かみ合わない会話とパートナーシップ ~シモンズSide~
『妹が殺害される前に』というのが彼女の望みだったが、実際に戻ったのは二年前のようだ。
時間を戻すというのも初めての試みだからな……とりあえず色々と元に戻っているようだし、成功したのだろう。
だがしかし、肝心のアンテリーナの魂が元に戻っていなければ意味がない。
いつものように執務室にこもっていた俺は立ち上がり、その辺の人間に声をかける。
「カルヴァリオス公爵邸へ行く」
「え、今ですか?!」
「今だ」
「まずはお伺いのご連絡をしなくては……」
「必要ない」
「殿下……!!」
正直人間界のそういうのはよく分からない(というより面倒くさい)ので、うるさく言ってくる人間たちの言葉を無視して公爵邸へ突撃していった。
案の定俺が到着して公爵家はバタバタしていたが、多分アンテリーナは俺の顔を見れば思い出すだろう。
そう思い、部屋の前までずんずん歩いていく。
執事が何か言っているが、俺の頭の中は彼女の魂のことしか頭になかった。
とにかく元に戻ったのか、どうなのか。
ノックをしながら声をかける。
「私だ。 ミハエルだ」
「どうぞ、お入りくださいませ」
室内から彼女の張りのある返事が聞こえてきたので、ゆっくりと扉を開いていった。
彼女の魂はまだあのように溶けた状態か?
真っ黒に染まってはいないか?
胸がドクドクとうるさくなっていく――――そんな俺の杞憂を吹き飛ばすように輝きを放つアンテリーナが目の前に立っていた。
……全て元に戻っている。
良かった――。
「あ、あなたは……まさか…………」
喜びを隠し切れない俺を、アンテリーナが凝視している。
「そんなに見つめるなって。 俺が美形なのは認めるが」
「え……っと……」
驚き戸惑っているな、俺の美しさに。
次期冥界神になる存在だ……ミハエルの見た目をしているとは言え、神々しさは隠し切れない。
アンテリーナが戸惑うのも無理はないな。
俺と交わした契約を忘れていた事だけはいただけないが。
シモンズの姿に戻り、ほんの少し怖がらせてみようと思ったのに、お前は全く予想もしない言葉を返してくる。
「協力してくれるだなんて、ひょっとして死神さんはとても優しい人なのではないですか?」
「お、俺は人ではない! それに死神が優しいなんて言われて喜ぶと思うなっ!」
まったく……ミハエルと同じことを言う。
俺にツッコまれても怯むどころか、なぜか笑顔のアンテリーナがいる。
くそっ……ますます魂が輝いているではないか……不覚にも見惚れている俺に、さらに理解しがたい事を聞いてくるのだった。
「では死神さんが喜ぶことを教えてください」
……なに?
俺が喜ぶことを聞いてどうするつもりだ……何かを企んでいるようにも見えない。
アンテリーナと会話すると理解出来ない事が多いな。
とりあえず取ってつけたような理由を並べて、この会話を終わらせることにした。
「俺はお前が元気でいてくれればいい。 お前が元気でいれば、その分魂の状態も良くなるからな!」
心が闇に染まっていなければ、もう溶けることもないだろう。
俺はお前の魂が手に入ればそれでいいのだ。
俺自身を喜ばせようなどと考える必要はないのだが……言葉の意味が通じていないのか、面白そうに笑うアンテリーナ。
「……ふふふっ。 そうですね」
キュンッ。
一瞬胸のあたりがしめつけられるような気持ちになる。
その後、ドクドクと脈打ってるような不思議な感覚に襲われ……人間の体でもないのに何の現象だ?
何が面白かったのかは分からないが、まぁ、笑っているならいいか。
彼女の笑った顔は嫌いじゃない。
それもこれも、綺麗な状態の魂をもらう為に必要なことだからな……!
「お前は家族の命を、俺はお前の魂を守る」
互いの利の為にパートナーとなる事を決め、ガッチリと握手をした。
それに知りたい事もある――――ロザリンドとかいう妹の死の真相もだが、一番気になるのはミハエルの兄のアステカ王太子だ。
アイツにシモンズとしての姿が見えているというのも確認しなくてはならない。
まだ時間は沢山ある。
これからじっくりと周りの様子を観察してみるか……最後は必ずアンテリーナの魂をいただく!
意気込みながら、今日はひとまず王宮へと戻っていったのだった。
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