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断罪された悪役令嬢は死神の花嫁候補~時を戻した代償は、永遠の溺愛でした~  作者: Tubling@アルファポリス恋愛小説大賞「優秀賞」受賞


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再会


 ――バンッ!――


 「アンテリーナお姉様!!」

 「ロザリンド?」


 大きな音と共に扉が開かれ、ロザリンドが声を荒げながら私の名を呼ぶ。

 そして駆けてきて、私に抱きついた。


 「お姉様~~おはようございます! やっぱり寝室が別はイヤですわっ!」

 「ロザリンド……私も寂しいけれど、あなたは王太子妃になるのだから。 寝室を別にしてもう2年も経つのだし、この状況にも慣れなければ」

 「むぅ……お姉様が隣りにいない寂しさに慣れる日は来ません。 それならば王太子妃になどなりたくはありませんわ」

 「ロザリンドったら」


 私の可愛い双子の妹……魂の片割れ。 

 ああ、やはり彼女も生きている――――先ほどレクシーに年齢を確認した事で、処刑された日より2年前に逆行したのだと判明した。

 あの処刑時は20歳だったから……ロザリンドの事件が起きるまで、あと2年の猶予があるという事だ。

 

 あれは夢なんかじゃない。

 鮮明に覚えているもの……私は王太子殿下の生誕祭でロザリンドに「お姉様にお話があるの」と予め庭園に呼ばれていた。

 挨拶をしてくる貴族たちをかわしながら隙を見てホールを抜け出し、夜の庭園に向かうと茂みから……先に来ていたロザリンドが倒れていて…………何者かに殺害されていたのだ。

 その姿も何もかも覚えている。

 体中傷だらけで服もボロボロになり、髪も切り刻まれていて……およそ人の手でどうにか出来るような状態ではなかった。

 そう、それこそ私のような力を持つ者でなければ出来ないようなダメージの与え方。

 そこに王太子殿下がやってきて、闇の力を持つ私がすぐに犯人にされてしまって……お父様やお母様まで捕まり――。


 本当に死神さんが時を戻してくれたんだわ。

 あの時、彼とした契約を思い出す。


 『……フッ。 出来ない事はない。 ただ条件がある』

 『何でもするわ』

 『即答か。 気に入った! いいだろう、お前の望みを叶えてやる。 俺は――――――ら、――――……――だ』

 『分かった』


 …………彼はなんて言ったんだったかしら?

 待って…………まるで思い出せない。

 いくら考えても思い出せず悶々とする私に、ロザリンドが笑いかける。


 「お姉様、お父様とお母様がホールでお待ちですわ。 朝の食事に行きましょう?」


 さっきまで悩んでいたけれど、彼女の笑顔を見るとすっかり気持ちがホールに向いてしまう。

 食事から戻ってからゆっくり思い出せばいいわね。


 「そうね。 待たせては悪いものね」

 

 まだ夜着のままだったので、レクシーに着替えを手伝ってもらいながら身支度を整えた。

 いつものようにロザリンドが私の腕に自身の腕を絡ませながら、2人でホールへと向かったのだった。


 「お父様、お母様。 お姉様をお連れいたしましたわ」

 「おお、来たか」

 「アンテリーナ、おはよう」

 「お父様、お母様。 おはようございます。 遅くなり申し訳ございません」


 処刑される2年前なので、当然だけれど二人とも生きている。

 その姿が嬉しくて抱きついてしまいそうになるけれど、そこはグッと堪えた。

 きっと訳が分からなくて混乱させてしまうだろうから。

 私はロザリンドと共に席に着き、家族と楽しい食事の時間を過ごす……なんて幸せな光景なの。

 処刑されるまでの30日間は後悔と懺悔と、家族がいない寂しさ、哀しみで頭がおかしくなりそうだった。

 世界中の誰もが敵になったとしても、愛する者を失う哀しみに勝るものはない。

 

 このまま時が止まってしまえばいいのに。


 そう願わずにはいられなかった。

 あの苦しみが夢だったなんてあり得ない。

 だからこそ来るべき未来を絶対に阻止しなければ……幸せな日常を噛みしめながら、心の中で固い決意をしたのだった。


 ~・~・~・~・~


 「あーん! もっとお姉様とご一緒したい~~」

 「ロザリンド! あなたは今日は”お勤め”でしょう?」

 「お母様……一日くらい行かなくても……」

 「いけません。 民の未来に関わるのですから、きちんとお勤めを果たしてきなさい」

 「はぁーい……」


 食事を終えてお茶を飲んでいたロザリンドは、お母様に説得され、渋々席を立った。

 私達姉妹は光と闇の力を持つ、光の神子と闇の神子と呼ばれ、国の為に祈りを捧げる”お勤め”がある。

 祈りが国を包み込み、護り、他国からの侵略を防いでいた。

 

 ロザリンドは日中の方が力を発揮できる為、日の高い内に祈りを捧げ、私は日が落ちて夜の闇が深くなってから祈りを捧げる。

 本来人間にはそのような特殊な力を持つ者はおらず、私達姉妹は国から特別保護扱いをされていた。

 貴族の令息や令嬢が通う学園への入学を免除され、国として囲い込みたい思惑があるからか、ロザリンドは王太子殿下と、私は第二王子との婚約が決まっている。


 人には持ちえない力を持っているというだけで命を狙われる事も多く、両親は王家で護ってくれるのならと、この婚約を受け入れた。

 国外からこの力欲しさに戦をふっかけられる事もあるほどに。

 ロザリンドは光の神子だから聖なる者として崇められているけれど、私は…………祈りを捧げる為に王宮へ行くと、蔑みや畏怖の目を向けられる事が多い。


 この見た目と闇の力が不気味なのね。


 「アンテリーナ、少し顔色が悪いわよ?」

 「お母様……体調は悪くありませんわ」

 「そう? でもお勤めの疲れかもしれないわ。 今日はゆっくり休みなさい」

 「はい」


 優しいお母様の隣りでお父様も頷く。

 二人とも大好きよ。

 周りにどんな目を向けられても、家族が無事ならそれでいい。

 でもちょっと心が疲れているのかもしれないと思った私は、自室で少し休む事にした。


 本を読みながら物思いに耽る……あの死神さんは最期に『またな』って言ってたけれど、まだ亡くなる時期でもないのにまた会う事があるのかしら。

 本を読んだだけの知識しかないけれど、この世界には『天界』『人間界』『冥界』が存在するらしい。


 『天界』も『冥界』も見た事がある人はいないのだから、その世界がある事を証明しようもないのよね。

 私も死神さんに会うまで、本当に存在するとは思っていなかったもの。

 亡くなった者の魂は死神によって連れて行かれ、現世での行いにより輪廻の輪に加わる事が出来るのかが決まると読んだ。

 おとぎ話だと思って読んでいたのに。

 

 そんな事を考えながらも本を読み始めて一時間ほど経った頃、邸がバタバタを慌ただしくなり、突然自室の扉からノック音が聞こえてくる。


 ――コンコン――


 「お嬢様! 失礼いたします」

 「どうぞ。 何かあったの?」


 扉を開いて入ってきたレクシーは、明らかに慌てた様子に見える。


 「先ほどミハエル王子殿下が邸に到着されまして……」

 「え?!」


 自分の婚約者でありながら、滅多に顔を合わせることのない第二王子殿下……ミハエル・フォン・レグモートン殿下とは逆行する前もほとんど会話をした事はなかったはず。

 夜会の時に姿を見るくらいの存在だったので、見た目もぼんやりとしか覚えていないくらいだった。

 もちろん邸に訪ねてくる事などなかったわ。

 

 すでに未来が変わりつつあるのかしら……?

 

 もしそうならば殿下に会ってみなくては。

 覚悟を決め、レクシーに言葉をかけようとした瞬間。


 ――コンコン―― 

 

 「私だ。 ミハエルだ」


 ノック音とともに聞こえてきたのは、ほとんど聞いたことのない殿下の声だった。

 もうすぐそこまで来ていたというの?!

 逆行前とは違い、積極的な殿下の行動に混乱してしまう。

 こんな風に会いにきた事などなかったのに、どうして――――

 私とレクシーは顔を見合わせて驚きを隠し切れなかったけれど、殿下を門前払いに出来るはずもなく、レクシーに頷いて見せた。


 「どうぞ、お入りくださいませ」


 私の声にゆっくりと扉は開かれていく。

 そしてそこに立っていたのは、間違いなくミハエル殿下その人……のはず。

 いつも漆黒の前髪は鼻のあたりまで伸びていて、あまりお顔をじっくりと見たことがなかったので、うろ覚えだとは言えない。

 今も伸びた前髪は健在なので、ほとんど表情は窺えないのだけど。


 「突然訪問して申し訳ない。 アンテリーナ嬢に大事な話がありまして」

 「大事な……お話?」

 「ええ。 出来れば二人きりでお話したいのですが」

 「……承知いたしました」


 私は視線だけでレクシーの方を見ると、彼女は察したのか部屋から退出していった。

 殿下を自室のソファへと促し、お話を聞こうとした瞬間、突如殿下に手首を掴まれてしまう。


 「殿下……っ?!」


 腕を掴まれたことよりも、その力の強さに驚いてしまう。

 ミハエル殿下は病弱で肉体派ではなかったはず。

 こんな力がどこに……不審に思い殿下の顔を見上げると、そこには見た事のある顔が目の前にあるではないか。

 この世のものとは思えない端正な顔に、口の端の上げ方やそこから覗く犬歯、黄金色の瞳……何もかもがあの時の死神さんそのものだった。 

 

 「あ、あなたは……まさか…………」

 「俺を思い出したか? アンテリーナ」

 

 死神さんは不敵に笑い、私はその顔をただ見つめるしかなかった。

 

こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^

もし続きが気になったり、気に入って下されば、ブクマ、★応援、いいねなど頂けましたら励みになります(*´ω`*)

皆さまのお目に留まる機会が増えれば嬉しいです^^

まだまだ続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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