落とす。

手の方は幾分か隙間があって外しやすいのだが、足用は小さめで、鎖を断ち切るか、隅にある木の柱を折る以外に外すてだてはない。

落としたのはさきほど自分についていた方の鍵だった。落とす方を間違えた。

「俺も悪よのう」

八に負けないぐらいの笑みを顔に貼り付けて、俺は部屋の間をずんずん駆け上がっていった。


部屋を幾重にも通り過ぎていく。それらは同じような構造をしており、無限回廊に嵌められたのではと錯覚してしまう。

あの女性はこの部屋たちを突き抜け続けたのだろうか。すごい心臓の持ち主だ。


もしこの何段にも重なる部屋は魔法でできているのだとしたら。魔法とはとても凄まじいものだ。

力に比例して身体も成長するのが道理であるとするのならば、魔法社会の人間の肉体は強靭なものであろう。

しかしそういった枠組みがない世界だからこそ魔法は存在し得るのだ。



とすると、法則なき世界ならば魔法によって死という板を剥がし、ひっくり返すことだってできるのではないだろうか。


あらゆるフィクションを読んだり見たりしてきたが、死生魔術というのは禁忌とされていた。

しかし、そんな人道的で倫理的な感情は元から持ち合わせていない。


彼女を救える手段があるのなら、俺は記憶を取り戻さなくてもいいと思った。




外に出られたのはその五分後だった。


なぜか久しぶりに空気を吸ったような気分になる。幸い、ワイヤーを引っ張っていたのは機械であり、人の気配は感じられなかった。

つまり彼女一人で潜入していたのだ。

幾つもの部屋を抜けてきたが、着いた屋根の上は、それほど高くない。


やはり魔法だった。


屋根の上を飛び跳ねながらどこか地面に下りられるところはないかと探した。


外は昼間で、白昼堂々人の家の屋根を飛び回るのはどうかと思ったが、道ゆく人々と目があっても無視される。

日常茶飯事なのかもしれない。逆にそういうことが当たり前というのは少し怖いのだが。


降りられる場所を見つけ、地面に降り立った。

何か新鮮な感じがするのは、魔法みたいなものがなに一つかかっていない場所に立ったからだろう。純粋さに人は落ち着きを感じるのだ。

とりあえず、と路地裏を散策し当てのない旅を始める。

それはすぐに終わった。


空腹感が頭を過り始め、露店のおじさんがりんごを数個投げ与えてくれた後の路地裏でそれと出会った。


「お前がロクか?」


不意に名前を呼ばれ、顔を上げるとそこには男が立っていた。

俺は二歩後ろににじり下がった。


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