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Are you ready?  作者: 和島祥加
第一章 ~ゲーム~
5/10

第二準備 〜魔法〜

誤字訂正×1…誠に申し訳ありません。

悪い気分ではなかったので、きっちりかっちり見つめ返しながら歩を進める。

この歩くお見合い現場で、俺との恋を結ぶものは誰一人としていなかった。少しだけショックである。


進んでいくうちに、前方にそびえる巨大な城は歩くに連れて大きくなっていった。一歩に比例して、外壁も巨大化しているように感じる。


目の錯覚とは言えない気がするほどだ。この国の中心部へ近づくほどに、それはどんどん肥大化していく。


町の雰囲気は穏やかで、左右の露店は活気溢れている。


言葉とお金さえあればよかったのだが、と残念だった。

どうせならば見物でもして行こうかと、雑貨屋のような店に入る。外装は周りと何ら変わらず、古臭い。


レンガでできているが、老舗のように、色が剥げている。


しかし、内装は想像通りとはいかず、裏切られた。


飛び回る紙飛行機。

眼前を優雅に歩く犬の形をした風船。

びっくり箱から飛び出したピエロがこちらを見て嘲笑う。その首にはここの店名が書いているようだった。

外見ではこじんまりとしていたものの、中身はとても大きい。客も入り乱れておりお祭り騒ぎだ。


そして、箒にまたがる人が店内を飛び回っていた。

右の方では花火が炸裂している。

目の前である少女が何かを突き出してきた。不思議と手を伸ばして受け取る。それは青色の箱で。


ーー爆発した。

そこから花びらが舞い散り、飛行機が飛んで行った。


少女はケタケタ笑いながらどこかへ走り去っていく。


「こ、これ…魔法だよな?」


俺は空っぽの箱と店内を眺めて呟いた。様々な色で彩られた壁は、今なお子供達によって塗り替えられている。しかしそこに暗い色は見当たらない。華やかで楽しくて、心踊る世界だ。


二十歳を過ぎたというのに、俺の心は疼いている。


どうして魔法は存在するのか、なぜそのようなコトが起こり得るのか、どういう原理で、自然法則は、物理法則は…。



多種の疑問が頭の中をよぎっていく。その全てを掴んでは、答えを見つけられずにポケットに突っ込んだ。


しばらく店内を捜索する。


玩具の兵隊さんに敬礼し、彼らの上を跨ぐ。

リングの上で闘う折り紙。一つは筋肉マッチョ、もう一つは細マッチョ。どこかのCMみたいだ。

二人は殴りあいながら、口らしきところから紙ふぶきを吐き出す。手のこんだものだ。

風船のプードルが、鼻で俺を突ついた。それをさすって、床を跳ねるカエルたちをプードルに近づける。

カエルはその鼻に乗っかって、どこかへ行ってしまった。

楽しい。

楽しい楽しい。

なんだここ。

跳ね上がる鼓動。漲る躍動。目は輝き、好奇心は歓喜の叫び声をあげた。

ふと、気づくと鉄くずが散らばるゾーンにいた。

そこだけは閑散としており、元気な子供達はいない。ぽっかりと切り離された別次元のようだった。

そこで俺は手を叩いた。ある物を作ろうと思ったのだ。

散らばった鉄くずを触ると、それは自分の思うような形へと変化していった。それを組み合わせ、最初にライオンをつくった。

銀色のライオンは一声遠吠えし、どこかへ走っていった。姿は見えないが、もう一つ、咆哮が聞こえた。そしてすぐに喧騒の中へ消える。



今度は拳銃を作ってみようと思った。

パーツごとに想定し、部品を組み立てていく。それはものの三十分程度で組み上がった。


そこに小径弾をこめて、ポケットに入れる。護身用としては充分だろう。


俺は店を出た。次の店へ入ろうと思ったのだ。

歩きながら魔法について考える。




このポンコツな脳みそには、様々な方式や仕組み、現象の理由、原理、弱点が入っている。

それは概念として定着し、


例えば木からリンゴが落ちるのは当たり前だというように、【自分の頭が当たり前だ】と、この世界で成り立つに決まっていると、無意識下で理解しているのだ。


しかし、魔法はそれに適応していない。




つまりは、魔法が存在するということは、


この世界には俺がいた世界と同じ法則がないということだ。

重力も、慣性も、存在していないのだ。


だから紙飛行機は空気中を滑らかに飛行していた。

だから店に入ると外観よりも店内の方が大きい。


しかし、それならばなぜ自分は地面を歩いているのだろう。

そういう概念があるからだろうか。


少し混乱してきた。


だから最後に一つ、仮定を作っておこう。


魔法は単なる想像力で補える、ということだ。今ポケットに入っている拳銃然り。


街路を進んでいくと、好奇心でうやむやになっていた空腹が蘇った。そろそろ倒れそうだ。


そんな中、歩くお見合い現場を適度にこなしていると、ばっちり目をあったまま、動じない視線が。


初めてのことで、不思議だとその子を見つめる。


顔はひょっとこのお面で隠されていた。しかしそこから生える髪の毛や、スカートから出る二本の足が、女の子ということを教えている。


お面に開いた二つの穴から彼女は視線を逸らさない。


近づくと、びくりと震えて逃げられた。何かカチンときたものがある。すぐに後を追いかけた。


なんだあのガキ。なぜ逃げる。


足の早さは雲泥の差、彼女は細い路地裏を選んで走り、そして行き止まりへ追い込まれた。


「おい、なんで逃げる」


俺は日本語で問いかけ、近寄る。


慌てたように右へ左へとわたわた動いていたが、俺に気づいたらしく止まった。


そして意味不明な言葉を発し始める。この国の言語だ。


「Talk in English」

 

言うと叫び声をやめ、彼女はおぼつかない声で英語を紡いでいった。


『――私、捕まっちゃう』


『お前、なんで英語話せるんだ?』


『教えてもらったの。八、すごい奴。……おまえ――だけど、ヒトケタでしょ?』


 ヒトケタとは一桁のことだろうか。


なぜそこだけ日本語なのだ。『お前』の後はこの国の言語を使ったため分からない。だが罵られたような気がした。


『そいつに合わせろ』


『……No』


 そういうと、彼女は上に手を向けた。

何かを早口で呟く。何をしだすのかと眺めていると、彼女の手から電気が迸った。


そして手をこちらに向けたと同時に電撃が襲いかかってくる。


ヤバイ、と思ったときにはもう終わってるというのが理だ。


 逃げる暇などなかった。

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