二十九話 美味しい食事、明日への活力
「いただきます!」
「いただき、ます」
『いただきまー』
『いただきますですわー!』
テーブルに並んだ料理を見て、思わず頬が緩む。
鮮やかな緑の野菜が敷き詰められた上に寝そべるプランツバードの蒸し焼き、さらにその上にはオレンジ色のプリメソース。
キノコと豆のスープはシンプルに塩胡椒の味付けながら、最後の仕上げに入れた肉の脂がいいアクセント。
俺が家で作る簡単料理よりも、見栄えがいい……!
「ではさっそく……」
まずは自分も手伝ったスープから。
木のお椀に入っているので、熱いスープが入っていても難なく手に持てる。
火傷しないように気を付けながら、そーっとお椀のふちを口元に寄せる。
「っ! 美味しい!」
シンプルに塩胡椒で味付けしたスープは、自分にも馴染みある味。
ちょっとだけクセのある、コンソメスープって感じだ。
豆はほっこり煮えていて、噛むとすぐに形が無くなる。
逆にキノコはほどよい弾力もあり、全部一緒に噛むとちょうどいい噛み応えだ。
『ンマー』
『よく見かけるキノコですが、このようなお味なんですねぇ』
「特に寒い季節には、欠かせないスープです」
「あーたしかに。身体の芯から温まりそうだな」
次いで本日のメイン、プランツバードの蒸し焼き。
表面は焦げ目、断面はしっとりとした蒸し加減。
最高だ。
そこに掛かるプリメソース。これだけが未知数。
「どれどれ」
一口分の肉をフォークで刺して、じっくりと観察してみる。
トロトロに煮込まれたプリメの実だが、ほどよい果肉感が残っている。
セローがためらうことなく口に肉を頬張るのを見て、俺も続いた。
「──っ」
う、…………うまーーい!!!!
「口に合うか?」
「お、お……美味しい……!!」
「それはよかった」
『ンマンマ』
『風のお方はそればっかり! もう少し具体的な感想はないんですの? ええ、ないんでしょうねぇ』
『うるせー』
口に入れた瞬間に判明した、プリメの実の既視感。
梅だ!!
いや、ただの梅じゃない。
鑑定魔法で視たように、恐らく熱を加えることで生じたこの甘み。
杏子のような特徴も併せもっている。
プリメ自身が梅の強い酸味と杏子の甘さを持っていて、それをさらにジャム風に加工することで甘酸っぱいソースになっている。
さらにそこへ肉に追加した塩!!
これがイイ!
口に入れた瞬間は純粋なソースと肉の味を楽しめる。
ただ、噛むごとに肉の表面に掛けられた塩が勢力を増していき、ソースの酸味と甘味、そこへ塩味がプラスされてグッジョブだ。
たとえるなら塩胡椒がよくきいたねぎまに、甘いタレを掛けて食べる。あの感覚だ。
また蒸し焼きにしたことで香ばしさはそのままに、歯ごたえがあるというよりは噛みやすく、ソースが絡まりやすい。
これまたグッジョブだ。
「いや、素晴らしいなほんと……」
「そんなに気に入ってくれたか」
「そりゃーもう」
「野菜で巻いてもおいしいぞ」
「!?」
まるで焼き肉をサンチュで巻くかのような食べ方。
合わないわけがない!
自炊男子に憧れる俺は、元々尊敬しているミラウッドに対しさらなる尊敬の念を抱いた。
美味しい食事により、明日への活力が充填された気がする。




