戦略的撤退と適材適所、僕はボッチじゃありません!
僕らは、カナタたちとできるだけ距離を取ることにした。
カナタに怒られて気まずいわけでは、断じてない。
断じて。
これは戦略的撤退である。
つまり、問題は僕ではない。
スズの存在だった。
スズの怒りが沈静化しない限り、スズをカナタに会わせるのは危険なのだ。
なにせ、倒れるほどの怒りである。
人は怒りで倒れるのだと、僕は昨日学んだ。
どのくらいで収まるかは見当もつかないが、対抗戦当日、せめて前日くらいまでは日を空けるべきだろう。
その間、僕はやれることをやるより他ない。
スズにちょっと手ほどきを受けて、杖とか使えるようになって、カナタたちに。
「流石アゲハ君!」
「頼りになるな、アゲハ」
「素敵だわ、アゲハ君」
そう言わせようと思っていたのだが……。
僕は、スズとノラを見た。
スズが付きっきりでノラの面倒を見ている。
ノラもノラで、昨日までとは打って変わって、真剣な顔で光刃の発現に取り組んでいた。
僕など、まったく眼中にない。
気にしてさえくれない。
もう、ほとんど空気である。
いっそ気持ちいいくらい、放ったらかしである。
いや、分かる。
ノラは今、光刃や光弾に興味を持ち始めたばかりだ。
スズが付きっきりで見る必要があるのも分かる。
対して僕は、スズの中で何一つ教えることのない存在。
考えてみれば、最初から分かっていた。
僕はカナタに戦力外通告を受けた時点で、孤軍奮闘する以外の道はないのだ。
それは仕方がない。
分かっている。
しかしだ。
「……さみしい……」
なんか、僕だけ皆からのけ者にされているみたいではないか!
いや、違う。
これはのけ者ではない!
適材適所、そう、適材適所!!
……とはいえ、今はそんなことを言ってはいられない。
負ければ、一年全員退学だ。
いや、正直に言えば、僕一人なら退学でも構わない。
むしろ、願ったり叶ったりまである。
そもそも僕は、潜行者になりたくてここに来たわけではない。
気づいたら、なんか、こう、ここまで来ていたというか、高みを目指す流れに巻き込まれていたというか。
ハイキングに出かけたら、いつの間にかマッキンリーを目指すアルピニストになっていたというか。
まあ、そんな感じである。
しかし、スズは違う。
カナタも、リノも、シドも、ノラも違う。
他の一年生だって、きっとそうだろう。
皆、それぞれ何かを背負って高い所を目指しているのだ。
それを、僕のせいで踏みにじるのは駄目だ。
というか、そんなことをしたら。
めちゃくちゃ皆から恨みを買ってしまうではないか!
それはまずい!
絶対的にまずい!!
だから、なんとか頑張らねばならないのだ!




