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カナタの誤算。孤独のアゲハ、です


***《カナタ視点》***


カナタは焦っていた。


シトロの指定した期間は一週間。


たった一週間しかないのだ。


常識的に考えて、たった一週間で格上の上級生を相手に勝てるまで鍛え上げることなど、不可能に近い。


せめて、自分が出られたなら。


スズが一勝。


自分が一勝。


そうすれば、あと一勝を拾うだけで済んだ。


勝てる見込みはあったのである。


しかし、シトロが選んだのは、スズ、リノ、シド。


そして、実技最下位の二人。


アゲハとノラだった。


はっきり言ってしまえば、絶望的だった。


スズは、まず間違いなく勝つだろう。


ここが負けるようなことがあれば、もうどうすることもできない。


問題は、あと二勝だった。


リノは筋が悪いわけではない。


才能もある。


ただ、いかんせん気が弱い。


攻撃の瞬間、迷いが出る。


シドは強い。


やり方次第では、勝てる見込みもなくはない。


それでも、上級生に届くかどうかは未知数だった。


ノラとアゲハに関しては、申し訳ないが、今は気にかける余裕がなかった。


最初から戦力として数えるには、あまりにも不安要素が大きすぎる。


だから、まずは二勝目の候補を固める必要があった。


リノの育成である。


リノには伸びしろがある。


攻撃の瞬間の迷いさえ消せれば、上級生にも届くはずだった。


届かせなければならない。


シドはスズに見てもらう。


スズなら、自分がリノにつきっきりになっても、最低限の指導はできるはずだ。


シド自身の地力もある。


悪い勝負にはならないだろう。


各々の鍛錬メニューを考えながら、訓練場の貸し出し許可、授業の免除申請を出す。


魔法杖についても見直す必要があるだろう。


シドとリノ。


できれば、アゲハとノラの分も見繕ってやりたい。


だが、果たしてそこまでの余裕があるものか。


その夜、カナタはほとんど眠らなかった。


翌朝には、リノの朝の鍛錬に付き合う。


リノもことの重大さをよく分かっているらしく、昨日は夜遅くまで、そして今朝もカナタが来る前から素振りを始めていた。


頑張ってくれている。


だが、これでもまだ足りないだろう。


休ませてやりたい気持ちもある。


しかし、今は心を鬼にすべきだった。


そうして訪れた訓練場。


ノラとアゲハは、遅れずに来ていた。


ただ、やけにさっぱりした顔をしていた。


聞けば、昨日渡した鍛錬メニューも、全くの手つかずだという。


がっくりと肩の力が抜ける。


だが、仕方がない。


そもそも過度に期待していたわけではないのだ。


ただ、その後の彼らの態度は、カナタには見過ごせるものではなかった。


真面目にやっているリノとシドにも、悪影響を及ぼしかねない。


ノラとアゲハに退室を促す。


そこまでは、仕方がなかったと思う。


しかし、カナタにとっての最大の誤算は、それにスズがついて行ってしまったことだった。


この時点で、カナタの計画は大きく狂い始めていた。


***《アゲハ視点》***


月日の流れはあっという間だった。


いや、一週間だけど。


とにかく、あっという間に過ぎていった。


僕がやる気を出したり、サボ……いや、ちょっと休憩を挟んだりしている間に、対抗戦はもう明日へと迫っていた。


ノラの成長は凄まじいものがあった。


というか、スズの教え方も良いのだろう。


僕は、急成長するノラの横で練習するのがいたたまれなくて、よく走り込みに出かけていた。


逃げではない。


僕は僕で、走り込みという立派な鍛錬をしているのである。


自然区の中をランニングするのは、普通に心地よい。


その途中で、しばしばシドと出くわした。


彼もまた、僕と同じぼっちだった。


カナタがリノの鍛錬に躍起になっているようで、シドは少し距離を置いているようだった。


それならば、こっちに来て、スズに見てもらったら良いのでは?


と提案したのだが、どうやらそうはいかないらしい。


スズは僕以外なら練習を見てくれるのに。


僕以外なら!


シドにとっては、カナタはもちろん、リノのことも気がかりなようだった。


なんだか、ずいぶん張り詰めているらしい。


対抗戦前日も、走り込みの途中でシドに会った。


というか、今さらだが。


もしかして、シドは情報交換のために、僕の走る時間に合わせてくれていたのではないだろうか?


……いや、気づいてたよ?


最初から、気づいてたさ!


そんなわけで、僕らは話し合った結果、一度、カナタたちと合流することにした。


このまま別々に動いていても、勝つための話ができない。


シドがそこまで気にしているなら、僕も見ないふりはできない。


何より、リノの様子が気になった。


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