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不死後衛の苦悩  作者: すろれっさー
冒険大好き後衛です。
48/66

新たな仲間も後衛です。

魔物の出現率が少ないです。

歩いている私たち3人。シンはまだ疲れが残っているようで硝子の上に乗って移動しています。少しだけ質量を持ってしまった空気をどうにかしたいのですが、私にそんな力はないようです。どうにかしないと・・・私のわがままで今の状況になってしまったのですから。


「あの。すみませんでした。」

「何がー?」

「また3人のパーティになってしまって。」

「いいんじゃない?あの三人は三角関係みたいだったし。」

「そうだよ。気にすることない。それに、この3人の方がバランスいいと思う。」

「と、言いますと?」


私が聞き返したことによってシンは少しだけ静かになってしまいました。しかし、今回の沈黙からは重圧を感じません。心地の良い優しさに包まれているような気がします。


「これは将来の話なんだけどね。僕たち2人がセルみたいに強くなった時の話。さっきの戦い方から、アンは前衛でしょ?」

「うっ。言わないでよ。ちょっと戦いやすいのは認めるけどさ。」


アンは狼人族。元々の身体能力はかなり高めです。獣人族には珍しく魔法が得意なようですので、父の戦闘スタイルが似合っています。アンは後衛ですので、シンに前衛だと言われて同様しています。


「で、僕は遊撃ポジション。クロ君は物理攻撃が効かないから盾役。あ、魔法攻撃も聞かないんだったね。それとセルは魔法の攻撃役。ほら。前と、奇襲と、盾と後ろ。完璧だと思う。」


説得力があります。今までは強い魔物があまり出てきていないせいでクロがあまり役に立っていませんし、だいたいは魔法で解決してしまっています。パーティとして戦うというのは分担ができるということです。私一人で解決しても面白くありません。


「あの。提案があるのですが。」

「ん?なに?」

「私はサポートになってもいいでしょうか?しばらく魔法を使わず、弓で戦いたいと思います。」

「え!?セルから魔法を取るの!?」

「はい。パーティを楽しみたいのです。弓なら、二人の役を取ることはありません。一撃が小さいですから。」


鎧が勝手に動きました。左腕の袖が弓に変わったのです。しっかりと射た後に勢いを殺せるように持つ部分が回転できる仕組みになっています。あとは矢ですね。


「矢はどうするのー?」

「それはこの硝子でなんとかします。」

「すごい!見えない!え?本当にそれ硝子?」

「触ってみてください。硝子です。」


極端に透明で、光を屈折させない硝子は無いように感じますが、触れることはできます。アンもシンも硝子の矢に触れて驚いています。本当に存在するのですから。ちなみに、シンが乗っている硝子は着色してあります。


「他にも、木の魔法や氷の魔法、地の魔法で矢が作れますよ。しかし、硝子の矢が一番使いやすいです。見ていてください。」


着色した硝子の矢を弓に番えて放ちました。放った瞬間に操作します。普通に操るよりも強い威力で、速い速度なので曲げることしかできませんが遠くの木に直撃、貫通しました。


「おお!弓得意だったんだね!」

「いいえ。初めてです。ただ、ジョブを変えました。」

「部屋が無いのに?」

「そうです。まあ、とにかく、弓で参戦しますよ!」


シンが歩けるようになってしばらく、魔物に遭遇しました。猪の魔物です。私たちを攻撃しようと突進してきています。厄介なことに魔法も使えるようです。石が何個も飛んできています。石をクロが受け止め、私が猪の足を封じました。動きにくくなった猪をシンが影で捕え、アンが魔法を宿した拳で止めを刺していました。連携がすごいです。アンは打撃には弱いため、一人では攻撃できません。シンの影は静止した状態であれば効果が強いのですが、動いている相手を影で縛ることはできません。止まっている状態でなければ影は通じないのです。クロと私が魔法を使おうとすれば自然が壊れてしまいます。それぞれの弱点を解決した戦いでした。ドロップしたのは大きな肉と牙、蹄でした。かなり強い魔物だったようです。


「ここでキャンプしますか。丁度肉も手に入りましたからね。」

「賛成!」


いつものように魔法で鉄板を出して調理を開始します。《不死の森》で収穫した野菜を使い、栄養たっぷりの食事は美味しかったです。だれかと食事するのは楽しいですね。


「もし、後ろから攻められるときは逆転しようね。」

「私が前衛で、アンが後衛ですか?」

「・・・違うよ!セルは近い後衛で、私は遠い後衛になるだけ。」


よかったです。私は後衛ですので前衛の仕事はできません。なので、私は敵に近い後衛をするだけになりました。いい響きですね。後ろを守る。後ろから攻める。はい。いい響きです。


「それにしてもセルは完璧だな。料理も、荷物運びも、戦闘もできる。完璧だ。」

「そうだね。料理人よりも美味しいもんね!」

「ありがとうございます。」


と、言う訳で私は後衛の料理人になりました。育った環境のおかげか、私は人並み以上に料理ができます。いつか、職業を料理人にしてもいいのかもしれません。

人間が活動している範囲から離れて5日。つまり、魔物が活性化し、強い魔物が多くなる区間です。冒険者が街を移動するとき、気を付けなくならない時は旅の中間地点です。魔物を倒す者がいない場所というのは魔物が強くなるのです。《不死人族の森》が代表例ですね。広大な場所であるのにそれらを狩る存在が土地に比べて少ないのです。強い魔物が多いですよね。


話を戻しますと、旅を初めて5日目、私の大切なモノがひび割れました。


「クロ!」

「ぽー!」


結構長い間大切にしていたことの意味が出るときです。魔力を常に使うことが無くなるのかと思えば楽になるかもしれません。感動の瞬間です。私が魔力を送り続けていた卵が今、孵化するのです。いい事でしょ?

〝ピキピキ〟という音がして割れたかと思えば、その中からは真っ黒な翼を持った鳥型の魔物が見えました。目と嘴の部分だけが赤いです。もしかすると私の魔力は黒いのかもしれません。


「きゅい!」

「始めまして。よろしくお願いします。」

「きゅ!」

「ぽよ!」


この子の名前は・・・何にしましょうか?

決めました。この子の名前はブラック・・・を略称してブクです!


「貴方の名前はブクです。本当の名前はブラック。こっちのスライムはクロ。どっちも黒い色をしているからそういう名前なんですよ。私の名前はセルゼルフです。」

「キュイ!」


バジリスクとフェニックスから生まれたこの子。あとで鑑定してみましょう。私と同じように黒い魔力ですので、クロと似た性質であるのは間違いないと思います。特徴はなんでしょうか?


「ブク。何ができるか教えてくれますか?」

「きゅ!」


速すぎる速度で上昇し、どこかに飛んで行ってしまったブク。しかし、すぐに帰って来て私におでこをくっつけました。これから向かう先の道、途中に入る生物などの情報が私の頭の中に流れてきます。街まで行って帰って来たようです。偵察能力と速度ですね。


「新しい従魔?強そうー!」

「卵の時から魔力を送っていましたからね。私の自慢の従魔です。」

「僕もいつか従魔が欲しいな!」

「卵を見つけなければなりませんね。」


私たちがこうして油断している間、警戒すべきではない相手が私たちを襲ってきました。ゴブリンです。ブクがそのゴブリン数体を睨みつけると石化して砕け散ってしまいました。ドロップは手に入らないようです。


「ブク。強い魔物にそれを使ってはだめですよ?ドロップが取れなくなります。」

「きゅい!きゅ!」

「え?部分的にできるのですか?では、部分的にお願いしますね。」

「きゅ!」


別のゴブリンが襲ってきた時、ブクはゴブリンの足を石化させていました。それだけではなく、嘴から炎を吐き、石化した足を溶かしてしまっていたのです。敵の足止めには丁度いいですね。


「なんか・・・ブクちゃん強すぎない?」

「まあ、セルの従魔だからね。しょうがないよ。」


こうして私たちは迷宮都市に到着したのです。新たな仲間を連れて気分は上昇中です。

冒険者が一度は必ず訪れるという大都市。様々な技術や食品、武器、装備が売り買いされており、一日中眠らない都市をも呼ばれている。そこにある迷宮は全部で19個。初心者用からベテラン用、まだ攻略されていないダンジョンに分けられている。冒険者と商人しかいない街と言っても過言ではない。冒険者が食べ物を売り、装備を買い、宿に泊まる。他の人間はそれをもてなすか冒険者が装備するものを作るか。そのどちらかである。大きな街である半面、闇の部分が蔓延っている。育児放棄や虐待によって家を追い出された子供や、亡くなった冒険者の子供がストリートを歩いている。いつかは冒険者になるという志を胸に今日もかれらは生きているのだ。そんな子供はある使い道が存在する。それは奴隷だ。子供をさらい、他国に売ることは普通であり、この都市の冒険者にそのまま売られることもある。この街は強い者が生き残ることができる場所なのだ。


「っと、そんな話を聞きました。誘拐されないように気を付けましょう。」

「え!?怖いこと言わないでよ!」

「やめてよ!セルの馬鹿!」

「それはさておき、宿を探しましょうか。」

「さんせー。」

「その前にギルドじゃない?」

「・・・」


冒険者は必ず街から街に移動する時には着いたという報告が暗黙の了解になっている。道中の安全確認のためだ。もし、街と街の間で死亡者が多いのならば、そこに強い魔物が潜んでいる可能性が高い。または盗賊など。なので、冒険者はどんなに小さな依頼でもいいので新たな街に着いたら達成しなければならない。しなくても罰せられることは無いのだが、お互いの身の安全を確認し合うという点で道中の報告を怠る者は少ない。

読んでいただきありがとうございます。

いよいよダンジョンです。どんなダンジョンにしようかまだ迷っている最中なのですが、ダンジョンの中は退屈なのでなにか面倒事を起こすつもりです。

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