才能故に……。 スズちゃんの方が良いです
午前中の鍛錬が、ひとしきり終わった。
ノラは既に潜行者として活動していたこともあって、カナタの組んだ鍛錬メニューを、わりとあっさりクリアしていた。
基礎体力とか、基礎能力は、少なくとも僕より高いんじゃないのか?
そう思えるくらいだった。
横でスズも同じメニューをこなしていて、ノラはそれを横目に見ながら真似していた。
モノマネが得意と豪語するだけあって、スズの動きの模倣も、それなりに様になっている。
……むしろ、全然駄目なのは僕だ。
なんか、すでに筋肉痛になっている気がする。
「アゲハ、死にかけじゃん! 顔めっちゃ青いし、体力なさすぎ!」
ノラはギャハギャハ笑っている。
いや、あの速度で走り込みして、打ち合いして、筋トレして、余裕な方が異常だって言うんだよ!
スズはともかく、ノラもまだまだ行けそうな雰囲気を漂わせている。
化け物か、コイツら!
……それは良いとして。
問題はやはり、サボっていた光刃の発動だった。
ノラは杖を使う感覚どころか、杖の持ち方一つ分かっていない。
そんな感じだった。
僕は貸出用の、柄だけのタイプの魔法杖をノラに渡し、僕自身も同じように構える。
「こう、魔力をゆーっくり、じーんわり、行き渡らせるんですよ」
僕は説明しながら、そっと、そっと魔力を込める。
「なあ、こんなん意味あるん? バールとか鉄パイプで殴る方が早いし確実やろ?」
テオみたいなことを言っている。
人造天使なら、そりゃそうだろうけど。
生身の人間が蛇とやり合うなら、やっぱり身体強化術式は必要だ。
それも、複合の上級強化術式は欠かせない。
光刃はおまけみたいなものだ。
身体強化ができるなら、別にバールでも鉄パイプでも戦えるだろう。
ただ、そうなると武器の方が耐えきれない。
だったら、やっぱり光刃はいるんじゃね?
つか、今、話しかけるなよ!
単発式は、魔力の制御が難しいんだよ!
光刃がぶゎっと出て、僕は慌ててそれを収める。
「い、今のようなこともあります」
僕が必死に平静を保ちながら言う横で、スズが一歩前に出た。
「ノラ。お前には分からないだろうが、アゲハ様は光刃の有用性を示しておられるのだ」
……いや、ちげーよ。
操作ミスって失敗しただけだよ!
「最初は、この程度で構わないと。まずは光刃の発現だ。整える必要などない。あのように不細工で乱雑な光刃で構わないのだ。アゲハ様は、そう示してくださったのだ」
丁寧に気をつけて、なるべく上手く光刃を出したんです。
「なるほど……」
ノラが、なんだか納得したように呟く。
それから、僕の魔法杖を見る。
「アゲハ、ウチにもそれ教えて!」
「アゲハ様の凄さを理解できたなら素晴らしい。だが、直接指導を受けられるなどと考えるなよ!」
「なら、スズちゃんが教えてよ!」
ノラに急にそう言われて、スズが戸惑ったように僕を見る。
僕は静かに頷いた。
スズが教えるなら、その方が良い。
やっぱり、魔法杖は苦手だ。
少し落ち込む僕の横で、ノラはさも当然のように言ってのけた。
「アゲハより絶対、スズちゃんの方がええやん!」
そういうことは、思っていても言わないでほしい。
傷つくから。
僕は一人、そっと涙を流したのだった。




