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カナタとシド。 シドはガス欠です

***《医務室》***


シドは、医務室のベッドの上で目を覚ました。


どうやら、気を失っていたらしい。


横を見ると、カナタがいた。


そして、隣のベッドではリノが眠っている。


シドは慌てて起き上がろうとした。


「試合は!? もう終わったのか!?」


体を起こした瞬間、全身に鈍い痛みが走る。


思わず顔をしかめるシドに、カナタが静かに言った。


「今頃、副将戦が終わる頃だろう」


シドは壁に掛けられた時計を見る。


どうやら、三十分ほど気を失っていたらしい。


副将戦はスズだ。


舞台の整備や入れ替えの時間を入れても、ずいぶんとかかっている。


意外に手間取っているということだろうか。


あの狂犬が?


「スズさんは大丈夫だ。負けないよ」


カナタは言った。


「君が起きるまで、時間を稼ぐと言っていた」


「俺が起きるまで?」


「アゲハ君の試合を、僕たちに見せたいそうだ」


シドは、呆れたように肩をすくめた。


こんな時にもアゲハ信仰か。


そう思わないでもなかったが、口には出さなかった。


「立てるか?」


カナタが尋ねる。


シドは寝台の端に手をつき、ゆっくりと足を下ろした。


「立つくらいならな」


「無理はしない方がいい」


「今さら寝てろって方が無理だろ」


シドはそう言って、痛みに顔をしかめながら立ち上がろうとする。


その時、カナタがふと思い出したように口を開いた。


「それにしても、シド君」


「なんだよ」


「どうして最後、素手で行ったんだ?」


シドの動きが、少しだけ止まった。


カナタは続ける。


「あそこで魔法杖を捨てなければ、まだ挽回の機会はあったかもしれない。少なくとも、判定に持ち込む道は残っていた」


シドは、面倒くさそうに目を細めた。


「維持できなかったんだよ」


「……何?」


「魔力切れだ」


シドは、頭を掻いた。


「最後の一撃、途中で消えちまった」


カナタは言葉を失った。


「ラルフがかわしたんじゃない。俺の光刃が消えた。だから、杖を捨てて殴りに行った」


シドは、苦笑いを浮かべる。


「締まらねぇよな」


「……」


「でも、他にやれることなかったしな」


何でもないことのように、シドは言った。


カナタは、しばらく何も言えなかった。


魔力が尽きた。


光刃が消えた。


だから素手で殴りに行った。


理屈としては分かる。


けれど、普通はそうならない。


魔力が底をつきそうになった時点で、いや、それ以前から、身体は鉛のように重くなり、意識も鈍り、足も止まりそうになっていたはずだ。


光刃を維持できなくなる、その瞬間まで動けるようなものではない。


それでもシドは、前に出た。


最後の一撃が消えた、その後にもまだ。


勝つために。


「君も、リノもどうかしている」


シドに肩を貸しながら、カナタは呆れたように言った。


けれど、その顔は真っ直ぐ前を見据えていた。


「すまなかった……そして、ありがとう」


シドはカナタを見ると、口の端を上げた。


「締まらねぇな」


「まったくだ」


最終戦が始まろうとしていた。


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