二十八話 プランツバードの蒸し焼きと森のスープ②
「プリメの実かぁ」
オレンジ色をしたピンポン玉くらいの大きさの果実。
なんだか、どこかで見たことのありそうなフォルムだ。
『今度はコイツを切り刻めばイイのか?』
『まぁ~~野蛮ですこと!』
「いえ。こちらは熱を加えてからペースト状にします」
『『?』』
ミラウッドはもう一つたっぷり水の入った小鍋をかまどに乗せて、プリメの実を十個ほど投入。それが煮えるまでの間に、スープを塩胡椒で味付けした。
「スープにキノコ入れると、いいとろみがつくよなぁ」
なめこ程とまではいかないが、しめじや椎茸を煮込んだ時くらいのちょっとしたぬめりがスープにいいとろみをもたらした。
「肉はもうすぐだな」
フライパンの蓋を開けてミラウッドがプランツバードの肉を確認する。
もうすぐで食べられると思えば、わくわくが止まらない……!
セローとルナリアが再び言い争うのをなだめていると、プリメの実の入った小鍋もぐつぐつと音を立ててきた。
「おお…………ん?」
小鍋に顔を寄せると、なんだか覚えのある独特のむわっとした香り。
食べたら思い出せるだろうか。
「よし。では種を取り除こう。火傷しないようにな」
「おう」
『んー』
『お任せくださいな、ええ、お任せください!』
俺と精霊二人は煮たプリメの実をそっと取り出して、まな板の上で少し冷ましてから種を取り除く。
この種を取り除く作業にもなんだか見覚えが……。
『アチッ』
『あーら! 風のお方は言われたこともできないんですの?』
『ああん……?』
『あらあらあら?』
再び戦いのゴングが鳴ったのを見届けて、俺はミラウッドに種を取り除いたプリメの実を小さいボウルに入れて手渡す。
煮汁の入った小鍋は避けて、新たに別の小鍋を取り出したミラウッド。
そこに果肉を入れ、これまた覚えのある香りの液を投入した。
「それって?」
「先ほど飲んだだろう?」
「飲んだ? …………あー! アレか」
ルナリアに手渡された飲み物。
ハーブティーにあまーいという木の蜜が混ぜられたものだ。
その木の蜜……シロップを入れたわけだな。
ということは、ベリーソースのように甘いソースなんだろうか?
再び小鍋に熱が行き渡った音がする。
プリメの果肉はほどよく果肉感を残しながらも、徐々にとろけていく。
「んー……?」
ソースというより、ジャムっぽい?
味の想像がまったくできないな。
「よし。肉も焼けたな」
フライパンの蓋を開けると蒸気がキッチンを漂った。
一緒にハーブを入れたわけでもないのに、妙に爽やかな香りがするから不思議だ。
『んじゃー肉はオレが切るぞ』
張り切ってやってきたセローが申し出る。
「よろしくお願いいたします、セロー様」
『お野菜はどのように盛り付けましょうか?』
「では、平皿に満遍なく敷いていただけますか?」
『わかりましたわ! ええ、わかりましたの!』
「お、俺は……」
「では、コーヤはスープの仕上げを頼む」
「! よしきた」
ミラウッドに指示を受け、俺もスープの仕上げを手伝う。
といっても今のままでも十分に美味しそうだが。
「えーっと」
スープを木の杓子ですくって、肉は取り除かれたものの未だ熱を帯びたフライパンの上に注ぐ。
そこで脂身が少ないながらも溶け出したプランツバードの旨味を、スープに溶け込むように一煮立ちし──再びスープへ!
「おー」
すると、それまでになかった脂による膜がスープの表面に生まれた。
これがスープにコクをもたらすんだろう。
普段鶏ガラスープの素を使う俺には考え付かない工程だ。
たとえるなら、そう。まるであれだな。
肉や野菜なんかをじっくり煮込んで出汁をとる、ラーメンのスープみたいだ。
「できた!」
「ありがとう、コーヤ。……では、仕上げに」
ルナリアが野菜を敷いた平皿の上には、セローが風の刃で上手に切ったプランツバードの肉。そしてさらに肉にサラサラと追い塩を振るミラウッド。
「塩?」
「塩味がある方が、よりソースが美味しくなる」
そしてコトコト煮込んだプリメの実ソースを肉の上からかける。
「──よし」
「色合いがキレイだ!」
『おー』
『まぁまぁ!』
今日の夕食、完成だ!




