東部騒乱③
聖王国ロマニア。
その内部はいくつかに別れる。
教典の内容に沿って生きる教典派。
神こそ全てと考える狂信者グループ。
現実的な教えを大切にする現実派。
国の権威を第一に考える権威派。
利権にまみれた俗世派。
ことなかれ主義の中立派。
自らを俗世だとか狂信者とか名乗る事はない。
しかし他派閥からそう呼ばれるのだ。
各派閥がそれぞれ騎士団を複数持っている。
ただ聖騎士団となると教皇直属になる。
それ以外の実働部隊もある。
現実派が抱える傭兵団。
狂信者グループには異端審問局、そして悪魔払い。
だか、ランデルが発した檄文に対して出兵に賛成したのは2つの派閥のみ。
狂信者グループと権威派閥である。
元々オムルア帝国が死者によって滅びた事は知れ渡っていた。それでもなお、聖王国は軍を動かしていなかった。今さら動かすつもりはなかったのだ。
使者対して冷たく告げられる。
「残念ではあるが、貴国のためだけに出兵はできぬ。我らは・・・・・」
最後まで言わせず使者が口を挟む。
「今回の聖戦に御賛同頂いた枢機卿、大司教の方々を教えて頂いてよろしいでしょうか。
我が王がその方々に寄進をしたいと言われまして。」
あらかじめ、ランデルから言われていた。
派閥や内部事情はわからない。しかし、金で転ぶ連中は必ずいると。
俗世派はこれで賛成に変わる。
「聖戦の前に聖女の傭兵団を雇用したいと要望もあります。傭兵団に対しては前回同様食料や薬草は我ら持ちで契約を考えております。」
傭兵団を抱え、その理念のために傭兵団の運営に苦労している現実派も賛成に変わる。
そして賛成が増えた事により、主義主張のない中立派も賛成に変わった。
これにより出兵が決まる。
しかも対魔戦争である聖戦を発動して。
通常、傭兵団はともかく正規軍が他国を抜けて大日本帝国に入るのは難しい。
だが聖戦となれば別だ。
聖王国を中心として魔物と戦うのだ。
大義名分としては最高の物になる。
使者は聖戦の発動に礼を述べ、大日本帝国北部でランデル王が迎える事を約束して帰国した。
聖王国ロマニアは聖戦を宣言した。
ランデルの思惑は「どうせ北部も守れそうもないし、大国が駐留してくれれば東部攻めてる国にも牽制になるでしょ。」という在日米軍を想定した内容だった。
しかし、ランデルの思惑を越えて聖戦になったのである。
聖王国ロマニアから遠く離れた砂漠の国は、大日本帝国に出兵した小国に侵攻を開始していた。
「波紋がたった池に釣られた馬鹿どもだ。収穫の時だ。」
すでに調略を済ませていた貴族達の手引きにより複数の小国が手に入るはずだ。
天幕の中で薄く笑う。
「私の国が内乱中という偽情報を信じて出兵するからだ。」
その時、天幕が切り裂かれた。
「お前がムー・ラ・スーンか?」
30を過ぎたくらいの戦士がいた。
廻りにも屈強な戦士が揃っている。
「王ならば城にいるのでは?」
警戒をしつつ答え、考える。
国内に反乱を興せる有力な戦士は残っていないはずた。今回の侵攻に従軍させているのだから。
「城にいたお前の弟なら死んだぞ。小国の騎士以上の手練れが護る天幕。そして誰も見た事がない天幕の主。誰も見た事がない王。連想ゲームだな。」
弟が死んだ事より城が落ちた事に驚く。
「私は商人です。財貨を護るため身を隠して、傭兵に助けてもらっているだけです。」
「ふん。この天幕の偵察に出した者が帰らぬと有名だぞ。そんな商人がいるものか。」
戦士が剣を抜く。
「無!!」
身の危険を感じて己の闇を呼ぶ。
ムー・ラ・スーンの後ろには闇が現れていた。




