45
邪魔もの排除。
集合場所にいたのは私が嫌いな少年です。生意気ですよね。しかし、パーティを組むとなればそうは言っていられません。嫌いでもパーティのメンバーになってしまいましたから。あれ?紙提出してないから成立してない?もしかしたら、もしかするかも?
「・・・俺の名前はモリス・・・よろしくな。」
「私の名前は聞きましたか?私はセルゼルフをいいます。貴方はたぶん後衛ですよね?」
「は?お前、俺のこの筋肉が見えねぇのか?」
「皮っていうのですよ。それは。」
珍しく私から喧嘩を売りました。〝足を引っ張るな〟発言もこれで許してあげましょう。やられたらやり返すのが不死人族の流儀です。不死人族同士でも殺人事件が起こることがあります。そのときの刑は決まっているのです。それは殺されたときと同じ状況で相手を殺すことです。すごいでしょ?
「はっ!お前みたいな弱々しい後衛を守る前衛様だ!俺たちに感謝しろ!お前たちを守ってやってんだからなぁ!」
「私を守ることができるほどあなたは強いのですか?確かに、ある程度前衛が強くなれば後衛はサポートです。しかし、前衛が弱いと後衛が主体となります。あなたたちは体を盾にするしかない時間稼ぎの肉壁です。」
無言でむかつく男が剣を抜きました。私を攻撃するつもりのようです。
俺は金がない。用意する物などない状況だ。親に貰ったこの剣だけで俺は生きていく。そう決めた。当初、俺たちのパーティは前衛主体のパーティを計画していた。認めるのは嫌なことだが、前衛2人の実力が足りないせいで魔物を狩ることができない状況になってしまった。その結果がこれだ。同年代の強いパーティに入り、いつか乗っ取る・・・その計画だ。仮のリーダーセルゼルフは俺が嫌いな種族だ。俺は虫がとても嫌いだ。あの真っ黒な眼球を見ているとゴキブリンや、コウロギスを思い出してしまう。こいつは虫と同類だ。そんなこいつが俺を馬鹿にする。後衛であるこのクズは前衛であるこの俺様を馬鹿にしていいのか?許されることではない。俺は気が付けば剣を抜いていた。練習した型でクズに斬りかかった。
遅すぎました。尻尾で解決するのではなく、素手で剣を折ります。鎧でコーティングされている私の手でなくても傷がつくことはないでしょう。折ったついでにその破片をやつの腿に刺します。
「うっ!」
「あなたのレベルは何ですか?弱すぎですよね。」
「・・・11。」
「あなたが守れるモノはなにもありません。まずは自分を守ることを考えることをお勧めします。」
「ななな!なにやってるんですか!」
回復役の少女がやってきました。三角関係の間に挟まれている人物です。幼馴染であると思われます。
「モリス!なにされたの!?」
「お前には関係のないこ「関係あるでしょ!私たちはパーティなのよ!関係ないことなんてないわ!」」
わーお。いいドラマですね。彼女の熱意が伝わってきます。そして、彼女は距離感がとても近いようです。思春期の男子にあの距離感ですよ?惚れろと言われているようなものです。彼はあの血が出ているような状況でも彼女の髪の匂いを嗅いでいます。あれは変態ですね。あれをパーティに入れるのは反対ですよ?ある程度治療が終わったところで、彼女の目付きが変わりました。私を睨みつけるように顔をこちらに向けました。
「あなたですね?」
「そうですよ。ですが、先に「後先なんて関係ないのです!強い者が手を出してはいけないんです!」」
え?何その理論。強い者はただやられるだけ?この世の中でそんなことが許されるとでも思っているのですか?許されませんよ?弱い者は死ぬ。強い者に従う。強い者を避ける。弱い者は逃げる。これが自然の摂理です。優勝劣敗の理念の下に私たちの世界は存在しているのです。
「私は後衛です。彼は前衛です。そんな彼が近距離で戦いました。私は不利な状況で、自分の「関係ない!」」
あ。これ、だめなやつです。私とは合わないですね。勘違いしてほしくないのは、私に従わない者が合わないのではなく、理論ではなく感情論で反論してくるような人間が合わないのです。彼女が言っていることは、〝強いんだから怪我させずに解決しろ〟です。力の差が大きい場合では可能でしょうが、命をかけた戦いではなにが勝敗を左右するのかわからないのです。自分の力に酔いしれる者、力を過信する者は滅んでしまうのです。私は例え生まれたばかりの赤子でも殺し合いになったら容赦しませんよ。ただ、大げさに言っただけで赤子と戦うことはないでしょうが・・・
「私のパーティから抜けてください。」
「え・・・」
丁度その時、6人が揃っていました。後には引けないです。言ってしまいました。リーダーとして、私はなんということを言ってしまったのでしょうか。ですが、知り合いに聞かれたからには、汚い部分を見せたからには後退できないのです。
「合わない仲間で冒険することはできません。私が気に食わない者は私のパーティから出ていってください。私はソロでした。たとえみなさんが出ていったとしても私の活動は元に戻るだけです。」
「・・・」
「貴方達二人は必ず出ていってください。リーダー命令です。他3人は自由にしてください。」
見るのが恥ずかしいというか、顔向けできないというか・・・そんな心境ですので、硝子を通してアンとシンの様子を見ます。嫌われてしまったでしょうか?シンは特になにかを考えています。シンもどこかに行ってしまうでしょうか?彼の実力があればソロとしてもやっていけるでしょうし、他のパーティから誘われることもあるでしょう。アンも魔法の才能がうかがえます。訓練すればもっと強くなることができるでしょう。
「僕はセルと一緒だよ。他のことなんて関係なくて、ただ、セルと一緒にいたいんだ。」
「私も一緒だよー?セルには助けて貰った恩があるからね。」
「頼む!こんな馬鹿を許してくれ!いや!許して下さい!」
もう一人の少年・・・サムソンが地面に頭を擦りつけています。二人のために精いっぱい頭を下げています。なにが彼をこんなに必死にさせるのでしょう?いったい何があるというのでしょうか?
「おい!お前がそんなことする必要ねぇよ!」
「そうだわ!こんな人たちと一緒にはやってられないわ!」
「馬鹿か!このパーティを抜けたら収入が限りなく少なくなることがわからんのか!」
なるほど。それは納得です。雑用依頼しか受けられないとなると、収入はその日を過ごすだけでなくなってしまうほど。冒険はできないでしょうね。そうなると、将来がありません。少しずつ体を鍛え、武術を習わず魔物に挑むという、一種の賭けに出る必要があります。街の人が冒険者にならない理由は戦いが苦手だからです。私たちのような戦闘を得意とする種族が冒険者には多いです。純人族はそれほど多くありません。純人族3人で組んでいるパーティは珍しいのです。
「テストしてもいいですか?3対3で勝負しましょう。勝ちが多い方の意見を通します。貴方達が勝利したら6人でパーティ組みましょうか。しかし、私たちが勝ったら3人のパーティに戻ります。」
「わかりました。その勝負お請けいたします。」
「はぁ!勝てるわけがないだろ!」
「では、今から。外に出ましょうか。」
壁の外で戦いましょうか。
「勝敗は関係なく、そのまま迷宮都市に出発しますよ。」
「あ、セルー。荷物もってー。」
「いいですよ。シンのも預かりますよ?」
「お?頼んだ。」
私たちは壁の外にある草原にやってきました。ここで勝負しましょうか。
「一番初めはシンにお願いしたいのですが?」
「わかった。勝ってくるよ。」
シンは魔物との戦いには慣れたのですが、人間との戦いをしたことがないようです。いい機会ですので、対人戦も経験させてあげたいのです。
「この鉄貨が落ちたら開始してください。投げますよ。」
一番初めは先ほどまで足を魔法で直していた女性です。これは少しだけよくない戦いになるかもしれません。ここは平原。影ができるのは人間の近くだけです。しかも、私の予感ですと彼女はシンの弱点が見えていると思います。シンの戦闘を見たことがあるのでしょうか?
「シン。今回は使う場所を考えなければならないです。気を付けてくださいね。」
彼女のような【光魔法】もしくは【治癒魔法】を使う相手の攻撃手段は限られています。剣や斧、槍などではなく、後衛らしい杖を使います。メイスを使う場合もあるようです。打撃系と光る魔法の組み合わせです。
彼女はさっそく光の玉で攻撃していました。シンが少しだけ驚いています。その間に走り出した彼女。低レベルですので動きは遅いですが、遅い速度で動いている光の玉に隠れて移動できています。シンの短剣で杖による打撃を防ぐことは難しいです。避けるしかないですよね。
影を使うことができないまま、棍棒と化した杖が振り下ろされました。光で目が潰されているシンは肩を強打し、その場にうずくまります。相当痛い打撃だったようです。光が収まったタイミングで近くにいた彼女の影に入り込みました。彼女の影を操って勝てるかと思いきや、光の玉によって阻害され、影が姿を消します。それと同時に気絶したシンが出現しました。
「そこまで。シンの敗北ですね。」
【回復魔法:治癒魔法:シン】。一敗してしまいましたか。まあ、いいでしょう。相性が悪かっただけです。シンの弱点も見つかりました。光が極端に苦手なようです。
「次はアンが行ってください。」
「勝てるかな・・・」
後衛である彼女。対戦するのは前衛である生意気なあいつ。足を怪我した状態です。シンと戦った彼女はそれほど強い回復、治療はできないようです。
「では、投げます。」
勝負は公平に。後衛にしてはやや近い距離ですが、相手は怪我しています。前に教えたテクニックを使っていただけるでしょうか?私は他の人に気づかれないようにサインを送りました。
セルゼルフと二人になった時・・・シンがトイレにいった時だね。その時、私は質問したことがあるの。セルはとってもいい後衛だし、前衛が相手であっても勝つことができるようだったから。どうやって、前衛と戦えば効果的に戦えるのか。その答えは簡単でした。いや、とても難しく、理解できない内容。テクニック一つでできることだけど、それには勇気と身のこなしが必要だったの。それは、別名ゼロ距離攻撃魔法。近距離攻撃ということ。
私が教えた事は簡単です。まず、体を魔力で守ります。その状態で魔法を暴発させるという攻撃方法です。父が使っている方法ですね。何回か試してもらった時でも成功していたので今回も成功するでしょう。彼女の身のこなしと瞬発力は高いです。尻尾で攻撃しても一回は避けることができるほど。確かに少しゆっくりにしてありますが、剣よりは速い尻尾です。それを避けることができる彼女が負けるはずがないでしょう。
コインが地面に落下した瞬間に両者が前に進みました。その一瞬、前衛であるやつは驚いたのでしょう。咄嗟に剣を突き出していますが、アンに避けられています。そして、怪我した足に魔法の爆発が直撃していました。立ち上がれないようです。
「そこまでです。最後は私と、貴方ですね。だれか。コインを投げてください。」
「私が投げるわ。」
全力を出します。鎧は速戦モードにしました。遊撃ポジションである彼の速度に勝つためです。
コインが落下したと同時に【大地属性魔法:うなり】を使います。海の波のように地面が揺れています。揺れていないのは私の周辺だけ。歩きにくいでしょうが、ここからが本番です。【大地属性魔法:檻】。彼の動きは完全に静止しました。私の勝利ですね。
「判定はどうでしょうか?」
「セルの勝ちでしょうね。」
「では。出発しますよ。あ、シンはこの上で休んで下さい。」
「ごめん・・・」
「いえいえ。相性が悪すぎました。光を相手にする練習をしましょうか。」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
シンは極端に光に弱いのです。弱いわけではありません。相手がシンの弱点を見極めていたわけではなく、光の玉しか使えなかっただけです。




