第三準備 〜概要〜
訂正×1
まいどまいど、こんにちは〜。
ってことで始まりましたこの企画。知る人ぞ知る名物をご紹介していく、ハッピーバイ!
今宵はどのような商品をご紹介するのでしょうか!!!
では、さっそく商品をお見せいたしましょう。
じゃじゃーん!
おっとこれは大目玉ですねぇ。イキナリのイチオシ商品でございます。
それは「天井付きベッド」でございます。
あー仕事が疲れた。家に帰っても冷たいご飯が待っている。悲しいですねぇ。さあそんなあなたに吉報ですよ! この商品はなんと低反発ベッドなのです! それも二重構造。すごいですねぇ。
寝心地抜群。体に溜まった疲れを瞬く間に癒してくれることでしょう! なんと素晴らしき柔らかさ!
しかし、そんなにもイイものならば、お高いのではと感かぶるそこのあなた!
なんと今なら衝撃のタダ!
この煌びやかなボ〜デェであっても、驚きのタダ!
持ってけ泥棒!
けどちょっと、ちょっとだけ待ってください!
電話をかけようとしているそこの奥さん! 一度受話器を置いてください!
なんと今なら、ウチの会社が赤字になってもいいという社長の粋な計らいで!
四隅についている支柱に鎖付きの手錠が付いてなんと値段そのまま!
女の子と緊縛プレイするのもよし、自分でMに目覚めるもよし、使い勝手がよく、なかなか外れないこの手錠! あーもう早く外れて欲しい!
今なら足枷手枷に繋がれた社長も付いてきますよ!
だから買って! 誰か電話いらねぇから俺を助けろぉぉぉぉぉぉお…………。
柔らか過ぎる毛布や枕に包まれながら、俺はため息をついた。
なぜこうなったのか、俺にも分からない。細い路地裏で追い詰めた幼女の粋な逆襲。それをまんまと引っかかり、俺は意識を失った。
そして目覚めてみると、手足を四角の支柱に繋がれた状態。足首をがっちり掴んでいる枷は一向に取れる気がしない。ちなみに手の方はけっこう前から外すことに成功している。
四肢を大の字に投げ飛ばし、休憩とばかりに天井を見上げた。とても近いそれには男の写真で張り巡らされている。ちょっと気持ち悪い。
俺ではなくてよかったと安心感を持ふった。
空腹感はなくなっており、変わりに廃棄物を処理したい欲求がムクムクと膨れ上がっていく。そろそろヤバイ。本当にヤバイ。
あんなに水を飲むんじゃなかったと後悔した。
尿漏れを意識するとさらに出したくなるのが世の定め。それに今は両足を縛られているため、開いたまま閉じられない。なんという拷問だろう。辛すぎる。
そう思っていると、目の前にある扉が開いた。二つのでこぼこした人が出てくる。
一人は高身長で頭に耳が生えていた。髪の毛は白で長い。目は燃えるように赤く、炎のごとく揺らめいでいる。身体はすらっとしていて、俗にいうモヤシだ。顔に気持ち悪い笑みを浮かべている。服装はタキシードで、皺ひとつなかった。
一人はお面をしていない幼女だ。直感的に自分を拉致したやつだと感づいた。さきほどと変わらず淡い色のスカートに上はドレスコートだ。
なんだろう、何か重要な催しものでもあるのだろうか。参加したくないな。
「やあやあ、これはこれは。たいそうなお招き真に感謝しますな」
開口一番、男が口を開こうとする前に俺は先手を打った。彼は驚きに目を丸くしたが、すぐに高らかに笑った。英語でかっこつけてみる。
足を結ぶ二本の柱がぎしぎしと嗤う。
「はっはっは。面白いなぁ。ニッポンジンは冗談の効かない糞真面目な人たちしかいないって聞いたけれど間違いだったようだね」
「あながち間違っちゃいないさ。俺は真面目だぜ? そこの小娘に“お返し”をしてやるぐらいにはな」
彼の隣にいた幼女がびくりと彼の後ろに隠れる。
それを一瞥して、俺は男に向き直った。
「俺を解放し「いや」」
……なんで幼女が返答するんだ。
「助け「いや」」
……、
「……………………生きろ「いや」」
「バカだ、バーカァ! 生きるのが嫌ならさっさと死ねアホォ!!」
これでもかというほどの罵詈雑言を彼女に浴びせる。あの男の顔を窺いながら、足が外れるよう努力する。できるだけこちらに意識を傾けたくなかった。
頭に血でも上れば逃げ道など簡単にできるのだが。しかし、たとえ枷をすべて外すことができたとしても、あの幼女の電撃、魔法をよけられる自信がない。
今の自分にこの状況を脱する手立てはなかった。
俺は相手を見誤っていた。
逆にこちらが気を取られることとなったのだ。
「ハチィ、私、死ななくちゃいけないよぉ~」
幼女が男に抱き着いた。
言い過ぎたと少し引け目を感じる。
残念なほどに鼻を垂らし、悲しいほどに涙を流し、哀れに思うほどに顔をゆがませた女の子の姿がそこにあった。相手は小さなコドモだ。少しやりすぎたと後悔の念が渦巻き始める。ロリに愛はないが、可愛いのだ。
心が痛む。
「大丈夫だよ、僕は死ななくていいおまじないを知っているから」
「え、え、ホント?」
「ええ。
僕の部屋にあるスク水に着替えて、お兄ちゃんちょうだい? って言えば死ななくて済みます」
はいロリコンいたー。危険な男いたー。
彼女は少し考え込んだ顔をしたが、すぐに純粋に首を縦に振った。無言でパタパタと出ていく。
「おまえ、変態だな」
「ドMに言われたくないけどね。我らが救世主“ロク”」
彼は近づいてきて足枷を外した。手の方は気付いていたようで、外そうとするそぶりを見せなかった。それが逃げ出そうとする心を抑え込む。
「い、いいのか? 俺は逃げるぞ」
「無理だよ。ここの言語は分からないでしょ? 野垂れ死にたいならばかまわないけど」
断定的にいう彼に俺は花を鳴らした。その通りだった。
「なあ、なんで俺をロクって呼んだんだ? それは俺の名前か?」
「ええ、そうですよ」
「なんで知っているんだ?」俺も知らないのに。
「ふふ、答える義務はないよ。ただ、あなたはロクで間違いない」
彼の顔は常に笑顔を張り付けている。作り物とは思わせないような完璧な仮面。一度でいいからはがしてやりたいと思う。
俺が押し黙っていると、彼は思い出したかのように、ポケットからピアスを取り出した。
「これを付けて。言葉が通じるようになる」
手から受け取ったピアスを両耳にはめる。幸い、ピアス穴が開いていた。
着けると弱い痛みが脳へ響いた。ぐらりと司会がゆがむ。
しかしそれは一瞬のことで、すうに通常の景色にもどった。英語ではない言葉で「分かるでしょ」と言った。
自分のポケットに手を伸ばし、重くなめらかなモノに指を忍ばせた。そしてそれをゆっくりと持ち上げる。
「ああ、その拳銃、使えないよ? 科学が存在するためにはそれ相応の理を作らないと」
「どういう意味だ」
「教えないー」
とりあえずと、十八発作ったうちの一つをこめ、彼に銃口を向ける。そして引き金を引いた。
まっすぐ進むと思った銃弾は、飛び出した瞬間にあらぬ方向へと飛んでいき、消えた。
「でしょ?」
「……お前は俺をどうする気だ」
「唐突だなぁ」彼はケラケラ笑う。
「どうする気はないんだけどね。一つしてもらいたいことがあるんだよ」
「ゲームをしてもらいたいんだ」
「へえ、どんな?」
好奇心がうずく。
「ふふ、王を殺すゲームさ」
部屋がしんと静まり返った。彼の言っている意味が解らなかった。
「王を殺すゲームさ」
「二度も言わなくていいから」
「なんだ聞こえていたんなら返事ぐらいしてくれればいいのに。
君が王様を殺して、成功したらなんでもしてあげるよ」
何か、この男にどす黒いものが見える。
暗い、何かが。
「待て待て。王を殺すって? 相手がだれかも知らねえぞ、俺」
「殺すことに躊躇はしないんだね」
「は、なにいって」
「だってそうでしょ? 自分が逃げるために容赦無く銃口を僕に向けたじゃないか。常人にはできやしないよ」
俺は心の中で舌打ちした。全てを見透かされている気がした。
「王様というのはね、ここユークリウッド王国のさ。名前をイチという」
「なあ、なんで名前が数字なんだ?」
「答える義務はないよ」
彼はそう言って意地悪く笑った。
それでどうする? 彼は問いかける。
俺は考えるそぶりをして、首を横に振った。
「遠慮しとこうかな。ゲームに参加する、義務がない」
彼は初めて不服そうに顔を歪めた。




